今回の相談者Tさんは、フリーランスのデザイナーとして働く42歳の女性です。家計の管理に対する苦手意識はあまりなく、貯金額も1,000万円を超えています。独身で子どももおらず、今は特にお金に困っていないTさんですが、個人事業主のため退職金も年金も期待できない老後に漠然とした不安を抱えています。

おひとりさまの老後、お金はいくら必要?

(写真=structuresxx/Shutterstock.com)

一時期「老後は2,000万円必要」というのが大々的にニュースに取り上げられたことがありました。ただ、この数値は実は人によってまったく違うので、肝心なのは「自分の場合はどうなのか」を考えておくことです。

自分が老後を迎えるときに用意しておきたい貯金額は、次の式でざっくり算出できます。

「生活にかかる費用-もらえるお金-稼げるお金」×平均寿命(女性の場合は87歳)までの年数

1ヵ月20万円あれば十分暮らせるという方が65歳まで働き、その後は月7万円の年金のみで暮らしていく場合、(20万円-7万円)×12ヵ月×(87歳-65歳)=3,432万円が必要ということになりますね。

将来どこに住むのか、どんな暮らしをしたいのか、いくら年金がもらえるのか、いくら稼げるのか、自分の考え方や状況次第でこの数字は大きく変わるでしょう。

フリーランスと会社員の老後の違い

(写真=Watchara Ritjan/Shutterstock.com)

Tさんはフリーランスなので、会社に手厚く守られているサラリーマンよりシビアに考えるべきでしょう。会社員なら老後は退職金や厚生年金、働いている間も有給休暇や傷病手当金、雇用保険、労災や各種福利厚生などが受けられます。

フリーランスの場合、年金は国民年金になります。国民年金で老後に受け取れる金額(老齢基礎年金)は20歳から60歳までの40年間満額支払った場合で、年間78万100円(2019年4月時点)です。1ヵ月あたり6万5,000円ほどですね。

Tさんはフリーランスとして独立する前に会社員として働いていた期間もあるので、そのとき給料から天引きで厚生年金保険料を支払っているはずです。このぶんは将来、厚生年金として受け取れます。

年金制度は複雑なうえに制度変更などもあって正確な金額を自分で計算するのは難しいのですが、日本年金機構から毎年送られてくる「ねんきん定期便」で現時点でのおおよその金額を把握したり、「ねんきんネット」で将来もらえる金額を試算したりすることもできます。一度チェックしてみましょう。

フリーランスはもらえる金額は少なくなるかもしれませんが、会社員と違って定年がないので、自分次第で年齢関係なく働き続けることができます。稼げる金額も自分次第です。社会保障が手薄なぶん、自助努力が重要になります。