厚生労働省の発表によると、国民年金を納付していない人は4人に1人の割合で存在します(2020年7月時点)。特に若い人に多く、そのままにしておくと後で苦労することになりかねません。Nさんの事例を見てみましょう。

若い頃に年金を支払っていなかったツケ

Nさんは、学生時代に始めた雑貨販売業がうまくいき、就職活動をせず自営業として収入を得ていました。その後、経営が厳しくなり店をたたんだ30代半ばまで、国民年金保険料は支払っていません。

「支払っても意味がない、それよりも店の売上を上げるための仕入れにお金を使いたかった」というNさん。店をたたんだあと地元の中小企業に就職して20年、そろそろ定年が見えてくる年になりました。

老後の暮らしを意識し始めますが、年金保険料を支払った期間が短いのでそのぶん老後にもらえる年金額も少なくなります。65歳まで働いて年金保険料を払い続けたとしても、受け取れる金額は1ヵ月あたり10万円未満になる予定です。

さらに中小企業の中途入社のため退職金も平均より少なく、300万円程度になる見込みとのこと。Nさんは独身なので身軽ですが、月15万円の生活費がかかるとして年金で足りない分を月5万円ずつ取り崩していくと、70代半ばには退職金も貯金も尽き、その後は年金のみの暮らしに突入することになります。

金銭的な不安を抱えているNさんは、過去の「今さえよければ」という考えを悔やんでいます。

今からできる老後対策

Nさんが老後のお金の心配を減らすためには、たとえば次のような方法が考えられます。

・老後も働き続ける
できるだけ長く働き続け、収入を得る期間を長くすることで、お金を取り崩すスピードを遅くします。

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・老後までの残り期間で貯蓄に励む
固定費を見直して生活コストを下げる、先取り貯金に取り組むなど、お金を貯めやすい状況を作ります。

・年金は増やせる
60歳以降も年金保険料を払う「任意加入」、年金の受取開始を65歳以降にする「繰下げ」など今からでも年金を増やす方法はあります。

今、年金が未納になっている人が知っておきたいこと

・免除/猶予
収入が少ないなどの理由で年金保険料の支払いが難しい場合は、未納にしてしまうのではなく最寄りの年金事務所に「免除」や「猶予」ができないか相談してみましょう。免除なら、年金保険料を支払っていなくても一定の割合で支払ったのと同じ扱いになります。

・追納
免除や猶予を受けた分は、10年以内ならあとからお金に余裕が出たときに支払うこともできます。このとき支払った年金保険料は「社会保険料控除」の対象になるため、所得税や住民税が安くなります。

ちなみに、年金保険料の支払いは前払いすることで割引になったり、クレジットカードで支払ってそのポイントをゲットしたり、お得な支払い方法がありますよ。

老後のためだけじゃない!年金保険料は支払っておくべき

「払ってもたいしてもらえない」「どうぜそんなに長生きしない」と保険料を未納にする方もいます。しかし、年金は老後だけのものではなく、事故や病気などで障害を負ったときや家族を遺して亡くなってしまったときにもお金を受け取れる「保険」の役割もあります。

近年は未納の人への強制徴収も強化されています。延滞金を支払うよう言われたり自宅に訪ねて来られたり、最悪の場合は財産を差し押さえられることもあります。自分のためにも、厄介なことになる前に対策しておくのがおすすめです。

 
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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