こんにちは。菓子・料理研究家の山本ゆりこです。パリの製菓学校を卒業し、パリのホテル、レストラン、製菓店で修業をしてきた中で、フランス各地を旅しました。そんな旅で出合ったフランスの地方ごとの食や文化をこれから連載していきたいと思います。

今月は、夏のバカンス地でおなじみのプロヴァンスの旅へ。

プロヴァンスの空の下で食べた食事の記憶

プロヴァンスはフランス革命以前からある古い地方名です。現在は、ニースやカンヌのあるコート・ダジュールなどと一緒になって「プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール」と呼ばれています。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

モノトーンのパリからプロヴァンスへ行くと、目に映るものすべてが太陽の光を燦々と浴び、キラキラとしていて、空のブルーもひときわ澄んでいるように感じます。乾いた赤土に根をはりめぐらすオリーブの木々、たくましくのびるハーブや花々の群生、その色や形、匂いもまた魅力的です。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

オリーブの木は5月の終わり頃に、小粒の白い花を咲かせ、風まかせの受粉が始まります。そして、これからの季節はラベンダー。一面に広がる紫色の花畑から、ふわっといい香りを届けてくれるでしょう。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

オープンエアのテーブルでいただく食事、ときには木陰で、ときには広げたパラソルの下で…。それがとびきりおいしいことを知ったのは、プロヴァンスだったと記憶しています。6月の夜10時くらいまで明るい空の下、プロヴァンスの空気に風に身体をゆだねながら、土地の料理をいただく幸福感は、私の心に鮮明に刻まれているのです。太陽の光をたっぷりと浴びた野菜をシンプルに調理した前菜、ハーブをきかせた肉や魚のメインディッシュ。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

上品なコクとフレッシュな青味のある土地のオリーブオイルも、素材の味を引き立たたせていて…。舌の記憶をたどっても胸が熱くなります。

夏野菜を味わう!プロヴァンスの代表料理・ティアン

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

メニューにおいてprovençal / provençale(プロヴァンサル|プロヴァンスの、プロヴァンス風の)というと、トマトを使った料理、トマト味の料理と考えて、まず間違いありません。トマトやズッキーニ、ナス、パプリカなどを、くたっとなるまで煮込んだRatatouille(ラタトゥイユ)は代表的なプロヴァンス料理です。その昔、これらの野菜が出回る夏にたくさんこしらえ、ビンに詰めてカーヴ(倉庫)に保存しておいたのだとか。

これらの野菜を使ったもうひとつの代表的なプロヴァンス料理が、今月ご紹介する「Tian de légumes(ティアン・ド・レギューム|野菜のティアン)」。野菜をスライスして、オーブン皿に並べて焼いたものです。「ティアン」はプロヴァンスの赤土で作った素焼きの器のことで、これを使って作った料理のことも「ティアン」といいます(仏版「ラルース(仏仏辞典)」調べ)。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

南仏に住むフランス人のお宅で、このティアンにふわふわのフォイユ・ド・シェーヌ(葉野菜の1種)が盛られ、緑釉のプロヴァンスのお皿にのせられたフロマージュ(チーズ)と一緒に供されたときには、とても粋なコーディネイトにハッとしました。

野菜のティアンは、これからどんどんおいしくなるトマト、ズッキーニ、なすに、玉ねぎを合わせます。それぞれの野菜の持つ風味に、トマトの酸味と玉ねぎの甘味が合わさった、味のハーモニーをお楽しみください。

Tian de légumes〈野菜のティアン〉の作り方

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

フランスでは主に前菜としていただきますが、日本では、塩気の強いシャルキュトゥリ(豚肉加工品)やプレーンオムレツなどの卵料理と合わせても。残った翌日はラタトゥイユと同様冷たいままでもおいしいですし、シュレッドチーズやちぎったモッツァレラチーズをのせてオーブンで焼き直してもOKです。

【材料】(直径22cmのオーブン皿 1台分)

トマト(中):3個

ズッキーニ:1本

ナス:1本

玉ねぎ(中):1個

にんにく:1片

タイム(生):6本

オリーブオイル:大さじ4

塩:適量

粗挽き黒こしょう:適量

*ハーブは生でもドライでも可。タイムの他に、ローズマリー、オレガノ、バジルなど、1種でも組み合わせてもいいです。

*プロヴァンスが発祥のミックスハーブ「エルブ・ド・プロヴァンス」をお持ちなら、ぜひお使いください。

【作り方】

1.野菜をカットして、調味料をまぶします。

・にんにくは薄皮と芽を除いたものを、オーブン皿の底にこすりつけたら、薄切りにします(みじん切りでも可)。

・ズッキーニとナスは5mm厚さの輪切りにし、ボールに入れ、オリーブオイル大さじ1、塩をまわしかけ、まぶします。

・玉ねぎは薄皮を除いて5mmよりも薄めの輪切り(オニオンリングの形で)にし、別のボールに入れ、オリーブオイル大さじ1、塩をまわしかけ、まぶします。

・トマトはヘタをとって8mm厚さの輪切り(ヘタに平行に)にし、さらに半分にカットします。

2.型に並べて、仕上げます。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

トマト、玉ねぎ、ナス、ズッキーニの順に重ねたものをワンセットにして、型に並べていきます。玉ねぎはバラバラになりやすいので、そのつど半分にカットしながらやるとよいでしょう。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

野菜は直径が大きいものを外側に使うのがポイントです。型のすき間ににんにくを並べ(みじん切りの場合は全体にちらす)、タイムをちらし、全体に塩、粗挽き黒こしょうをふります。

3.オーブンで焼きます。

プロヴァンスで食べた思い出の味!夏野菜たっぷりのティアンと冷えたロゼ
(画像=『PARIS mag』より引用)

200℃に温めたオーブンで50~60分焼きます。ズッキーニと玉ねぎに火が通っていればでき上がりです。焦げそうなときは、アルミホイルをのせて焼いてください。

プロヴァンスでは’ pas d’été sans rosé(ロゼのない夏はない)’という言葉があるほど、これからの季節、ロゼワインが欠かせません。よく冷えたロゼワインまたは白ワインとご一緒にどうぞ。

★イベント情報

森田けいこ&山本ゆりこ パリ時間旅行 #5 bis

〜 先着500名 パリ祭スペシャル企画「革命スピンオフ」

2022年7月14日(木)20:00-21:00(日本時間)

シリーズでお届けしているZoomライヴ中継セミナー「森田けいこ&山本ゆりこ パリ時間旅行」。パリ祭のお祝いを兼ねて、今回はパリ祭スペシャル企画「革命スピンオフ」として開催。先着500名様を無料ご招待!お申し込みは、お早めにどうぞ!

主催:アンスティチュ・フランセ九州-沖縄


提供・PARIS mag(シンプルで上質なライフスタイルを提案するWEBマガジン)

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