同じ金額のお金であっても、「お金の種類が違う」と無意識に分別をしているケースがある。宝くじで当てたお金なので、「今日は外食で焼肉」などとパーッと使ってしまうケースがある。

これは行動経済学では「メンタル・アカウンティング(心の会計)」と呼ばれる。同じ金額であってもお金を手に入れた方法によって、お金に対する感じ方・価値が異なっているように感じてしまうというわけだ。宝くじでのお金は「不労所得」、パーッと使って良いお金で、毎月の給料は汗水たらして働いたお金といった、心の会計で別の区分に振り分けているとも考えられるのだ。

行動経済学が再び注目を集めている

2017年に米国の経済学者リチャード・H・セイラー教授(シカゴ大学)がノーベル経済学賞を受賞し、行動経済学は改めて注目を集めている。

従来の経済学でいえば、「人間は合理的に行動する」存在だという「モデル」がベースになっているのに対し、行動経済学では、人間は必ずしも「合理的」ではないという点にフォーカスが当てられている。「合理性よりも感情が優先」するケースもあるのではないかということだ。

「月々1万円払い」 リボ払い利用者の支払い金利は15%

一時期、テレビCMや広告でクレジットカードの「リボ払い」制度を頻繁に目にする時期があった。しかし、このリボルビング払いは実は大変危険な仕組みであることを事例で解説する。

10万円のカバンをクレジットカードの翌月一括払いで購入した。その後友人の結婚式が2つ続き、それぞれの会でお祝い金以外に2次会・3次会の参加費用も必要になった。通常月からすると予定外の出費で、10万円のカバン支払いを翌月1回払いから、支払い1万円/月のリボ払いとした。クレジットカード会社は、タダで10万円の支払いを9回分、先延ばしにしてくれた訳では無い。9万円部分については「金利15%」水準で9カ月間、借りているとイメージすると分かりやすい。

「来月10万円支払い」は大変、「月々1万円」×10カ月なら安心?

更に、リボ払い利用者は「返済は1万円だから安心」と勘違いし、更に靴やスーツ、ベルトの購入費用やデート費用のクレジット払いも、リボ払いを利用してしまうケースも考えられる。リボ払い利用額がすぐに膨れてしまい、結果的に高い金利を長く支払わざるを得ない場合も多いと考えられる。

翌月1ヵ月で「10万円の支払いは大変」であるのに対し、1ヵ月で「1万円の支払い」ならば問題はない、との判断をしてしまう場合は想像し易い。期間を軽視した「メンタル・アカウンティング」と考えられる。実際には更に「金利15%」も追加で支払うことになっているのだ。

ボーナスで「自分にご褒美」

サラリーマンにとって、ボーナスの支給時期は楽しみのひとつだろう、毎月の給料以外に、「臨時」で手にするお金であるとの考え方をすれば、普段よりも「贅沢したって良い」と考えて、ついサイフのひもが緩みがちになることもある。ボーナスは経営層からすれば、会社の「業績に応じて支給するもの」という考え方ができる。片や従業員や組合の立場でいえば「給料の後払い的な性格」と考える。立場が違えば同じ事象も捉え方が異なる。