「親も1人の人間として自分の時間を大切に」。写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

フランスのロワール地方最大の街・ナントに、家族3人で移住した写真家のフルヤユリエさん。自身のInstagram(@ y_himama091)には、現地での生活風景を撮影した写真が並び、何気ない日常の豊かさを垣間見ることができます。

ワイナリーで働く旦那さんと3歳のお子さんとの海外生活や、フランスと日本の子育ての違いについてお話を伺いました。

 

パリからの移住者も増加中。「住みたい街ランキング」上位のナントの魅力

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―フランスへ移住されて今年で2年目になるそうですね。フランス移住のきっかけと、今、住んでいるナントという街の印象について教えてください。

ユリエフランスへの移住は、主人の赴任がきっかけです。主人が勤めるワイナリーが近郊にあるため、2020年にナントに引っ越してきました。

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

ナントはフランスの西側にある街です。いわゆる「地方都市」といった感じで、田舎すぎず、都会すぎずの雰囲気があります。最近では、コロナによる働き方の変化で、パリから離れる人が増えていて、ナントへの移住を希望している人も多いようです。実はナントは、フランスの「住みたい街ランキング」で上位にもランクインしているんです。環境も人も穏やかで、子育てしやすいということもあり、お子さん連れのファミリーが多く移住してきている印象です。

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

また、SF作家のジュール・ヴェルヌの出身地としても有名で、彼の世界観を表現した高さ約12mの巨大な機械仕掛けの象「グランド・エレファント」が街のシンボルになっています。街のあちこちにユニークなオブジェが置かれていて、「現代アートの街」としての町おこしも進められているんです。

―移住当初、不便は感じましたか?普段はフランス語を使っているのでしょうか。

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

ユリエ:「フランス人は英語を喋らない」という印象も強いかと多いますが、20〜30代の若い世代は「英語が必須」という感覚なので、英語でコミュニケーションをとってくれる方が多いです。フランス語でどうしても伝えられない時は、英語でなんとか乗り切っている感じです。

ただ、娘が通っている幼稚園は現地校のため、100%フランス語の環境。先生との対話もフランス語で行うため語学の勉強も継続中です。

 

「カリキュラムは先生に委ねられる」。フランスの幼稚園で感じた日本とのギャップ

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―初めてフランス語の環境に飛び込んだお子さんの様子はいかがでしたか?

ユリエ:渡仏当初は2歳でしたが、やはり嫌がりました…。毎朝、「幼稚園行きたくない」とイヤイヤが3カ月ほど続いて。突然知らない言語の環境に置かれて、パニック状態になっていたのかもしれません。

通い始めて1年が経った今では、娘のフランス語レベルは1歳半〜2歳レベルになり、「先生が話している内容は理解できる」という感じ。「自分の言いたいことを伝える」のはまだまだで、知っている単語を繋げてなんとか過ごしているようです。

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―子どもの適応力はすごいですね…!フランスの幼稚園のカリキュラムに、日本との違いは感じますか?

ユリエ:フランスの幼稚園は、学校ごとに授業方針を立てるというよりは、「担任の先生に委ねられている」という印象が強いです。そのため、先生によって教える内容もガラリと変わるのが日本との大きな違いでしょうか。

娘の先生は「国際的な学びを教えたい」という思考が強いように感じます。今期は「世界中を旅して世界の動物を知ろう」というテーマで勉強していったようです。

―先生に授業内容が任されているのはユニークですね。幼い頃からさまざまな考え方に触れる良いきっかけになりそうですね。

ユリエ:幼稚園の先生は「教える」ことに特化していて、給食の時間や延長保育の時間は、別のスタッフが見てくれています。先生もしっかり昼休みが取れますし、残業もないみたい。フランスと日本の働き方の違いが見て取れるなあと感心していました。

 

写真家とWebマーケターの二足のわらじ。渡仏後はフリーランスで活動

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―ユリエさんは、今どのようなお仕事をされているのでしょうか。

ユリエ:出産するまでは、ECショップを運営している会社で働いていたため、渡仏後は、フリーでECサイトのマーケティングを請け負っています。また、娘の出産を機に始めた写真活動も軌道に乗り始め、現在は日本企業へ作品提供をしたり、現地企業から撮影依頼を受けたりすることも。現地の知り合い伝いに仕事を紹介してもらうこともあり、広がりが出てきました。

―Webマーケターと写真家の2本軸で活動しているんですね。普段はどのようなスケジュールで過ごしているのですか?

