「隣の席の先輩が先に注ごうとしてくれているのは断らなくてOK?」「幹事になったらどんなふうに店を選べばいい?」など、社会人になると宴会でのマナーは意外と難しいもの。この機会に、ぜひ知っておくべき宴会の心がまえとマナーをおさらいしましょう。

日本に根づく飲みニケーションの文化

社内の飲み会に対して「仕事じゃないんだから行かなくてもいいだろう」と考える人が増えているといわれています。しかし、上司や同僚と仕事以外の話をすることで、その人の知らなかった一面が見え、普段の行動に尊敬の気持ちを抱けるようになることもあるものです。

また取引先と飲む場合は、そこで好印象を持ってもらえたことがきっかけとなり、契約につながることもあるかもしれません。いわゆる飲みニケーションは、最近では批判されがちではありますが、先輩、上司、取引先と交流を深める日本の文化としてまだまだ深く根づいています。それを利用しないのは少々もったいないというもの。

それでもどうしてもプライベートな時間を会社のために割きたくないという人や、お酒が好きではない人は参加を辞退しても何ら問題ありません。場合によっては先輩や上司に不参加の理由を伝えてもいいでしょう。

ここからは具体的なマナーをご紹介します。

≪幹事を務める場合≫店選びは接待相手の勤務先などを考慮する

お店選びでまず重視すべきは、接待相手や上司にとっての利便性のよさ。「どの路線を使っていますか?」などと質問して、帰りやすい場所に絞るのも◎!エリアを絞ったらその中から「接待利用が多い」などとされているお店を選ぶとよいでしょう。

飲み会の日時まで余裕があるのなら、ランチなどで訪れて下見ができたらベスト。店の雰囲気をしっかりと確認しましょう。

≪接待の場合の気配り≫予約時に店にその旨を伝える

接待飲みの場合、予約時に店にその旨を伝えておくと安心です。きちんとした店なら、食事を出す順番も上座に案内した取引先から出すよう気を配ってくれるはず。そして接待する側の一番若手が取引先の到着を外で待っていれば完璧です!

取引先との飲み会は遅刻厳禁

続いては入店時のマナー。取引先との飲み会で最初に気を付けるべきは、遅刻しないということです。「飲み会なんだし、ちょっとくらいの遅刻なら大丈夫だろう」と思うかもしれませんが、取引先が相手の場合は、仕事の延長線上と思ったほうがいいです。

自分が幹事を勤めているなら相手より先に到着しておくことは必須。遅くとも定刻の15分前にはお店に着くように行動してください。

≪席順のルール≫座る位置・座る順番に気を付ける

個室の場合、部屋の一番奥が「上座」、入り口に近いほうが「下座」となります。接待する場合は、必ず上座に取引先、下座に接待する側が座るよう心がけてください。

また、座る順番は取引先が先で、接待する側があと。さらに、接待する側の中でも順位があり、先輩が座るまで後輩は座ってはいけません。

≪ビールを注ぐ順番≫まず目上の人に注ぐ

次に、お酒の注ぎ方についてです。瓶ビールがテーブルに運ばれてきた場合、まずは自分から目上の人のグラスにビールを注ぎましょう。このとき片手で行うのはNG!瓶を必ず両手で持ってビールを注いでください。

利き腕で瓶の腹を持ち、反対の手を軽く添えた状態で、ゆるやかに注ぎ始めて、だんだんと勢いを付けます。泡が出始めたら、再びゆるやかに注ぎます。

注ぎ終わった後、目上の人が注ぎ返してくれたら、「ありがとうございます」と好意を受け取ります。この場合は、「大丈夫です」と遠慮することは失礼になります。お酒が飲めない人は、形だけでもいいので注いでもらい、軽く唇を濡らす程度口をつけましょう。

