好青年な店員の意外な過去
驚きつつも琴音さんが知っていると答えると、彼は気恥ずかしそうに自分について話し出したそうです。
「実は彼、当時地元のヤンキー集団の一人として仲間とつるんでいたんです」
写真はイメージです。(以下同じ)
彼がその当時ヤンキー集団に入ったのは反抗期の一環で、口うるさい親への反抗でもあったといいます。また、家業がメガネ屋だったため、メガネそのものにも反抗し自身が低視力であるにもかかわらずメガネも拒否していました。そのせいである一定距離以上の被写体には必ず目を細めるクセがついたのです。
「その話を聞いて彼が昔、私のことをにらみつけていた男だってようやく合点がいったんです。昔とは全然印象が違ったので全く気が付きませんでした」
彼の佇まいに当時の不機嫌そうなオーラや眼光の鋭さはなく、すっかり柔和な雰囲気になっていたそうです。
にらんでいたのではなく、目で追っていた
「あの時私をにらんでいたのは、好意はあったけれど話しかける勇気もなかったからただ目で追っていたんだって彼は言っていました」
今ではすっかり眼鏡屋の好青年。彼は、当時は見た目とは裏腹のキュートな心情を抱えていたことを吐露し、改めて当時、にらむことで琴音さんに怖い思いをさせてしまったことを詫びてくれたそう。
その後、琴音さんは購入したメガネの調整などで何度か来店するようになりました。そのやり取りの中ですっかり打ち解けた二人は、現在ではなんと恋人に進展。最近では、昔のあの公園で待ち合わせをしてデートを楽しんでいるのだと琴音さんは嬉しそうに教えてくれました。
今回の琴音さんのお話のように、一見「嫌われている」といった悪印象を持ってしまうような行動でも、その理由は案外照れ隠しなどであったりするのかもしれません。自分にとってはよくわからない言動でも、いったん立ち止まりその言葉の意味をよく考えてみると、よい結果をもたらしてくれる場面もありそうです。
―シリーズ「あの人は今」―
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<文/大杉沙樹> 大杉沙樹
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