「かつて憧れの職業であった弁護士は、今や食えない職業だ」−−。巷間このような弁護士将来悲観論がささやかれている。

筆者は一弁護士であるが、かつては弁護士がいなかった分野で仕事をしている。そのような立場から、弁護士の将来への悲観論に対する感想を述べたい。

弁護士の所得の中央値は600万円

日弁連がまとめた『弁護士白書2015年版』によると、2006年に1200万円だった弁護士の所得の中央値は、2014年には600万円と半減したという。有効回答数3724人中545人の所得は200万円未満であり、666人が200万円以上500万円未満、618人が500万円以上750万円未満である。

このような数字を見ると、確かに弁護士の所得は一般的なサラリーマンの所得と大して変わらないと言えよう。弁護士という職業は、もはや憧れの職業でもなんでもなくなった。弁護士バッジをもらいさえすれば食いぶちに困ることはないという話は夢物語だ。

弁護士も「普通」の職業になっただけ

しかしそれは、弁護士が「普通」の職業になったというだけにすぎない。どの職業でも、なってしまえば(弁護士資格を取ってしまえば)、その後も安泰だなどという職業はない。その後も自己研鑽、知識向上、顧客開拓、ネットワーキングの実践などを継続していかなければならない。当たり前のことだ。弁護士もそういう意味で「当たり前」の「普通」の職業になっただけだ。私はそう思っている。

弁護士たるもの裁判所で裁判に携わることだけが弁護士の本職である。法廷に立たない弁護士など弁護士の風上にも置けない。昔ながらの頭の固い弁護士には内心そう思っている人は多い。しかし、そういう凝り固まった考えに固執しているようでは、未来は開けない。

既存のマーケットが飽和状態にあり成長が見込めないとき、ビジネスの世界ではどうするのか。経営戦略論的な最適解は明確である。競争の激しいレッドオーシャンなマーケットで戦うのではなく、競争の少ない未開拓市場であるブルーオーシャンなマーケットを切り拓く。

弁護士もそうすればよいのだ。幸いなことに、弁護士の持つ法的素養、論理的思考力が要求される分野はあまた広がっている。