≪ビールの注ぎ方≫瓶ビールを注ぐ場合はラベルを上にする

目上の相手に対して瓶ビールを注ぐのは緊張する瞬間ですよね。マナーを忘れて注ぐことに集中しがちですが、「瓶に付いているラベルを、相手に見えるように上にすること」に気をつけましょう。

最近ではラベルの向きを気にしない人も多いといわれています。ただラベルを上にしておくことで、年配の方ほど「おっ、若いのにマナーを知ってるな」と思うはずです。小さなことではありますが、ラベルの向き程度で好印象を与えることができるのなら、上にしておいたほうが断然いいでしょう。

≪日本酒の注ぎ方≫「置き注ぎ」はタブー

日本酒の場合、タブーとされているのは盃をテーブルに置いたまま酒を注ぐ「置き注ぎ」。相手にお猪口を持ってもらったら、利き手の甲を上にして徳利の腹を持ち、反対の手を下に添えて注ぎましょう。

注ぎ始めは細く、次第に太く、最後は細くして、お猪口の八分目まで注ぎます。また、支えている手全体で徳利をがっしりとつかんでしまう「逆手注ぎ」は厳禁。必ず、利き手の甲を上にし反対の手でそっと支えましょう。

≪ワインの注ぎ方≫注ぐ量は3分の1程度

ワインを注ぐ際は、エチケット(ラベル)を上にして注ぎます。注ぐ量はグラスの3分の1程度。ワインの色を確認する際にはグラスを傾けるので、注ぎ過ぎは厳禁です。

≪ビールの注がれ方≫グラスは両手で持ち傾け過ぎない

次はお酒を注いでもらうときのマナーです。ビールを注いでもらう際は、両手でグラスを持ちます。利き手でグラスを持ち、反対の手で底を支えます。

ビールは真っ直ぐに注ぐと泡が立ちすぎてしまう場合があります。したがってビールを注いでもらうときは、少しグラスを傾けるといいでしょう。グラスがビールで満たされてきたら、徐々にグラスを垂直にしていきます。

≪日本酒の注がれ方≫お猪口に両手を添える

日本酒を注いでもらうときは、お猪口に両手を添えます。片手はマナー違反。また、お膳に置いたままお酌を受けるのも失礼です。注いでもらった後は、必ず口をつけてからテーブルに置きます。ただし、一気に飲み干すことなく、最初は少量だけ口に入れます。

≪ワインの注がれ方≫ワイングラスは持たない

ワインを注がれる際は、ワイングラスを持ってはいけません。グラスの脚に指を軽く添えて、注いでもらいます。飲む前には、グラスを軽く回してワインを空気に触れさせて、まずは香りを楽しみましょう。

≪お酒の断り方≫飲めない場合は断ってOK

体質的にお酒を1滴も飲めない人や苦手な人は、無理せず「申し訳ありません、お酒が苦手で飲めません」と素直に断ってかまいません。

その際、「せっかくですのでお注ぎします」と返すとスマートです。また、少しなら飲める場合は、「弱いので一口だけ」と断ってから注ぎ返すといいでしょう。

≪乾杯の作法≫乾杯ではグラスを目上の人より少し下げる

上司や先輩、取引先など、目上の人と乾杯する際は、グラスの位置を相手より少し下げて乾杯します。初対面で名刺を渡す際にへりくだって名刺の位置を下げますが、あれと同じだと覚えておくと忘れないでしょう。グラスは両手で持つのが基本です。

また、日本酒で乾杯するときは、お猪口同士を軽く合わせる程度でOK!音は立てないようにしましょう。ワインで乾杯する場合は、ワイングラス同士を合わせることなく、そっと掲げる程度にします。

≪乾杯の作法≫乾杯のあとは目上の人がグラスに口をつけるのを待つ

乾杯が終わったら、すぐにグラスに口をつけるのは厳禁。目上の人が口をつけるまで飲み始めてはいけません。隣に座った相手の話が長くてなかなか飲み始められない場合も、じっと待ちましょう。