大好きな人と信仰や思想が違った場合、人生をともに歩んでいくことのハードルが上がってしまうこともあります。今回ご紹介する筆者の友人D子は、そんなハードルの高さを真正面から受け止め、何とか問題を解決しながら彼と人生を歩むことを決めた女性です。

◆彼の部屋で某宗教の「経典」を見つけてしまった

宗教関連の本を見るカップル
写真はイメージです(以下同じ)
彼女が付き合った彼は、ある新興宗教の“三世”と呼ばれる人でした。それに気づいたのは、いつも通りお部屋デートをしていた時のことです。何の気なしに空いていたクローゼットを見たら、奥に宗教関連の書籍がたくさん置いてあるのが目に入りました。不審に思って聞いたところ「あ、おれそこの信者なんだ」と、さらっとカミングアウトされたそうです。

彼としては、生まれたときからの信者だったため、特別な信仰心や帰属意識もなく(宗教関連の活動も一切してなかったそう)、またこれが他人から見て抵抗感のあるものだとは思っていなかったそうです。すでに将来について話し合っていた2人だったので、彼女は急遽話し合いを開催。その結果、彼は「嫌ならやめるよ! 別に入りたくて入ってたわけじゃないし」と、あっさり脱会を宣言したのでした。

◆すぐ脱会したとばかり思っていたのに

こうしてその場で宗教関連の本やグッズを廃棄してくれた彼。あまりの軽いノリに、彼女も「あ、その程度の繋がりなら辞めてくれるしいっか」と当時は済ませたそうですが、驚いたのはその後でした。

このやり取り以来、彼から宗教の話題が出されることはありませんでした。彼女としては、てっきり話もついて脱会済みなのだろうだと思っていたそうです。そして彼のご両親に結婚のご挨拶にいった際、想定していない出来事が起きたのです。

◆家族になるってことは、教えも受け入れるってことだよ

まず、彼の実家に着いた途端見えたもの、それはズラッと並ぶ宗教関連の書籍や、各種グッズだったそうです。そう、彼の実家は“ちゃんとした信者さん”だったのです。

また彼もてっきり脱会を報告済みかと思いきや、結婚の挨拶時に「俺、もう脱会届け出したから」と、初めて報告するではありませんか。

すると母親は顔色を変え、「そんなの許されるわけないでしょ」と鬼気迫る顔で彼に詰め寄ったといいます。

結婚の挨拶に行ったら一家全員宗教に
そしてどこかに電話をしたかと思ったら、数十分して到着したのは、近所に住む祖父母やいとこたち。

一見婚約者であるD子を歓迎する素振りを見せる彼らですが、「うちの家族になるってことは、教えも受け入れるってことだよ」と、ネチネチと勧誘が始まりました。

彼女は恐ろしくなり、とりあえずその場は「検討します」と適当に返答してやり過ごしたそうです。

◆家族との絶縁か婚約破棄か選んで!

あまりの温度に怖くなった彼女。彼も想定外のリアクションに「ごめんね」と謝りますが、彼女としてはこのまま結婚はできないという気持ちがありました。そこで彼にはっきり伝えます。

「脱会と合わせて、親と絶縁して欲しい。宗教とは今後一切関わらないようにするには、それしかない。無理なら結婚はなしにして」

結果はどうなったかというと、彼はもともと親との関係が良好とは言えなかったため、これを機に縁を絶ち、宗教からも正式に脱会したそうです。

うつむくカップル
◆その後、勧誘や引き止めなどの行為はない

脱会がスムーズにできるのか心配になる方もいると思いますが、D子の彼の場合、脱会後は1回だけ信者さんらしき知らない人が訪ねてきたのみ。それ以外は勧誘や引き止めと行った行為はなく、今も平和に結婚生活を送っています。

宗教の問題はセンシティブですが、好きになった人が新興宗教の信者だと、今後どうしていくかは迷うものです。D子と彼は親族との絶縁&脱会という選択肢を導き出し幸せを手に入れましたが、今後親が再度彼女たちの生活に進出してくる可能性はありえます。

そうなった場合どう対応するのか。D子と彼は今も時々話し合うそうです。

<文/しおえり真生 イラスト/ただりえこ>