福島県唯一の国宝に指定されている白水阿弥陀堂(しらみずあみだどう)の秋は、紅葉に彩られて、よりいっそう雅な世界に包まれます。日中は平安朝の浄土式庭園を、夜はライトアップされた幽玄な世界を堪能できます。
白水阿弥陀堂(しらみずあみだどう)とは?
正式名称は、願成寺阿弥陀堂(がんじょうじあみだどう)。東北地方に現存する平安時代の建築物は、白水阿弥陀堂のほか、岩手県平泉町にある中尊寺金色堂と、宮城県角田市にある高蔵寺阿弥陀堂だけですから、とても貴重な建物といえます。
その昔、岩手の平泉に金色堂を建立した藤原清衡公の娘・徳姫(とくひめ)が、いわきの岩城則道公の元にお嫁入りしました。1160年(永暦元年)、徳姫は夫の供養のため、願成寺と、その一角に阿弥陀堂を建立し、出家しました。地名は、故郷の平泉の「泉」を上下二つに分け、「白水」と名付けたとされています。また、阿弥陀堂の様式も金色堂にならって建立されたと伝えられています。
参道を進むと正面に正方形の、美しい佇まいをみせる阿弥陀堂が建っていますが、煌びやかな金色堂とは違い、こちらは素朴な木製のお堂です。境内は、平安時代から広まった仏教の浄土思想に基づき、阿弥陀如来が住む極楽浄土を具現化した、浄土庭園が造られています。阿弥陀堂の背後には経塚山(きょうづかやま)、お堂の両脇には、池が広がります。
山々をハスの花にたとえて配された庭には、俗界から極楽浄土へと繋ぐ二つの中島が南北に並び、その間に架かる反り橋と平橋、二つの橋を渡って阿弥陀堂へと続いています。周囲には、季節に応じて色づく木々が配され、小さいながらも静かで厳かな空気に包まれています。1952年国宝に指定されています。
阿弥陀様に水かき?!
阿弥陀堂に安置されているのは、中央に阿弥陀如来像、両脇に観世音菩薩像と勢至菩薩像(せいしぼさつぞう)、ならびに持国天像(じこくてんぞう)、多聞天像(たもんてんぞう)の5像で、これらは国の重要文化財となっています。
写真撮影は禁止ですが、お時間が合えば、ぜひお堂内の説明をお聞きになってください。阿弥陀如来像の手に蛙のような水かきがついていて、これは、悩む人々、苦しむ人々を救いあげるための水かきだそうです。そんな貴重なお話や、死ぬまで見られないと言われているお花の説明などが聞けます。