若者世代が老後を迎える頃には、年金受給額は現在よりも減ってしまいます。最近では「安心して老後を過ごすためには1億円程度が必要」などという記事も見かけるようになってきました。自分の将来を考えると不安になってくる方もおられるはずです。それでは、老後資金には一体いくらあれば十分といえるのでしょうか。

老後の生活費は、一世帯平均23.7万円

総務省統計局の2017年家計調査報告「家計収支編」によると、2人以上の高齢無職世帯の1ヵ月の平均消費支出は23万7,682円でした。60~64歳は29万34円、65~69歳が26万4,661円、70~74歳は24万3,416円、75歳以上が21万5,151円と、年齢が上がるに連れて支出は少なくなっています。このデータから分かるのは、老後の生活は月20万円以上、多くても30万円があれば暮らせるということです。

厚生労働省によると、2016年の日本人の平均寿命は男性が80.98歳、女性が87.14歳でした。88歳まで生きるとすると、60歳からの28年間に必要なお金は6,720万~1億80万円ということになります。

一方、収入から支出を差し引いた数字は、平均で6万1,046円の赤字でした。年齢別には60~64歳で15万6,282円、65~69歳で7万5,239円、70~74歳で6万6,056円、75歳以上で3万8,874円といずれも赤字でした。この赤字分は貯蓄から補わなくてはなりません。88歳まで生きるケースでは、少し多めに見積もって赤字額を7万円とすると、2,352万円の貯蓄が必要だということになります。

支出の内訳は

高齢無職世帯のうち、夫が65歳以上、妻が60歳以上の世帯では、平均実収入は20万9,198円でした。このうち、社会保障給付(年金など)は19万1,880円(91.7%)を占め、残りがその他の収入からです。ここに不足分の5万4,519円を足した24万6,399円が支出総額になります。

内訳をみてみましょう。消費支出が23万5,477円、非消費支出(住民税など)が2万8,240円。消費支出の中で最も多いものが食費で27.4%でした。次が交通・通信費11.7%、交際費11.6%、教養娯楽10.6%、水道・光熱費8.2%、保健医療費6.6%、住居5.8%、被服および履物2.8%と続き、残りがその他でした。

こうみると、意外に住居費用が少ないことが分かります。持ち家の場合は、ローンの支払いが終わっていることから、ほとんどかからないという人がいる半面、賃貸の場合は、負担が重くなります。