2017年、純資産100万ドル以上の富裕層(HNWI)の投資リターン率は、2年連続で20%を上回る27.4%増。特に、日本を除くアジア太平洋と南米で著しい上昇が見られた。

しかしウェルスマネージャーにとっては、リターンだけでは顧客を維持できない時代に突入している。市場の変化とともに、HNWIがウェルスマネージャーやウェルスマネージメント会社に求める要素も変化し、今後の発展は、テクノロジーの導入と顧客との関係強化が重要なカギとなりそうだ。

調査はキャップジェミニが、世界71カ国・地域を対象に、2600人以上のHNWIから収集したデータなどに基づいて行った。

日本の富裕層に人気の投資対象No.1は「現金」

世界的にみて、2018年第1四半期に最も重要視された資産 は株式で、全体の30.9%を占めた。現金・現金に相当する資産は27.2%、不動産は16.8%、債券15.8%、代替投資(ヘッジファンド・デリバティブ・外国為替など)は9.4%。

2017年第2四半期から唯一割合の増加がみられた資産は不動産で2.8ポイント増。債券は2.2ポイント減るなど、ほかの資産の割合は減っている。

不動産投資の51.6%を占める 住宅用不動産は特に欧州で人気が高く、60歳以上のHNWIの63.7%、40歳以下のHNWIの40.2%が投資している。商業用不動産への投資に関しては、40歳以下のHNWIの方が積極的だ。

株式は北米や欧米での需要が高く、両地域の資産の36.8%と28.7%を占める。アジア太平洋地域では株式と現金・現金に相当する資産が同じ水準、南米では現金・現金に相当する資産の割合の方が高い。

日本のHNWIの資産構成は現金・現金に相当する資産が44.6%、株式29.7%、不動産11.2%、債券9.6%、代替投資4.9%だ。

若いHNWIによる投資パフォーマンスは高齢層の2倍以上

世代や純資産によって、投資傾向に違いが見られる。

若い世代のHNWIによる投資パフォーマンスは37.9%で60歳以上の年配層の16.9%を大きく上回った。投資の際、年配層が資産保全を重視するのに対し、若い世代は資産形成に専念する傾向があるためではないかと推測される。

また、純資産2000万ドル以上のHNWIは100万~500万ドルのHNWIよりも、高いリターンを得た。35.7%、25.4%とかなり差がある。これはプライベートバンクが富裕層顧客を対象とした特別投資口座開設の基準を引き上げ、より多くの投資可能な資産を所有するHNWI、あるいはUHNWIに専念する傾向が強まっているからだろう。

新たな投資対象として注目を集めているのは、ビットコインを筆頭とする仮想通貨だ。特にデジタル商品・サービスに関心の高い若い世代の71.1%が、「仮想通貨投資に関する情報をウェルスマネージャーから得ることは非常に重要」と考えている。同じ考えを示した60歳以上はわずか13%、総体的には42.2%だった。