さまざまなハラスメントが社会問題として話題になっている今、自分が被害にあった時、だれに相談すればいいのか、どこからがハラスメントと呼ばれるのかがわからず頭を悩ませている方も多いようです。そんなお悩みに弁護士、齋藤健博さんがお答え。今回は、病気を患ったら評価を下げると言われた女性の話です。

Q. 「もし感染したら、どうなるのかわかってるよな?」

私の仕事は緊急事態宣言が出ていても、基本的に通常通りの出社で、さらには外出もしないといけません。先日上司と打ち合わせのときに「もし感染したらどうなるのかわかってるよな?」と言われました。私は全くわからなかったので「どういうことですか?」と尋ねると、上司は「評価を下げるしかないよね」とまさかの発言が。

私は季節の変わり目に風邪を引きやすい体質で、現在軽い風邪症状はあるのですが、上司にバレないように隠しながら働いています。早く回復する為にもゆっくり休みたいのですが、今休むと疑われそうで、出来ていません…。病気を患ったら評価を下げるという上司の判断は正しいのでしょうか? (みかこ/32歳/出版)

A. 感染リスクを伴う状況での発言は当然パワハラに!

みかこさんの出版業界は、労働集約型産業で、ある意味でリモートワークになかなかむかない性質のものなのかも知れません。ただ、かといって、感染リスク減少に努めなくてもいいのかといわれると、そうではないのです。通常出社・打ち合わせなどの外回りだけでも多くの感染リスクを負う状態であるのに、対面の打ち合わせ現場で、「もし感染したらどうなるのかわかってるよな?」とすごんで発言する行為は当然パワハラでしょう。とりわけ上司の言葉には、「評価を下げるしかないよね」という具体的な不利益を完全に伴った形で初直直接伝えられており、パワハラが成立していることには間違いがないでしょう。

季節の変わり目に風邪を引きやすい体質は当然、労働環境にあれば無理をしながら働いていることもありましょうし、それを周囲に気づかれないようにするのもストレスになっていると思います。ただ、今の状態で会社に出社し続けることはどう考えても不健全ですから、今行っている仕事のリモート化を、自分ができる範囲で考え、提案するほうが無難でしょう。多くの企業では受け入れられている事実は周知の通りなのですから、法的に問題が生じるのは会社側でしょう。結論、上司の判断は不正確です。