フリーランスなどの自営業者は、会社員より社会保障が薄くなります。特に差がつくのが「年金」です。自営業の年金は、厚生年金がある給与所得者とは異なり「国民年金」のみです。2020年度の国民年金の給付月額は満額でも約6万5,141円となっており、今後はさらに減少する可能性もあります。

そこで、老後資金を考えると不安な人に“年金を増やす方法”として検討してほしいのが、「国民年金基金」や「iDeCo」への加入です。特に自営業の人は要チェック!この記事では、最初に加入するなら「国民年金基金とiDeCoのどちらを選ぶとよいか?」という視点から両者を比較してみました。

自営業なら、「国民年金基金」への加入がおすすめ

自営業の人が「国民年金基金」と「iDeCo」のどちらかで迷っているなら、まずは「国民年金基金」に加入するのがおすすめです。

両者とも税制上の優遇を受けられるお得な制度ですが、細かく比較していくと、自営業の人にはどちらかと言えば「国民年金基金」の方がよりお得と言えるでしょう。

なお、この後で詳しく説明しますが、会社員や公務員などの国民年金第2号被保険者は「国民年金基金」への加入はできません。

どちらに入れる? よりおすすめなのは?
自営業者など
(国民年金第1号被保険者)
「国民年金基金」と
「iDeCo」両方入れる
「国民年金基金」
会社員、公務員など
(国民年金第2号被保険者)
「iDeCo」しか入れない -

では自営業の人に、「iDeCo」より「国民年金基金」をおすすめするのはなぜでしょう?それぞれを比較しながら、その理由を解説していきます!

まずは「国民年金基金」と「iDeCo」について理解しよう

(写真=PIXTA)

両者を細かく比較する前に、まずは「国民年金基金」と「iDeCo」の概要について理解しておきましょう。

「国民年金基金」とは?

「国民年金基金」は、国民年金第1号被保険者を対象とした公的年金です。“国民年金第1号被保険者”とは、自営業やフリーランスの人のこと。

加入は任意で、掛金を納付します。この掛金を自分で運用する必要はありません。老後は掛金に応じた金額の年金を受け取れます。

その他、細かい特徴も次にまとめました。

<国民年金基金の特徴>

・国民年金第1号被保険者(自営業者やフリーランスの人)対象の公的年金
- 税制上の優遇がある
- 自分では運用しない
- “終身年金”と“確定年金”がある
- 掛金月額や口数で年金給付額が確定する
- 掛金月額は自分で決められない
- 年金の給付方法は「老齢年金」と「遺族一時金」の2種類
- 年金の給付開始は原則65歳だけど60歳給付もあり

「iDeCo」とは?

年金を増やせるもう一つの方法が「iDeCo」です。

加入の申し込みは、「iDeCo」を取り扱う証券会社や銀行などで行います。「iDeCo」の最大の特徴は、自分の運用次第で将来の年金額が変わる“個人型確定拠出年金”ということです。

「iDeCo」に拠出した掛金は、原則60歳まで引き出せません。また、60歳時点で加入期間が10年未満だと一時金や年金の受け取り時期が遅くなります。そのため、加入時期や掛金額についてはよく検討することが必要です。

<iDeCoの特徴>

・個人型確定拠出年金(確定年金)
- 税制上の優遇がある
- “有期年金”
- 自分で年金資金を運用する
- 老齢年金や老齢一時金で受け取れる
- 原則60歳までは引き出せない
- 60歳で加入期間が10年未満だと年金等の受け取り開始年齢が遅くなる

さらにチェック!「国民年金基金」と「iDeCo」とでは加入条件が大きく違う

(写真=PIXTA)

そもそも「国民年金基金」と「iDeCo」の加入条件は大きく異なります。この違いも押さえておきましょう。

「国民年金基金」に加入できるのは国民年金の第1号被保険者となる次の人です。

1.自営業者やその家族
2.学生
3.任意で国民年金を納付している65歳以上と海外在住者
※国民年金保険料の免除者や滞納者を除く

一方、「iDeCo」には20歳以上60歳未満の以下の人が加入できます。

1.国民年金の第1号被保険者(自営業など)
※国民年金保険料の免除などを受けている人と農業者年金の被保険者を除く
2.国民年金第2号被保険者(会社員など)
※勤務先に企業年金制度がある、iDeCoへの加入を認めて企業に勤める人などを除く
3.国民年金の第3号被保険者(専業主婦/主夫など)

簡単にまとめると、

・「国民年金基金」は対象者が限られた年金制度
- 「iDeCo」は万人向けの年金制度

と言えるでしょう。

なお自営業者はどちらの加入条件も満たしているため、両方同時に加入することが可能です。だからこそどちらに加入すべきか迷ってしまうという人が多いようです。

「国民年金基金」と「iDeCo」、徹底比較すると見えてくる!「国民年金基金」を選ぶべき理由

(写真=PIXTA)

