有村架純(29)の進化が止まりません。中村倫也とW主演している今クールのドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(TBS、金曜夜10時~)で演じている通称・石子でも、その高い演技力が伺えます。ドラマの見どころと共に、有村架純の魅力を分析します。

『石子と羽男』有村架純は“クセあり女性”で魅せる。元風俗嬢の役にも大期待
(画像=TBSテレビ「金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』」公式サイト、『女子SPA!』より引用)

『石子と羽男』は人間らしいふたりのドラマ

本作で有村が演じているのは、ストレートで東大に入学・首席で卒業したのに司法試験に4回落ちたパラリーガル・石田硝子(いしだ・しょうこ)。学生時代から「真面目でコツコツ積み上げていく、そして石のように頭が固い」ことから“石子”と呼ばれています。

中村演じる高卒の弁護士・羽根岡佳男(通称・羽男)は、フォトグラフィックメモリー(写真のように見たモノを記憶する)により司法試験も一発合格したものの、実務においては想定外の事態に弱くて自信がないという人物。そのコンプレックスを隠そうと“天才弁護士”に見せるセルフブランディングに余念がありません。

そんな完璧ではない…実に人間らしいふたりが依頼人に向き合うことで、共に成長したり、支え合ったりしながら事件を解決してく。ふたりの掛け合いが何よりの見どころになっている作品です。

どんな役にもリアリティをもたせるのが有村架純

優等生で、ちょっと融通が利かない…しかも倹約家という役どころの石子を演じる有村。何かと細かいところを指摘し、ズケズケものをいう様は下手するとただの嫌な女に見えなくもないのですが、有村は少し抑えた演技で絶妙に調整しています。少々ぶっ飛んだ設定の人物も「こういう人いそう」「人間らしい」と思わせるのが得意な有村の真骨頂ともいえるでしょう。

仕事に向かう姿勢はつねに背筋をぴしっと伸ばし、テキパキと動き、声も少し高めで早口…そこからは生真面目な印象が感じられます。一方、迷ったり羽男や依頼者に寄り添ったりするときは、低めのトーンでゆっくりと話すことで石子のもつ優しさや女性らしさを表現。そんな風に有村がこの役に真摯に向き合っているからこそ、石子の真摯さがリアリティをもって視聴者の心にも届いているように思います。

石子と羽男も、第7話を迎えいよいよ後半戦!「石羽コンビ」からはますます目が離せません。

“普通の女の子役”で際立っていた繊細な表現力

筆者が有村架純の演技力に惹きつけられたのは、2017年の朝ドラ『ひよっこ』(NHK総合)でした。有村が演じたヒロイン・みね子は、朝ドラには珍しく何かを成し遂げるわけでもなく、有名な夫を支えたわけでもない人物。平凡で、ただ一生懸命に日々を生きる女の子でした。

『石子と羽男』有村架純は“クセあり女性”で魅せる。元風俗嬢の役にも大期待
(画像=「連続テレビ小説 ひよっこ 完全版 DVD BOX2」(NHKエンタープライズ)、『女子SPA!』より引用)

これといった夢はなくとも、家族を大切にして、友人や職場の人たちを愛し愛される。いわば「普通の子」なのですが、有村の緻密な役作りと繊細な表現により、心から応援したくなるみね子に仕上がっていました。有村は“受け”の演技も上手く、主演ながらぐいぐい前に出るというより、相手を引き立てながら物語になじむのが上手!脚本・共演者の良さももちろんありますが、懸命に生きるみね子に会いたくて、癒されたくて、何度も観返した朝ドラのひとつです。

大ヒットした映画『花束みたいな恋をした』でも、その演技は健在。役の設定だけではなく、豊かなのに主張し過ぎない有村の心情表現に、観る人は共感せずにはいられないのです。

役の幅を広げた近年の“ちょっとクセのある女性”たち

ここで、普通の女の子を演じるのが上手い!に留まらない、有村の進化を垣間見た作品をふたつ紹介します。ひとつは『前科者』(映画およびWOWOWドラマ『前科者 -新米保護司・阿川佳代-』)。有村が演じたのは、元受刑者(森田剛ら)の更生を助ける保護司。生真面目で頑固者で、強い使命感をもって罪を犯した保護観察対象者に向き合う女性です。

『石子と羽男』有村架純は“クセあり女性”で魅せる。元風俗嬢の役にも大期待
(画像=映画『前科者』公式サイト、『女子SPA!』より引用)

そして、もうひとつは2021年のドラマ『コントが始まる』(日本テレビ系)。こちらは、小さい頃から優等生で一流企業に就職するも挫折して、ファミレスでバイトをしながらお笑いトリオ(菅田将暉・仲野太賀・神木隆之介)を応援する女性を演じました。

いずれの役も過去に辛い経験をしており、そんな過去と葛藤する姿があったかと思えば、感情を爆発させるシーンがあり。有村はそれぞれの過去の経験を本当に背負ってきたかのように、イマを表現。どちらも、演じ方によっては少し面倒な人に見えかねないクセのある役柄ではありましたが、役の背景を深く理解した表現で魅せてくれるからこそ、説得力があり憎めない、愛すべきキャラクターに昇華されています。私はどちらの作品でも、有村の涙を見て、同様に涙を流さずにはいられませんでした。