こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。パリの製菓学校を卒業し、パリのホテル、レストラン、製菓店で修業をしてきた中で、フランス各地を旅しました。フランスの地方ごとの食や文化を紹介する連載「旅するフレンチレシピ」。今月は、海と空の“ブルー”が美しいコート・ダジュールへ。

数々のアーティストに愛された“ブルー”の土地

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=『PARIS mag』より引用)

コート・ダジュールは、カシスという町からイタリア国境までの地中海岸沿いのエリアを指します(仏版「ラルース(仏仏辞典)」調べ)。現在は前回のプロヴァンスなどとまとめて「プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール」と呼ばれています。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=『PARIS mag』より引用)

Côte d’Azur(コート・ダジュール)のAzur(アジュール)は、海や空の「青い色=ブルー」という意味。コート・ダジュールの魅力のひとつが、この名前が表すように、地中海と空の清々しいブルーに包まれている風景です。「コート・ダジュール」は、最初に観光・リゾート地化がなされたカンヌからマントンまでの海岸線エリアに使われた呼称だそうです。この2つにはさまれたアンティーブ、ニース、エズ、モナコがよく知られているのはそのためかもしれません。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=ニースのシミエ地区にあるマティス美術館、『PARIS mag』より引用)

コート・ダジュールには多くの画家やアーティストが移り住んだことから、縁(ゆかり)のある美術館やスポットがたくさんあります。ニースのマティス美術館やシャガール美術館、アンティーブのピカソ美術館、サン・ポール・ド・ヴァンスのマーグ財団美術館、カーニュ・シュール・メールのルノワール美術館、マントンのコクトー美術館等々、挙げだしたら切りがないくらい!

リゾートでのんびりしながら、アート鑑賞も楽しめます。

コート・ダジュールはプロヴァンスに比べて魚介類が豊富!

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=海岸沿いで売られる魚。大量の小さな舌平目の左奥にイカが見えます、『PARIS mag』より引用)

料理においては、「プロヴァンス料理」とよく似ています。しいていえば、コート・ダジュールの方が地中海に接している面積が多いので、海の幸がより充実していることやアンチョビをよく使うことでしょうか。その他、ラヴィオリなどのイタリア料理っぽいもの、ザラッとした口当たりのひよこ豆の粉を使ったクレープなど、他ではあまり見かけないものがあります。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=郷土料理のひとつAïoli garni(アイオリの盛り合わせ)。茹でた魚介類や野菜にアイオリ(にんにく入りのマヨネーズ)をつけながらいただきます、『PARIS mag』より引用)

ニースまで足をのばしたときのこと。旧市街の細い道を気の向くまま廻ったあと、お昼ご飯をとることにしました。私は生まれて初めてズッキーニの花のベニエやさくらんぼのミントシロップ煮をいただいたレストランLa Merenda(ラ・ムランダ)で食べたかったのですが、おそらく閉まっていたのでしょう、願いは叶えられず、ニース港沿いのレストランへ。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=花つきのズッキーニは南仏ならではの味覚。ベニエ(厚めの衣をつけて揚げる)にしたり、花の中に詰めものをして焼いたりします、『PARIS mag』より引用)

潮風が気持ちよく通るテラスのテーブルを占領し、メニューを開くと、目に留まったのが「 Encornets farcis à la niçoise(イカのファルシ ニース風)」。「ニースでフランス版イカ飯に出合えるとは!」と、心が躍りました(笑)。フランスの場合、イカに詰めるのは、主にみじん切りにした胴以外の部分(ゲソなど)と細かくしたパンです。これは、同行したフランス人にも魅力的に映る1皿だったようで、私を含む全員がメインディッシュにオーダーしました。

イカの深い旨味と、ハーブ、そしてパスティス*が効いた香りのよいトマトソースのコンビネーションのすっかり虜に。帰ってから調べてみると、似た様な煮込み料理があることを知りました。
※パスティスはフランスのリキュールの一種。甘いアニス香が特徴。

今月ご紹介するレシピは、ニースで出合ったイカのファルシからたどり着いたイカとトマトの煮込み料理「Calamars à la niçoise(カラマール・ア・ラ・ニソワーズ|イカのニース風煮込み)」です。トマトの水煮缶でも作れますが、今の季節は、ぜひ生のトマトで作ってみてくださいね!