ここまで「国民年金基金」と「iDeCo」の基本的な違いを説明しました。その上で、次の4つのポイントで「国民年金基金」と「iDeCo」を比較していきましょう。

・賭け金の上限額
- 税金面
- 年金の受け取り期間
- 資産の運用方法

両者を細かく比較していくと、自営業の人が“国民年金基金への加入を優先させるべき理由”が見えてくるでしょう。

「国民年金基金」と「iDeCo」の比較1:掛金の上限額

【比較の結果】
掛金の上限額は「国民年金基金」と「iDeCo」で同じ

1ヵ月あたりの「国民年金基金」の掛金と「iDeCo」の掛金(拠出額)の上限を両者で比較してみると、同じ金額だということがわかります。

<国民年金基金>
「国民年金基金」の掛金の上限は1ヵ月6万8,000円です。この金額は「iDeCo」の掛金との合計額となります。

<iDeCo>
「iDeCo」の上限額は加入する国民年金の種類で異なります。

被保険者 毎月の掛金上限
第1号被保険者(自営業者など) 6万8,000円
第2号被保険者(会社員など) 1万2,000円~2万3,000円
第3号被保険者(専業主婦(夫)など) 2万3,000円

「iDeCo」の場合、自営業者の上限額は「国民年金の付加年金」または「国民年金基金」の掛金との合計で、同じく6万8,000円となります。

これだけだと両者の違いはないように見えますが、次から紹介する他のポイントから見ると違いが見えてくるでしょう。

「国民年金基金」と「iDeCo」の比較2:税金面

【比較の結果】
税金面では「国民年金基金」の方がよりお得!

「国民年金基金」と「iDeCo」はどちらも所得控除が受けられるお得な制度です。ただ控除の内容は次のようにそれぞれ大きく異なります。

<国民年金基金>

控除の種類
掛金 社会保険料控除
老齢年金 公的年金等控除
遺族一時金 非課税

<iDeCo>

控除の種類
掛金 小規模企業共済等掛金控除
運用益 非課税
年金 公的年金等控除
一時金 退職所得控除
障害一時金 非課税
死亡一時金(遺族受取) 相続税の基礎控除

最も大きな違いは、掛金の税金控除です。

「国民年金基金」では加入者本人だけでなく、生計を同じくする親族の社会保険料がすべて所得控除の対象に。一方「iDeCo」では、加入者本人のみの掛金が対象となります。この違いから「国民年金基金」の方が、「iDeCo」より税金面での恩恵が大きくなると言えるでしょう。

また「国民年金基金」の遺族一時金は全額非課税ですが、「iDeCo」の死亡一時金は相続税の課税対象となります。この点から見ても「国民年金基金」のほうがお得ですね。

以上のことから税金面では「国民年金基金」の方が、よりおすすめだと言えるでしょう。

「国民年金基金」と「iDeCo」の比較3:年金の受け取り期間

【比較の結果】
終身年金である「国民年金基金」の方がより安心

年金の受け取り期間にも大きな違いがあります。

<国民年金基金>
「国民年金基金」は原則、終身年金。“一生涯もらえる”という安心感があります。さらに2口目からは受け取り期間や開始年齢に違いのある複数の「型」も用意されていて、自由に選ぶことができます。2口目からとは言え、60歳から一部を受け取ることも可能です。

給付の型と受け取り期間

給付の型 受け取り期間 受け取り開始年齢
終身年金Ⅰ・Ⅱ型 終身 65歳

※2口目からは下記の型からも選べる

確定年金Ⅰ・Ⅲ型 15年 Ⅰ型65歳
Ⅲ型60歳
確定年金Ⅱ・Ⅳ型 10年 Ⅱ型65歳
Ⅳ型60歳
確定年金Ⅴ型 5年 60歳

<iDeCo>
「iDeCo」は5~20年の期間に受け取る有期年金です。一生涯もらえる終身年金はありません。

受給開始は原則60歳から。加入期間が10年未満だと受け取り開始年齢は61歳~65歳に引き上げられます。つまり、その分受け取り終了年齢も遅くなるということです。とは言え、それでも“有期年金”には変わりません。

