平成の30年間で女性の働く環境は大きく変化してきました。働く女性が出産後も仕事を続けた割合は結婚や出産による退職が当たり前だった平成初期に39.2%だったものが、平成22年から平成26年では53.1%にまで上昇しています。平成22年に大きく改正された「育児・介護休業法」の影響も大きいかもしれません。

そのほかにも子育てに関する環境は大きな政策として整いつつあります。社会保険や税制面での優遇なども踏まえて、まずは出産に関する制度の中から「産休」について解説します。

産休の基礎知識

社内で出産が近い同僚が産休(産前・産後休業)に入るという話をよく聞きますよね。この「産休」は労働基準法の母性保護規定に定められた法律です。では具体的に誰が、いつ、どのくらい取れるのか?からみていきましょう。

産休でお休みできるのはどんな人?

産休は仕事をしているすべての出産予定の方が使える制度です。正社員や派遣社員、パートなど勤務形態にかかわらず取得することができます。

勤務先への申請は期限が定められている場合もあるので早めに申請しておきましょう。

産休はいつ、どのくらい取れるの?

産休は産前・産後休業と言われるように出産の前と後に一定の期間取ることができます。産前休業は出産に向けた準備のためのお休みで、出産予定日より前の6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後休業は出産後の体を休めるためのお休みで出産後の8週間です。

基本的には取得する方が会社に申請をして手続きをするものなので、業務の状況によって期間を短くすることもできますが、産後6週間については必ず休まなければならないと決められています。

出産予定日に生まれるとは限らない

自然分娩の場合には、出産予定日に必ず生まれてきてくれるとは限りません。もしも予定日より出産が遅れた場合には、生まれた日までを産前休業とするので予定日から数えて6週間前から取得していても伸びることになり、実際に生まれた日の翌日からが産後休業です。

ちょっと悲しい話ですが、産後休業は妊娠4カ月以上の分娩を指すので、それ以降であれば死産や流産であっても産後休業を取得できます。どんな形であれ妊娠・分娩による女性の体への負担は大きなものであるため、しっかり体を休めることが大切です。

産休中は収入が無くなる?

(写真=PIXTA)

体のために一定期間しっかりお休みができるのは大きな安心につながります。しかし、その間収入が無くなってしまうのはちょっと不安。産休中の給与規定については会社によってさまざまですが、社会保険(健康保険)に加入している人なら受け取れる手当金があります。

出産手当金

出産手当金は、勤務先で加入している健康保険から産休中に支給される手当です。出産予定日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲で、休業した日が対象になります。金額は1日につき賃金の3分の2相当額。産休中も勤務先から給与が支払われている場合には出産手当金は受け取れませんが、給与が減額支給になっている場合などは出産手当金との差額を受け取ることができます。

「出産育児一時金」

出産手当金と同じく会社の健康保険から出産時に支給される手当です。金額は子ども1人につき42万円(産科医療補償制度に加入していない医療機関などで出産した場合は40万4000円)なので、双子や三つ子など多胎児の場合にはそのまま人数をかけた金額が受け取れます。

しかも、この一時金は自分が会社の健康保険に加入していなくても、配偶者が会社の健康保険に加入していれば受給が可能。支給時に「直接支払制度」を利用することで、健康保険から出産をした医療機関に直接支払いをしてくれるのでまとまったお金を用意しておく心配がなくなります。