Calamars à la niçoise〈イカのニース風煮込み〉の作り方

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=『PARIS mag』より引用)

撮影協力:皿/ワイングラス/ワインコースター B・B・B POTTERS/ BBB&

フランスではメインディッシュとしていただきます。つけ合わせは白いご飯が定番ですが、今回はパセリを刻み入れたクスクスを添えました。ペンネやフェットチーネなどパスタにもよく合います。

【材料】(4人分)

イカ(胴と足):400g

トマト(大):2個* or トマトの水煮缶 1缶(400g)

玉ねぎ:1個(200g)

にんにく:3片

オリーブオイル:大さじ3

白ワイン:100ml

黒オリーブ:16個

タイム(生・みじん切り):小さじ1/2

ローズマリー(生・みじん切り):小さじ1/2

塩:小さじ1/2+適量

<つけ合わせ>

クスクス:200g

水:400ml

塩:小さじ1

オリーブオイル:大さじ2~3

パセリ(生・みじん切り):大さじ4

*生のトマトを使う場合は、総量430~450gを目安に

*辛いのが好きな方は赤唐辛子を1~2本入れても◎

【作り方】

1.材料をカットします。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=『PARIS mag』より引用)

・イカは食べやすい大きさに切ってよく洗い、キッチンペーパーで水気をしっかりとります。

・トマトは湯むきをし(皮が気にならない人はそのままでも)、ヘタをとって2cm角に切ります。

・玉ねぎは薄皮を除いて薄切りにし、にんにくは薄皮と芽を除いてみじん切りにします。

2.炒めて、煮込みます。

・鍋にオリーブオイルとにんにく(唐辛子を入れる場合はここで)を入れ、中火にかけます。

・にんにくが少し色づいたら、玉ねぎを加え、玉ねぎが透き通るまで炒めます。さらにイカを加えて軽く炒めます。

・トマトと塩小さじ1/2を加えて軽く混ぜ、ふたをしないで弱火で10分煮込みます。

・白ワインとオリーブを加え、ふたをしないで弱火で10分煮込みます。

・タイムとローズマリーを加え、味をみて足りないようなら塩を加えます。

3.つけ合わせを作る。

地中海の“ブルー”を思い出す…。イカのニース風煮込み、クスクス添え
(画像=『PARIS mag』より引用)

・小鍋に水と塩を入れて軽く混ぜ、沸騰させます。

・耐熱ボールにクスクスを入れ、沸騰させた塩水を加え、ふたをして15分蒸らします。

・オリーブオイルとパセリを加え、ほぐしながら混ぜます。

[2]と[3]をお皿に盛ったら完成!よく冷えた辛口の白ワインと一緒に召し上がれ。同じくすっきり辛口のスパークリングワインもよく合いますよ。

★イベント情報

森田けいこ&山本ゆりこ パリ時間旅行 #6

〜 パリの近代の物語とおいしい話

2022年7月29日(金)20:30-22:00(日本時間)

シリーズでお届けしているZoomライヴ中継セミナー「森田けいこ&山本ゆりこ パリ時間旅行」。第6回は現代に残る「近代のパリ」を歩きます。大きなモニュメントの意味とは?庶民の生活を彩ったパサージュなど、街歩きをしながらちょっぴり賢くなりましょう!お申し込みは、お早めにどうぞ!

主催:アンスティチュ・フランセ九州-沖縄


提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)

【こちらの記事も読まれています】
今気になるのは“固め”プリン。都内で楽しめるプリン6選
フランスの国民食!クスクスを使ったタブレのレシピ
おうち時間に作りたい!家庭で作るフレンチレシピ集
パリのブロカントショップ『Brocante Petite LULU』に聞く、アンティークの楽しみ
2020年最新!パリグルメ通がおすすめするパリのお土産4選