この記事は書籍『本当にお金が増える投資信託は、この10本です。』の内容を抜粋したものになります。

※以下、書籍より抜粋

「優れた投資信託」を自分で見つける方法

投資信託分析のプロではない一般の方でも、自分自身で「優れた投資信託」を探し出すことはできます。どのようにおこなうかというと、投資信託の評価機関が独自の基準に基づいて付与する「スコア」を活用するのです(スコアは、レーティングと呼ばれることもあります)。スコアは、星(★)の数や1~5の数字で表されるのが一般的です。

投資信託の商品にスコアやレーティングを付けるという発想は、確定拠出年金を通じた投資信託への投資が広く浸透している米国で生まれました。私の前職である、1973年に米国で設立された投信評価機関のリッパーでも、確定拠出年金向けの投資信託の評価が出発点となっています。

同じく米国で1984年に設立されたモーニングスターも、独自の評価基準に基づき、現在では世界中の投資信託にレーティングを付けています。

この両社に共通しているのは、定量的な計算式に基づいてスコアの算出がなされている点です。「定量的」とは、数値化されたデータでおこなうということです。そのため、導き出されたスコアそのものには、アナリストの意見や評価が考慮されません。

騰落率やコスト、純資産の規模、資金流出入など、投資信託の評価にはさまざまな要素が用いられていますが、こうしたデータは最終的に運用成績に反映されていきます。つまり、定量的な評価こそ、もっとも合理的でフェアな評価方法といえるでしょう。

日本では投資信託の評価が個人投資家に広く浸透しているとは、まだまだいえない状況ですが、投資信託の本数が増えるにつれて、優良銘柄を見極めたいというニーズは少しずつ高まっていると感じています。

そうした流れを受けて、2015年7月に私が現在勤めている楽天証券では、独自の投資信託評価システムである「楽天証券ファンドスコア」を導入し、公表を開始しました。

楽天証券は、私が勤務している会社なので、公平性を保つために他社の「投資信託評価システム」を併せてご紹介したいところですが、2017年3月時点では、投資信託の販売会社としては楽天証券が国内初なので、ここでは「楽天証券ファンドスコア」だけのご紹介とさせていただきます。

「楽天証券ファンドスコア」の最大の特徴は、日本の投資信託の運用実態に合った、オリジナルの「楽天証券分類」を用いている点です。

投資信託の評価は、国内株式の商品同士、先進国債券の商品同士というように、同じカテゴリーに属する商品間の比較でおこなう必要があります。「国内株式と先進国債券を比較して、どちらが優れているか」といった議論には意味がありません。

投資信託の商品を評価するときに、もっとも重要なことは各商品が属する「分類」の精度の高さです。カテゴリー分けによって有利・不利が出てしまっては、きちんとした評価ができなくなってしまいます。

前述のリッパーやモーニングスターでは、米国を中心とした全世界共通の分類を用いています。しかし、「通貨選択型」のような日本特有の商品を評価する際、作業にやや難がありました。専門的な話になりすぎるので詳しい内容は割愛しますが、実態にそぐわない部分が生じてしまっていたのです。

その点、楽天証券分類は、投資対象資産や地域に応じた分類だけでなく、たとえば、通貨選択型の商品については通貨コース別に細かい分類を設定するなどして、より精度の高い運用評価ができるように工夫されています。

肝心のスコアの算出方法についてですが、こちらも内容が専門的になりすぎてしまうので割愛しますが、特徴をひとつだけご紹介すると、一時的に運用成績が向上してもスコアはあまり改善しないという点です。

運用成績が大きく上下に振れることなく、安定的にリターンを獲得している商品ほど、スコアが高くなるように設計されています(詳しい算出方法は楽天証券のホームページに掲載されていますので、ご興味のある方はご覧ください)。スコアを使えば、投資対象が同じ場合、インデックス型の商品でも、アクティブ型と同じ基準で評価することができます。

そうすると、商品のリスクに対して効率的に収益を上げているかがポイントになるので、インデックス型がかならずしもアクティブ型より高く評価されるとは限らなくなります。

スコアリングのしくみは、リスクを調整した後のリターンを数値化できるため、優良商品の絞り込みにとても役立ちます。

売れ行きランキング上位の「売れ筋」や新商品と違い、中長期にわたって優秀な成績を収めている商品は、注目されにくく、埋もれがちです。

スコアで絞り込めば、そうした地味ながら優秀な商品が上位に昇ってくることがよくありますので、ご興味のある方は、ぜひ活用してみてください。
 

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

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篠田尚子(しのだ・しょうこ)
楽天証券研究所ファンドアナリスト。慶應義塾大学法学部卒。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。2006年ロイター・ジャパン(現トムソン・ロイター・マーケッツ)入社。2013年にロイターを退職し、楽天証券経済研究所に入所。現在は日本の投資信託市場動向を国内外のメディア等へ配信しながら、海外の投資信託市場の分析も手がけている。

 

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