毎年、春ごろの「今年の夏は暑くなる」という予報を見て、「……でしょうね」と驚きもしなくなった昨今。今年は3年ぶりに、5月に最高気温が35度を超える猛暑日を記録し、すでに本気モードの気配です。
写真はイメージです。(以下同じ)
暑い日で気を付けたいのが、熱中症。コロナ禍も落ち着きを見せ、今年の夏は外出の機会も増えそうですし、せっかくの夏を楽しむためにも、予防・対策をしておきたいですよね。
そんな中、意外な熱中症対策があるという情報をキャッチ! なんでも、信州大学大学院の増木静江教授、能勢博特任教授らの研究グループが発表した最新の研究結果だとか。そこで、この2人に新しい熱中症対策のメカニズムと、具体的な方法について聞いてきました。
熱中症ってどんな症状?
そもそも、熱中症とはどんな状態を言うのでしょうか。
今回の研究を中心に行っていた増木静江先生によると、「真夏の屋外で運動をすると、筋肉によって熱が作られ、体の循環によって体温を上昇させます。このとき、体に熱を放散する機能が働かなければ、体温は39度を超えて、熱中症のリスクが高まります」とのこと。
増木静江先生
では予防をするにはどうしたらよいのかというと、体には2つの熱を逃がす方法があると言います。
「1つは皮膚血流の上昇。大気との温度差で、体温を放散します。もう一つが発汗です。汗が気化するときに皮膚表面から熱を奪い、体温を放散します。つまり、皮膚の血流と発汗の反応を高めれば、体温の上昇を抑制して、その結果熱中症のリスクを下げることができるのです」(増木先生)
なるほど、皮膚の血流アップと汗をかけば、体の熱を外に逃がすことができるわけですね。
一般的な熱中症対策とは
さて、メカニズムが分かったところで、一般的な熱中症対策についても理解しておきましょう。
能勢博先生
長年、熱中症に関する研究に従事している能勢博先生によると、「暑いところで運動をする以外でも熱中症になる」こともあるそうです。
「体はいつも熱を産生していて、放散できないと体温は上がっていきます。部屋の中で知らないうちに体温が上がって熱中症になる、というリスクを防ぐために、部屋の温度が常に分かるように、温度計を設置しておきましょう。28度を超えたら冷房をつける、などと決めておくとよいです」(能勢先生)
また、厚労省の〈熱中症予防のための情報・資料サイト〉でも、体の蓄熱を避けるために「通気性のよい、吸湿性・速乾性のある衣服を着用する」、「保冷剤、氷、冷たいタオルなどで体を冷やす」といった方法を提示しています。さらに、熱の放散に水分は不可欠なので、こまめな水分補給(水分・塩分、スポーツドリンクなど)も大切です。
熱中症のリスクを下げる新しい対策も
では、いよいよ今回初めてわかった熱中症対策の新情報をご紹介しましょう。
「真夏の野外で健康な中高年者103人に運動強度70%程度の運動を習慣的にしてもらい、有酸素運動の直後にゼリー飲料とヨーグルト飲料を摂取する2つの群に分けて、体温上昇の指標となるトレーニング時の心拍数を測定しました。結果、運動を始めて30日目以降に、ヨーグルト飲料を摂取した群の方が、運動時の心拍数が有意に低下していました。つまり、高齢者による運動とヨーグルト飲料摂取の併用習慣は、運動・暑熱ストレス耐性を改善し、熱中症対策になる可能性があるということです」(増木先生)
研究結果を聞いただけではちょっぴり難しいのですが、詳しく解説すると、運動直後にヨーグルトに含まれる「乳タンパク質」と「糖質」を摂ることが、熱中症対策のポイントになるそう。
「熱中症対策には、血液の量を増やして体温調節機能をアップさせることが重要。そのためには、血液中のアルブミンというたんぱく質を増やす必要があります。まずは運動直後に乳タンパク質を摂取すると、肝臓でアルブミンの合成が促進されます。この時、一緒に糖質を摂ることで、さらにアルブミンの合成を促します。するとアルブミンが血中に放出され、水を血液の中に引き込んで血液量が増える。よって、体温調節がしやすくなるわけです」(増木先生)
乳タンパク質と糖質を一緒に摂れる食品として、ヨーグルトドリンクがいい、ということなのですね。ちなみに、食べるタイプのヨーグルトでも効果は同じだそうですが、運動直後ということで、摂取しやすいヨーグルトドリンクがおすすめとのこと。たしかに、ドリンクならカトラリーがいらないし、のど越しもよさそうですよね。
暑いところでの運動がなぜ熱中症対策に?
また、運動強度70%という度合いは具体的にどのくらいかというと、“ちょっときついな、と思うくらい”。息が弾んできて、ちょっとしんどいくらいのイメージです。
とはいえ、暑いところでちょっときつい運動をすることも熱中症対策になるというのは、不思議な気がします。実はこれについても、“血液の量を増やして体温調節機能アップ”というところにつながるそう。
「少しきつい運動を暑いところでしても、短い時間(20分以内)なら熱中症のリスクも低いですし、それによって血液の量が増えるとともに、皮膚血流がよくなって、汗も出やすくなります。運動トレーニングで心臓に返ってくる血液量を増やすことで、体温調節機能はアップしますよ」(増木先生)
「血流がよくなると汗も出やすくなります。運動で心臓に返ってくる血液量を増やすことで、体温調節機能はアップしますよ」(能勢先生)
つまり、あえて暑いところで運動をして血液量を増やし、かつヨーグルトドリンクでも血液量を増やして体温機能調節の能力をアップさせ、熱中症に強い体づくりをする、ということなのですね。
ちなみにこの研究では中高年者を被験者として行い、結果が出たのは30日後。本格的に暑くなる前から対策を始める必要がありますが、増木先生いわく「若い人は5日くらいで結果が出る可能性がある」とのこと。ということは、6月~7月上旬くらいから対策しておくとよさそうですよね。
対策で熱中症に負けない体づくりをして、夏を楽しもう!
一般的な対策もしつつ、今から熱中症に強い体作りをしておけば、猛暑の夏が迫ってきても前向きに楽しめそう。
とはいえ、日ごろから生活が不規則な人や、空腹な状態、寝不足、二日酔い、下痢などといった状態だと、熱中症のリスクがグンと上がってしまうのだとか。また糖尿病や高血圧症、肥満の人も、熱中症リスクが高いとのことなので、まずは毎日の健康維持が不可欠です。
規則正しい生活とバランスの良い食事、質の良い睡眠、そして少しきつい運動とヨーグルト。これって、熱中症予防だけでなく、気づいたら肌もスタイルも整ってきそう。このタイミングに自分の体を整えて、思いきり夏を楽しみたいですね!
<文/関由佳> 関由佳 筆跡アナリストで心理カウンセラー、カラーセラピストの資格も持つ。芸能人の筆跡分析のコラムを執筆し、『村上マヨネーズのツッコませて頂きます!』(関西テレビ)などのテレビ出演も。夫との死別経験から、現在グリーフ専門士の資格を習得中。Twitter/ブログ
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