年金がどれぐらいもらえるかわからない今、自分の努力で老後資金を貯める必要があるといっても間違いではないでしょう。しかし、どうやって準備すればいいのか迷っているという人も多いと思います。今回は老後資金の準備方法としてよく聞く「個人年金保険」と「iDeCo」について、それぞれの特徴とメリット・デメリットを解説し、どういうタイプの人にはどちらの制度が向いているのかも併せてご紹介します。どちらで老後資金を準備しようか迷っている人はぜひ参考にしてみてください。

iDeCoとはどんな制度?個人年金保険との違いは?

個人年金保険とは

個人年金保険は、国民年金や厚生年金などの、誰もが加入しなければならない公的年金とは違い、自分で加入するかしないかを選ぶ私的年金の一種です。60歳や65歳といった一定の年齢まで保険料という形でお金を積み立て、その後は5年や10年の一定期間、もしくは一生涯にわたって毎年年金が受け取れる貯蓄型の保険になります。

年金を受け取る人(=被保険者)が年金を受け取る前になくなってしまった場合、すでに払い込んだ保険料相当額の死亡給付金が残された遺族に支払われます。

個人年金保険は、年金の受け取り期間によって「確定年金」「有期年金」「終身年金」の3つの種類があります(表1)。年金を受け取り始めてから被保険者が亡くなった場合の取り扱いもそれぞれ異なります。
 

表1.個人年金保険の種類
個人年金の種類 年金の受取期間 被保険者が死亡した場合
終身年金 被保険者が生存している限り、
一生涯年金を受け取れます。
年金の支払いは終了します。
年金受取開始後早期に
なくなってしまうと
損をするリスクがあります。
有期年金 被保険者が生存している限り、
契約時に定めた一定期間だけ
年金を受け取れます。
年金の支払いは終了します。
年金受取開始後早期に
なくなってしまうと損をする
リスクがあります。
確定年金 被保険者の生死に関係なく、
契約時に決めた一定期間だけ
年金を受け取れます。
遺族に年金が支払われます。

iDeCoとは

iDeCoは、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金の一種です。公的年金の補助的な役割を期待されていますが、加入するかどうかは自分で決め、自分が拠出した掛金を自分で運用して資産を形成します。掛金は60歳になるまで拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができます。

iDeCoでは国民年金の加入区分に応じて拠出できる掛金の上限が異なるので、自分がどの加入区分に属しているのかを確認しておきましょう。
 

表2. iDeCo(イデコ)の掛金の拠出限度額
国民年金の加入区分 対象者 掛金の上限額
第1号被保険者 自営業者、フリーター 月額6万8,000円
第2号被保険者 会社に企業年金がない会社員 月額2万3,000円
企業型確定拠出年金に加入している会社員 月額2万円
確定給付企業年金と企業型確定拠出年金に
加入している会社員
月額1万2,000円
確定給付企業年金のみに加入している会社員
公務員等
第3号被保険者 専業主婦(夫) 月額2万3,000円

iDeCoは月々5,000円から始めることができ、掛金額も1,000円単位で自由に設定・変更できるので、ライフスタイルに合わせて無理のない負担で老後に備えることができます。

個人年金保険とiDeCoの比較

2つの制度の特徴を比較すると以下のようになります(表3)。
 

表3. iDeCoと個人年金保険の制度の比較
iDeCo 個人年金保険
取り扱い 銀行、証券会社 保険会社
掛金(積立金) 変更可(上限あり) 契約時に決定
受給額 運用成績による 確定
途中解約 原則不可 可能
運用責任 自分 保険会社
管理コスト 加入時や運用時に手数料、
投資信託運用時の信託報酬が発生
不要

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サポート体制 平日・土曜の8:00~18:00
(※土曜は新規加入に関す
る問い合わせのみ受付)
平日10:00~19:00
土曜9:00~17:00
平日10:00~19:00
土曜9:00~17:00
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個人年金保険とiDeCo、税制面ではiDeCoが圧倒的にお得

(写真=PIXTA)

個人年金保険の所得控除には制限がある

個人年金保険とiDeCoでは、どちらも掛け金に対して所得控除が受けられますが、iDeCoが掛け金の全額を所得控除されるのに対し、個人年金保険は最高4万円までと決まっています。

例えば、毎月1万円を個人年金保険とiDeCoに払う場合で比較してみましょう。iDeCoでは年間の掛金12万円がすべて税額軽減の対象になりますが、個人年金保険ではその額は4万円です。仮に所得税10%、住民税10%とすると、iDeCoでは年間2万4,000円税金が安くなる(手取りが増える)のに比べ、個人年金保険は8,000円とかなり差があることがわかります。

iDeCoでは運用益が非課税になる

iDeCoのもう一つの税制メリットは運用益が非課税になることです。例えば、本来100万円のお金を運用して120万円になった場合、利益の20万円に対して20.315%、つまり4万630円の税金がかかりますが、iDeCoではこの税金がかからず、20万円をそのまま再投資することができます。

このように、iDeCoは税金面でとてもメリットがある制度と言えます。

個人年金保険とiDeCoそれぞれのメリット・デメリット

個人年金保険とiDeCoのメリット・デメリットをまとめると以下のようになります(表4)。
 

表4.個人年金保険とiDeCoのメリット・デメリット
メリット デメリット
個人年金保険 ・年金額が決まっている
・途中で解約できる
・確実に貯蓄できる
・積立金の所得控除が小さい
・インフレに弱い
・途中で解約すると
元本割れすることがある
iDeCo ・掛金が全額所得控除
・運用益が非課税
・運用が好調なら老後資金が増える
・掛金の金額変更が容易
・60歳まで解約できない
・老後の年金額が確定しない
・運用によっては損失が出る
・手数料がかかる
・投資に関する知識が必要