「国民年金基金」と「iDeCo」のどちらか一方を選ぶなら、終身年金のある「国民年金基金」を選んだほうが、より安心と言えるでしょう。

「国民年金基金」と「iDeCo」の比較4:資産の運用方法

【比較の結果】
自分で運用しなくていい「国民年金基金」がよりおすすめ

資産の運用方法についても両者で大きく異なります。

<国民年金基金>
「国民年金基金」は口数単位で給付の型を選び1口以上の「掛金」を納付します。その掛金を運用したものが年金の財源、つまり老後の資産です。

掛金の運用はすべて国民年金基金連合会が行うため、加入者自身が運用する必要がありません。少なくとも自らの運用の失敗で年金を大きく減らすリスクは避けられるでしょう。

<iDeCo>
「iDeCo」は運用に関して自己責任に負うところが大きく、金融商品の選び方や運用方法を間違えれば将来の年金額が大きく減る可能性があります。

選べる金融商品は、「元本確保商品(定期預金や保険商品など)」と「投資信託」の2つに分類されますがどちらも一長一短です。元本確保商品は元本割れのリスクが少ない点がメリットですが運用益は少なくなります。

一方、投資信託は高額の運用益が期待できることがメリットですが、元本割れのリスクが高くなる点はデメリットです。

自営業者が年金を増やす場合は、まずはリスクの少ない「国民年金基金」への加入を検討することをおすすめします。ただし、ある程度のリスクを取ってでも高額の運用益を目指したいという人には「iDeCo」の方が向いているかもしれません。

自営業なら「国民年金基金」と「iDeCo」を併用するのもアリ!

(写真=PIXTA)

フリーランスなどの自営業者であれば、実は「国民年金基金」と「iDeCo」の併用も可能です。

これまで説明してきたように、どちらかを選ぶなら「国民年金基金」がおすすめですが、運用の仕方で上手に利益を上げることも可能な「iDeCo」との併用は、老後資金や年金を増やす方法として非常に有効です。

何もしないままだと自営業者は老後の年金が国民年金だけとなるため、将来の年金給付額を上げる必要があります。その一つの手段として所得控除などを受けられる「iDeCo」に加入すれば将来への不安は軽減されるでしょう。

ただ「iDeCo」は自分の選定した運用次第で将来の年金額が大きく左右されます。「自分で老後資金を運用する」ということを念頭におきながら投資などの金融知識をつけ掛金を上手に運用しましょう。

会社員や公務員は「iDeCo」を検討しよう

(写真=PIXTA)

ここまでは、自営業者の視点で「国民年金基金」が「iDeCo」よりお得と解説しましたが「iDeCo」をおすすめできる人もいます。

例えば、国民年金第2号被保険者となる会社員です。すでに国民年金と厚生年金の2階建てになっている会社員が「iDeCo」で年金を3階建てにすれば老後の年金をさらに増やすことができます。

会社員の「iDeCo」は掛金の上限が1万2,000円~2万3,000円と低めです。しかし、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため所得税の負担を軽減できます。

所得税、住民税などを抑えながら資金を運用し年金を増やす方法としては最適でしょう。

一番損をするのは?「どちらにも加入しないこと」

(写真=PIXTA)

ズバリ、一番損をするのは“どちらにも加入しないこと”です。どちらにも加入しなければ将来の年金は変わりません。

また自営業だと「一生働いて収入を得ればいい」と考える人もいるかもしれませんが、その考えは非常に危険です。自分では働く気持ちがあっても不慮の事故や病気、家族の介護など働けない環境になる可能性もあります。

老後の年金が少ないと、病気などで働けなくなったときに生活が困窮する可能性もあるでしょう。そういったリスクを減らせるのが「国民年金基金」や「iDeCo」で年金を増やすことです。

十分な年金があれば生活に困る可能性は低くなります。万が一加入期間中に死亡しても一時金が遺族の手元に入るため安心です。

また、掛金は所得控除の対象となるため、所得税や住民税の節税にも役立ちます。ぜひ加入を検討しましょう。

「国民年金基金」と「iDeCo」の違いを理解しよう

(写真=PIXTA)

この記事では、「国民年金基金」と「iDeCo」の違いについて説明しました。「国民年金基金」と「iDeCo」は、税制上の優遇を受けられる点で非常にお得な年金制度です。しかし、その内容をよく見ると両者は異なる性質を持っています。自分で運用する必要があるかどうかの違いも大きいでしょう。

今回は、特に自営業の人なら「国民年金基金」の方がよりおすすめだとお伝えしましたが、もちろん「iDeCo」のメリットもあります。違いをよく理解したうえで自分にはどちらが適しているかを判断してみてください。

大岩楓
元銀行員ライター。預金・為替業務に長く携わった経験をもとに、節約などの記事を多数執筆。現在はジャンルを広げて教育系の資格を生かした記事まで幅広く執筆。
元銀行員ライター。預金・為替業務に長く携わった経験をもとに、節約などの記事を多数執筆。現在はジャンルを広げて教育系の資格を生かした記事まで幅広く執筆。

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