新型コロナウイルスの影響により、日本でも様々な給付金制度が打ち出されました。その中でも中小事業者やフリーランスを個人事業者を対象に給付された「持続化給付金」は代表的ともいえる策ではないでしょうか。
しかしながら、この給付制度は、性風俗関連特殊営業(風営法2条5項)にあたる性風俗事業者(ソープランド、ファッションヘルス、ラブホテル、ストリップ劇場、デリバリーヘルスなど)は対象から外されていました。経営者・スタッフ側が外されている一方で、接客をしているキャストは個人事業主とみなされており、給付は行われています。
コロナ給付金訴訟 東京地裁が棄却
これをうけ、給付から除外された関西の性風俗店が、国に対しての訴訟を行いました。『「セックスワークにも給付金を」訴訟』。2020年9月23日、東京地方裁判所に提訴されたこの訴訟は、2022年6月30日に判決が言い渡されましたが、結果は敗訴でした。原告は即日控訴しています。
「限られた財源の国庫からの支出で、性風俗業の事業継続を下支えすることは相当ではない」との判断。
「性風俗事業者や従業員が個人として尊重され、平等な取り扱いを受けるべきことは当然で、職業に基づく差別が許容されるわけではない」としたものの、結果的には、職業によって給付対象から除外され得ることが明言されたように感じました。
今回の判決について、『「セックスワークにも給付金を」訴訟』の原告であるFU-KENさんにお話を伺いました。
司法の根本を揺るがすような「どこ調べなん?」という発言が多かった
――FU-KENさんの肩書きを言える範囲で教えてもらえますか?
「関西地方でデリヘル店を経営している30代の女性です。お店を始めて10年ほど経っています」
――判決への率直な感想を聞かせてください。
「判決理由で『大多数の国民が共有する性的道義観念に反し、国民の理解が得られない』と裁判所が言うということは、もはや裁判所の意味を成していませんよね。司法の役割を全く担(にな)っていない。
司法の根本を揺るがすような『どこ調べなん?』という発言が多かったように思います。風俗もラブホテルも利用者数が多いから産業として成り立っているわけで、その存在を国民が理解してないなんて、有り得ないですよ」
――数多くの事業の中から性風俗業だけが線引きされた理由としては納得できないと。
「あと『限られた財源の中で費用対効果や他の政策との整合性を考慮すべきで、公金支出に対する納税者の理解が得られるよう配慮することも許される』とありましたが、裁判の時点で相手側はそんな主張はしていませんでした。なのに、勝手に新しいものを持ち出して判決を出しているのもおかしいですよね。
ただ今回の問題は、コロナ禍というタイミングでないと『おかしい』と声を挙げられない部分もあったんですよね。これまでも少なからず、こうした差別のようなものは存在していましたが、普段の生活の中ではどうしても訴えづらいんですよ」