「人生、山あり谷あり」ということわざもあるように、浮き沈みがあるのが人生というもの。恋愛や仕事、人間関係…何がきっかけで良い方向にいったり、悪いことが起きたりするかはわからないものですよね。今回は実録シリーズ「人生の転機、上がったり下がったり」から、過去の人気記事を再録します(初公開2018年4月13日、情報は掲載当時のものです)。
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人生が上手くいかない時に「何もかもおしまいだ」と絶望してしまうかもしれません。ですが、たとえ厳しい状況であっても、なんとか自分で活路を切り開ける場合もあります。
夫からのDVに悩む日々から抜け出した女性の話を聞いてみました。
A子さんは現在、自宅でマッサージ店を開いて、主に女性のお客さんに癒やしの場を提供しています。それと同時にソープ嬢でもあります。
この二足のわらじを履くようになったのは、彼女のドラマチックな人生にありました。
◆夫からセックスを強要され『いつも家にいろ』と命令
A子さんは友人の経営するカフェでアルバイトをしていました。そこの常連だった15歳年上の男性に請われて結婚します。
「毎日店に来てくれて、好きだ、結婚してくれと言われました。好きなタイプじゃなかったけど『こんなに私のことを思ってくれるなら』と、結婚することにしたんです。
でも彼の実家で同居するようになると、DVが始まりました。体調が悪くて寝ているときも、無理矢理セックスさせられる。生活費は数万しかくれないのに仕事はさせてもらえなくて、『いつも家にいろ』と言われていました」
そんなA子さんは離婚を決意して家を出る決心をしたそうです。
「結婚して1年ほど経った頃だったと思います。仕事をしていなかったので、とにかく稼がなくちゃと、高額バイトを探していました。そこで声をかけられたのが、セクキャバのお仕事です」
セクキャバは、男性とお酒を飲みながら体を触らせてあげるサービス。普段、夫からセックスを強要されているA子さん、「それよりはずっとマシだ」と思ったそうです。
◆セクキャバの同僚に誘われて風俗業に
そこで働くうちに、仲間から別の仕事を紹介されます。
「その子はソープでも働いていたんです。『こっちの方が割がいいよ』と誘われ、入店しました」
結婚前は風俗など考えもしなかったA子さん、その入り口を叩いた後は、転がるように深みにはまっていったようです。そうして半年ほどだった頃、お金も貯まって離婚したいと夫に切り出します。
「そもそも私が外に出ることを好まない夫です。夫が帰ってくる時間に家にいないと機嫌が悪かった。当時は週2、3日で夜働いていましたから、帰って来るなりレイプまがいのセックスも多かったですね。でもその頃にはもう感覚がマヒしていたかも。
お金も貯まったし『離婚したい』と言うと夫は激高して『俺の金で食ってるくせに』と怒鳴ったんです。それで頭にきて、『あたしはあんたより稼いでるよ、お前は妻を肉便器にしてるんだ!』と叫んでしまいました。浅はかだったとは思いますが、それで夫が私を見限れば、円満に別れられると思ったんですよね」
◆夫から訴えられて慰謝料200万円請求
ところがこれで円満離婚どころか、風俗で働くことを不貞行為と取られ、夫から「名誉毀損」で訴えられてしまいます。
「慰謝料200万円請求されました。納得がいかなかったけれど、引き受けてくれる弁護士さんも見つからない。友達のツテを辿ってようやくお願いできる方が見つかり、裁判になりました」
その間にもA子さんはソープ嬢として働き、どんどんとテクニックを磨いていきます。
「もともと客商売やサービス業が好きだったんですよね。お客さんが喜んでくれると、ものすごく嬉しくて。『もっとこうしたらいいかな』『あんなサービスがあったらリピーター取れるかな』と考えるようになりました」
◆無事に離婚。いくつも資格習得し女性向けマッサージも開業
そうして、稼いだお金でマッサージやアロマなどの資格を次々と取得していきます。
「話をしたいお客さんもいるので、カウンセラーの資格も取りました。最近は外国人のお客さんもいるので、英会話もはじめようかなと思ってます」
こうしてA子さんは3年ほどかけて夫と和解し、無事に離婚することができました。慰謝料は夫からのDVと差し引いてプラスマイナスゼロまで持ち込むことができたそうです。
「やっと自由になれて幸せでした。でも風俗のお客さんって男性だけでしょ。世の中には、私のように大変な思いをしている女性もたくさんいますよね。彼女たちの力になりたくて、自宅にベッドを置いて、マッサージのサービスをすることにしたんです」
最初はセクキャバやソープのお友達から紹介してもらったお客さんたちが来てくれましたが、だんだんと評判が広がり、今は一般のお客の割合も高くなっているとか。
「深く考えずに入り込んだ世界ですが、とても充実しています。どちらの仕事も今のところは辞めるつもりはないですね」
流されるままに人生を歩んできたA子さん、その流れついた地で、自分なりの花を咲かせるようになりました。
人間、きっかけや始まりではなく、そこでどう自分を構築していくかなんですね。A子さん、これからもがんばって!
―シリーズ「シリーズ「人生の転機、上がったり下がったり」―
<TEXT/さいとうともこ イラスト/ただりえこ>