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インフレリスクに弱い個人年金保険

(写真=PIXTA)

個人年金保険は利率が決まっている

個人年金保険は、将来決まった額を確実に受け取ることを目的にしたものなので、運用利率は契約する時に決まっています。老後に景気が悪くなっていても当初決めた金額を受け取れるのはメリットですが、逆に将来物価が上がっていても受け取れる金額が増えないという問題もあります。

iDeCoでは投資信託も扱っており、ある程度自分の運用次第で利益を期待することもできます。また、個人年金保険の利率は銀行預金より高いと比較されることもありますが、銀行預金がいつ解約しても元本が減らない&将来景気が上がれば金利が増える可能性がある(変動金利)なのに対し、個人年金保険は中途解約では元本割れする可能性があり、金利がずっと変わらない(固定金利)点にも注意しておきましょう。

20年後には無視できないインフレリスク

日本は長い間ずっと低金利ですので、5,6年後にインフレになるかと言われればその可能性は低いと思いますが、今の30代40代の方が退職を迎える頃にはどうなっているかわかりません。老後資金は必要になる時期が20年、30年先になるため、今は考えられないようなリスクにもできるだけ配慮しましょう。

個人年金保険は途中で解約できるのがメリット

(写真=PIXTA)

個人年金保険とiDeCoのデメリットを比較

税金面のメリットが大きいiDeCoですが、もちろんデメリットもあります。iDeCoは運用することでインフレに備えることができる半面、運用がうまくいかなければ資産が減る怖れがあります。これが将来もらえる金額が決まっている個人年金保険と違うところで、iDeCoで利益を得るためにはやはりある程度投資の勉強をする必要があります。

また、iDeCoの大きな目的は老後資金の準備であることから、原則として60歳未満では途中でお金が引き出せません。急にお金が必要になった時、自分の資産であるにもかかわらず自由に使うことができないため、iDeCoに月々いくらお金を拠出するかは慎重に考えなければなりません。

もしもの時に使える個人年金保険

個人年金保険は中途で解約すると「解約控除」という手数料が取られ、自分が払ってきた保険料よりも返ってくる金額が少なくなることがありますが、それでもいざという時に現金化することができます。つまり、老後資金以外の用途でも使うことができます。

ただし、当然途中で解約すると老後資金は貯まりませんので、iDeCoの60歳までは引き出せないデメリットは、老後資金が確実に貯まるというメリットにもなります。

老後資金を貯めるならiDeCoだが、その額は慎重に決めよう

(写真=PIXTA)

老後資金を貯める手段としてよく紹介される個人年金保険とiDeCoをご紹介しました。税金面でのお得感や将来のインフレリスクなどを考えると、老後資金という目的だけではiDeCoの方が有利と言えるでしょう。ただし、iDeCoを活用するにはある程度知識が必要ですし、中途換金ができません。毎月の掛け金は今の生活が苦しくならないよう、慎重に決めるようにしましょう。

個人年金とiDeCo、それぞれに向いている人とは?

個人年金に向いている人

個人年金保険は将来もらえる年金額が決まっている上、自分で運用しなくてもいい商品ですので、今まで資産運用をしたことがなく投資にあまり興味がない方や、お金が減るのは絶対に嫌という人に向いています。

ただし、インフレに弱いので、老後までの期間が長い若い世代の人が始めるというよりは、老後を意識し始めた40代以降の人の資金準備に、より適しています。

iDeCoに向いている人

iDeCoでは掛金が全額所得控除になるので、所得が多い人が利用することで税金を大きく軽減させることができます。60歳までは原則として資金を引き出すことはできませんが、その分運用益が非課税になり効率よく資産を増やせるので、公務員や大企業の会社員など安定した職業の人にも向いています。

また、いい意味でも悪い意味でも自己責任の制度ですので、投資経験があり、自分のお金は自分で管理したい人にもおすすめです。

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個人年金とiDeCo、併用はできる?

個人年金保険とiDeCoはどちらも同時に利用することができます。所得控除も個人年金保険は「生命保険料控除」、iDeCoは「小規模企業共済等掛金控除」と控除枠が異なるので、うまく併用できれば支払う税金を大きく軽減させることができます。

しかし、iDeCoは途中で資産を引き出せませんし、個人年金保険も途中で解約すると元本割れの可能性があるため、月々の掛金(積立金)の合計額は生活を圧迫しない範囲に抑えるようにしましょう。

今後お金がかかるライフイベントを控えている人であれば、税制面でのメリットはありませんが、いつでも引き出せる貯金などで合わせて老後の対策をすることも検討してみてはいかがでしょうか。

松岡紀史
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。
筑波大学経営・政策科学研究科でファイナンスを学ぶ。20代の時1年間滞在したオーストラリアで、収入は少ないながら楽しく暮らす現地の人の生活に感銘を受け、日本にも同様の生活スタイルを広めたいという想いから、 帰国後AFPを取得しライツワードFP事務所を設立。家計改善と生活の質の両立を目指し、無理のない節約やお金のかからない趣味の提案などを行っている。

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