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

ユリエ:平日は娘を8時30分ごろ幼稚園に送っていき、午前中に仕事を終わらせます。午後は家仕事などを行い、16時15分にお迎えに向かいます。

休日は買い出しの後、公園で過ごすことが多いです。フランスでは日曜日はスーパーも閉まってしまうので、買い出しは土曜日が基本。もちろんコンビニもないですし、日本のように夜遅くまで営業しているお店もないので、計画的に買い物をしなければいけないんですよね。

また、ナントの日本人会が主催で、日本語を学ぶための場が毎週土曜日にあるので、隔週で参加しています。

 

「ダメ」を言わないフランス流子育て。「小さな大人」として扱い自立心を養う

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―フランスでの子育てで印象的なことはありましたか?

ユリエ:日本よりも良い意味で「親と距離がある」という印象があります。子どもが物心ついてくると「小さな大人」として扱い、尊重されるんです。フランスでは、「あれほしい」「抱っこして」と、駄々をこねている子どもをあまり見たことがないような気がします。同時に親が「○○しちゃだめ」と禁止や制限をしている様子もほとんど見かけません。

「どうしたら良いと思う?」という問いかけが多く、子どもの意見を尊重することで、自立心が養われ「騒いでもどうにもならない」「自分で解決する」ということを、早い段階で学んでいるんだと思います。

写真家・フルヤユリエさんが語るフランス・ナントでの暮らし

―フランス流の子育て、見習いたいですね!

ユリエ:フランスでは赤ちゃんの頃から親と別室で寝かせられるため、「寝かしつけ」もしないんですよね。親も1人の人間として、自分の時間を大切にしていて、おじいちゃんおばあちゃんに子どもを預けて夫婦で出かけたりすることも少なくないんです。だから、「パパ、ママがいないとダメ」という依存性は低いのかな。

娘もこちらに来てから子ども部屋で寝かせています。でも、渡仏前まで隣で寝かしつけをしていたので、夜中に私たちのベッドに移動してきて、一緒に朝まで寝ていることが多いです(笑)。

―フランスでは、ワインの試飲会などにも子ども連れで行けると伺いました。

ユリエ:そうなんですよね。子どもも楽しめるような企画が一緒に開催されていることも珍しくありません。そんなふうにフランスでは大人の楽しみに子どもを連れて行くのがあたりまえなんです。「子どもがいるからいけない」という場所はあまりないように思います。

レストランはもちろんバーなどのお酒を楽しむ場所でも、子ども連れでくる方も多いですし、コンサートも同様です。子連れ家族に寛容なイベントが比較的多く感じます。小さい頃からそういう大人場に行くことで、「ここではいい子にしている」というようなことを自然と学べるのかもしれないなと感じています。

―働き方の面でフランスと日本で違いを感じますか?

ユリエ:「仕事をするために生きている」のではなく、「自分の時間のため、バカンスのために仕事をしている」というスタンスなんです。プライベートが一番重要という気概が強いです。仕事はやるべきことをやったら終わり。さっぱりしていて気持ちいいくらいです(笑)。

また、フランスでは年に数回「バカンス」があります。一番大きいバカンスはやっぱり夏。フランスでは「年間5週間」休みを取らなければいけないというルールがあり、長く取る人は1カ月まとめて休む人も。子どもたちの学校でも1カ月半に1回、2週間の休みがあります。日本に比べると休みがとても多くて、最初はびっくりしました(笑)。

―今年の夏のバカンスはどのように過ごされるんですか?

ユリエ:2週間のバカンスを取って、地中海のマルタ島に家族で行く予定です。1週間ほど滞在した後は、ナントに戻ってゆっくり過ごそうかなと思っています。

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フランスでの生活について、ゆったりと穏やかにインタビューに答えてくれたユリエさん。言葉の壁や文化の違いを感じつつも、流れに任せて自然体でいることの大切さを教えてくれました。ユリエさんの撮る写真が、いつも心を温かくしてくれる理由がわかった気がしました。ユリエさんのInstagramやTwitterでは、フランスでの日常が素敵なお写真とともに綴られています。ぜひ、のぞいてみてくださいね!

photo by フルヤユリエ

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【プロフィール】フルヤユリエさん

  • Instagram:@ y_himama091
  • 写真をこよなく愛する主婦。現在フリーのWebディレクター。2018年に女の子を出産。2020年夫の転勤でフランスに移住。