「夫は正社員、妻は扶養の範囲でパート勤め」

妻が夫の扶養に入ることが当たり前で、それ以外の選択肢はないと思っている人もいるかもしれませんが、最近はそうとも限りません。

夫が主夫として家計を切り盛りしながらパートで働き、正社員である妻の扶養に入るという選択肢もあります。

どのような場合に、夫が妻の扶養に入ることができ、どのようなメリットがあるのでしょうか。見ていきましょう。

妻が扶養に入るとは限らない

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扶養とは、「必ずしも妻が入らなくてはならない」ものではありません。

妻が一家の大黒柱として主な収入を稼ぎ、夫は家事を中心に行いながらパート勤めをしている………。

そんなときは夫が妻の扶養に入ることも考えられます。夫が妻の扶養に入ることは、全体としては少数であるため特殊なケースに思われますが、意外とそのような選択をしている夫婦は多いのかもしれません。

そもそも扶養とは?

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そもそも扶養と一口に言っても、その基準は複数あり、それらを一緒くたに考えることはできません。扶養には主に次の3つの種類があります。

・所得税における扶養
・健康保険における扶養
・厚生年金における扶養

このうち、配偶者を扶養に入れられるのは「健康保険における扶養」と「厚生年金における扶養」となります。なぜなら、「所得税における扶養」は配偶者以外の親族などに限られているためです。

所得税における扶養とは?

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まず、所得税における扶養について確認してみましょう。

所得税には「扶養控除」(ふようこうじょ)という制度があります。納税者に控除の対象となる扶養親族がいる場合、税負担が軽減される制度です。ただし、扶養親族は配偶者以外の親族などに限られていますので配偶者には利用できません。

その代わり、配偶者には「配偶者控除」や「配偶者特別控除」という制度があります。

もし、夫の収入が200万円より少ない場合は、「配偶者控除」や「配偶者特別控除」を利用できる可能性があります。

詳しい要件はこちらの記事も参考にしてみてください。

結婚すると税金の何が変わる?配偶者控除、扶養控除、国民年金の保険料は

手続きは、年末調整の際に会社から配布される用紙の「控除対象配偶者」に記入することが必要となります。

社会保険における扶養とは?

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社会保険における扶養には「健康保険」と「厚生年金」の2つがあります。

▽健康保険における扶養
健康保険の扶養に入っていると、保険料を払わなくても病気やけがで治療を受けた時の治療費用の一部を国・会社などが負担してくれます。

配偶者を扶養に入れるための条件は、加入している組合によって規定が異なる部分があります。そのため、ここでは全国健康保険協会管掌健康保険(協会健保)を例に説明していきます。実際は、ご自身の所属している健康保険組合にて詳細を確認してみてください。

手続きは、勤務先の人事・労務担当者に必要書類を提出すればOKです。

【同居している場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満であり、かつ、被保険者の年間収入の2分の1以下である(※被保険者の年間収入を上回らなければ、「年収が2分の1以下」でなくとも、被扶養者として認められることもあります)

【同居していない場合】
認定対象者の年間収入が130万円未満であり、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない

▽厚生年金における扶養
厚生年金における扶養に入っていると、本来、日本に住む全ての国民に納付義務のある「国民年金」の保険料を払わなくても将来、年金を受け取ることができるようになります。

対象は「20歳以上60歳未満の配偶者」に限られています。収入の要件は健康保険と同じく「年間収入130万円未満」となります。

なお、厚生年金の被扶養者は、サラリーマンの夫または妻(国民年金の「第2号被保険者」)の配偶者として、国民年金の「第3号被保険者」となります。

手続きは、勤務先の人事・労務担当者に必要書類を提出すればOKです。

夫を扶養に入れるメリットは?

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夫が妻の扶養に入ると、どのようなメリットがあるのでしょうか。基本的には、妻を夫の扶養に入れた場合と同じです。

夫が健康保険の各種給付を受けられる

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夫が妻の健康保険の扶養に入った場合、次のような給付を受けられます。

1.家族療養費
病気やけがをして、外来で保険診療を受けたとき、支払うべき診療費の負担が3割(未就学児は2割、70歳~74歳の方の場合は原則2割)で済みます。 

2.高額療養費
重い病気などで長期入院したり、治療が長引いたりして、医療費が一定の金額(自己負担限度額)を超えると、超過部分が払い戻されます。

3.高額介護合算療養費
毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担額が、基準額を超えた場合、超過部分が支給されます。

4.家族埋葬料
扶養に入っている人が亡くなったとき、埋葬を行う人に埋葬料または埋葬費が支給されます。

「出産育児一時金」といって、出産した時、1児につき42万円が支給される制度もありますが、今回は「夫が妻の扶養に入った場合」という想定なので省略します。

夫が年金を受け取れる

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次は、厚生年金に関するメリットです。夫が扶養家族として国民年金の「第3号被保険者」になった場合、「第2号被保険者」である妻が厚生年金を納めます。

しかし、夫自身に保険料の支払い義務はありません。それでも、将来的には国民年金の老齢基礎年金を受け取ることができるのです。