山口紗弥加の演じる漫画家の妻と、宮崎吐夢の演じるモラハラ夫の関係にも注目が集まるドラマ『シジュウカラ』(テレビ東京系)。坂井恵理の原作漫画とともに話題の作品を、夫婦関係・不倫について著書多数の亀山早苗さんが読み解きます(以下、亀山さんの寄稿)。
男女問わず、稼ぐ側の立場が強くなる
男だから立場が強いとは限らない。家庭内においては「稼ぐほう」が強いのだ。そんな身も蓋もないことを知らせてくれたドラマ『シジュウカラ』7回目。
洋平(宮崎吐夢)が心臓の病で倒れて5年。息子は関西の大学へ行き、忍(山口紗弥加)はその間、必死に漫画を描いて、今や「不倫漫画の女王」と言われるようになっている。 帰宅した夫が洗面所でたてる「ガラガラーペッ」の音を嫌っていた忍だが、今や自分が激しくうがいの音を立てる身。夫が作ってくれた夕食を、とりあえず悪いからと箸をつけたが、お昼ご飯が遅かったため、あんまりお腹がすいてないと食が進まない。 そんな妻を見て、病の後遺症をもちながら一生懸命、料理をした洋平が言う。
「帰ってきておいしい料理があるって、とっても幸せなことなんだよ」
このときの忍の表情が興味深い。「おまえがそれ言う?」と明らかに語っていたからだ。会社勤めだった夫のために忍はいつも食事を作っていた。誰も褒めてくれない、誰もいたわってくれない日常を送っていた。
男女を問わず“稼ぐ側”の立場が強くなる理由
さらに夫は言う。 「今日、スーパーに行ったらね」 マグロの解体ショーをやっていた、包丁1本でさばいちゃうのすごいよね、と。このときも忍は言葉を発しない。だが表情はこう言っていた。「それで?」と。つまり、あなたのくだらない日常の話なんて聞いている暇はないんだよ、ということだ。
夫と妻、どちらが家庭の仕事を専業でしていようが、結局、家庭にいる人のほうが社会的な情報量が圧倒的に少ない。他人から受ける刺激もない。だから外で忙しくしている人は、家庭にいる人の大変さをわからないままに、「家で楽してんだろ」と思いがちなのだ。
実際、専業主夫になった夫の「世間話」がつまらなくて、帰宅後の夫婦の会話が苦痛だと言う女性もいる。共働きのときはお互いの仕事の話もできて楽しかったのに、と。だがやむにやまれぬ事情で、どちらかが家庭にいるしかない事態も起こりうる。
「優しくしてあげなくちゃ、話を聞いてあげなくちゃと思うけど、やっぱり1日にあったつまらない話を聞いているとイラついてくる」 件(くだん)の女性はそう言った。立場が逆転しても、思うことは同じなのだ。