「悪いなあ」と思うことほど、少しでも早く伝えた方がいい。
一田憲子さんの暮らし
「悪くて、なかなか言い出せない」ってこと、あるよねえ。「悪いなあ」「でも、それを伝えると気まずいなあ」……。そうやって悶々とする時には、とっとと言ってしまう!というのが、いちばんいいことだと最近わかってきました。
たとえば、ずっとAさんに仕事をお願いしてきたけれど、リニューアルにあたって別のBさんに依頼することになった時。「ああ、違う人に仕事を頼むと伝えたら、あの人傷つくかなあ」と思ってしまいます。
あるいは、友人が持っていたバッグが素敵で、どこで買ったのかを教えてもらったけれど、結局違うお店で違うバッグを買ってしまった時。「せっかく紹介してもらったのに、違うもの買ったなんて言いにくいなあ」と、言えないままずるずると時間がたってしまうこととか、あるよねえ。私も、言いにくいことを結局ウヤムヤに終わらせてしまったことが多々ありました。
ある時、ずっと一緒に本を作ってきた仲間が、私と違うライターさんと組んで本を出したと知ったんだよね。「まあ、そんなこともあるよね」と受け止めたけれど、なぜかモヤモヤする……。
そして思ったのです。「早く言ってくれたらよかったのに」って。
私が悲しいと感じた理由は、「ずっと『そのこと』を隠し続けられてきた」という事実でした。別に、他の人に頼んでもらったって全然構わないのです。
「イチダさん、ちょっと違う人と一緒に仕事をしてみたら、新しい世界が開けるかもしれないから、次回は違うライターさんに頼んでみることにしました~!」って明るく言ってくれれば、大して傷つかなかったと思うなあ。
「ちゃんと本当のことを話した」という誠意が重要
人がいちばんモヤモヤするのは、「事実」ではなく「無意識の悪意」なんだと、その時初めて知りました。「別の人に仕事を依頼する」ということは、変えようがない事実です。そう決まったなら仕方がない。まあ多少がっかりすることがあっても、「そっか」と消化できる気がします。
でもその事実が「隠された」と思った時、人は相手の「悪意」を感じてしまうんじゃないかなあ。それが人を傷つけます。たぶん、その人は「悪意」なんて持っていなかったんだよね。ただ「ちょっと新しい人とやってみたい」と思っただけ。だったら、正直に事情を話せばいいだけ。
誠実に本当のことを話してくれたら、またいつか一緒に仕事ができるんじゃないかな。それは、「ちゃんと本当のことを話した」という誠意によって、仕事は途切れても、人と人との関係は切れないからなんだと思います。
それでも相手にとって、決して喜ばしい状況でない変化を伝えるのは気が重いよねえ。だからこそ、「どうしよう」「言わなくちゃ」「でも言えない」と行ったり来たりする前に、とっとと言ってしまうスピード感が大事になるんだと思います。正直になれば、きっとわかってもらえるはず。逆に素直な気持ちを真っすぐに伝えることで、その人の誠実さが感じられて「言いにくいことをよく言ってくれた」と、信頼度が増すんじゃないかと思います。
自分が「隠し事をされた」経験から、「言いにくいことほど、できるだけ早く伝える」ということが、逆に優しさにつながるとわかってきました。マイナスのことを伝えなくてはいけなかったとしても、相手を大切に思う気持ちを失わなければきっと大丈夫!そう信じられる気がしています。
<文/一田憲子 女子SPA!編集部 撮影/山田耕司>
【一田憲子】 1964年生まれ。編集者・ライター。OLを経て編集プロダクションへ転職後、フリーライターとして数々の書籍や雑誌で活躍。ムック『暮らしのおへそ』『大人になったら、着たい服』(ともに主婦と生活社)は、企画から編集までを手掛ける。著書に『大人になってやめたこと』など。ホームページ「外の音、内の香」では暮らしの知恵を綴っている。 一田憲子
提供・女子SPA!
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