“推し”とは、とても元気をくれる尊い存在ですよね。
今回は、推しを好きになることで日々が輝き出したという、あるおばあちゃんのエピソードをご紹介しましょう。
◆夫を亡くしてガックリきた祖母にスマホをプレゼント
山中麗子さん(仮名・30歳・契約社員)は、おばあちゃん(74歳)と仲が良くひんぱんに連絡を取っています。
「ですが昨年の5月に祖父が亡くなって一人暮らしになってから、すっかりおばあちゃんの元気がなくなってしまったんです。とても心配になりました」
こんな時は、何か新しいことを始めた方が気が紛れるのではないか?と思った麗子さんは、おばあちゃんに“スマホデビュー”を勧めました。
「とりあえず、おばあちゃんにスマホをプレゼントしたんです。最初は『こんなの使いこなせない』とごねていたのですが、文字設定を大きくして見やすくしてあげたら、やっとやる気を出してくれて」
◆スマホゲームを楽しんでいた祖母から「怖い」と連絡
そうやってLINEを覚えたおばあちゃんは「目玉焼きを作ろうと卵を割ったら、黄身が双子でした」などと、何かあるとすぐ麗子さんに写真と一緒にメッセージを送ってくれるようになりました。
「そんなある日、おばあちゃんが『ご近所さんのY乃さんからツムツム(LINEが提供しているパズルゲーム)に誘われた』と言ってきて(笑)私はツムツムやったことないのでよく分からないのですが、スマホが使える同年代の友達とゲームでコミュニケーションなんて最高だと思い、賛成したんですよ」
ツムツムをやるようになったおばあちゃんは、少ないスマホ仲間2人とハートを送り合いゲームを楽しむようになりました。
「おばあちゃんによると、ハートがないとゲームを進められないみたいで『友達と送り合って協力するのが面白いんだよ』と教えてくれました」
そして今年の頭、おばあちゃんから「急に見知らぬ若者が2人、友達としてツムツムに入ってきて怖い」とLINEがきたので麗子さんが見に行くと…。
◆EXITに親近感を持つようになりギャグも使う祖母
「調べたらツムツムのキャンペーン?みたいなものみたいで、EXITの兼近さんとりんたろー。さんがおばあちゃんの友達として追加されていたんです。
『この人達は人気のお笑い芸人さんで、これはこういうイベントで、ただのキャラクターみたいなものだから怖くないし大丈夫だよ」と教えてあげたんです」
するとEXITにハートを送ると、必ず返してくれることから、おばあちゃんは2人に親近感を抱き仲間だと思うようになりました。
「ある日いきなり『かねちーとりんたろー。がね』と呼び捨てしていて笑いました!そんなこんなで、おばあちゃんはテレビにEXITが映ると、親戚の子が出ているみたいな勢いで喜ぶようになったんですよ」
そして“バイブスいと上がりけり”や“お後がヒュイゴー”などEXITのギャグも気に入り、積極的に使うようになったそう。
「『ああやってわざと古風な言葉を取り入れて、私みたいな年寄りもとっつきやすいようにしてくれて優しいね』と目を細めていましたが…私は、ただのチャラ男ギャグだとしか思いませんでした(笑)」
◆兼近推しになり、白髪をベビーピンク派手カラーを楽しむようになった
さらに最近話題になった24時間テレビの100キロマラソンの兼近さんの走りを見たおばあちゃんは大興奮したそうで…。
「『あんな長時間、立っているだけでも大変なのに余裕の走りっぷりで、ファンの人達一人一人に笑顔で応えていて…もう本当に素敵ね。大好きになっちゃった』と、一気に兼近推しになってしまったんですよ」
それから、派手な色味の服を着るようになったりと、おばあちゃんは今までとはまるで違うおしゃれを楽しむようになりました。
「確実に兼近さんに影響を受けているんですよ。『私も見ているだけで明るい気分になるかっこうをしたい』とスキンケアにまで力を入れ始めて…あ、兼近さんのお肌の綺麗さに憧れているみたいです」
ついには白髪をベビーピンクに染めて大胆なイメチェンを果たしたそう。
「祖父が亡くなった頃とは別人のように元気で可愛いくなって…ホント良かったなと思っています。これからも兼近さんにときめいて長生きして欲しいですね」
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop