金融機関が不動産ローン付けをしたシェアハウス運営会社2社が破産した。金融機関はローンの推進をする立場にある「販売者」でもある。メガバンク勤務時代に融資の責任者を務めた筆者が、不動産投資で融資を受ける前に、チェックして欲しい不動産物件のポイントを解説する。

金融機関は貸付・ローンの「販売者」

「金融機関は常にお客様想い」と信じていた人々は、今回のシェアハウス事業会社の破産にかなりのショックを受けただろう。破綻したシェアハウスの顧客向け融資を担っていた金融機関の融資の総額は2035億円、顧客は1258人もいたようだ。

今回の件では融資を行った側の金融機関に、審査書類を改ざんして融資を通りやすくした疑いがあるという報道も見受けられる。多くの金融機関は営利企業である。不動産担保ローンも、数字を伸ばすべき「商品」なのだ。そして、金融機関の担当者はその「販売者」としての役割を担っている場合も多い。

バブル期の失敗、「金融機関から勧められたゴルフ会員権ローン」の場合は

過去のバブル期に被害者が出た「ゴルフ会員権ローン」の場合を紐解いてみる。当時、金融機関はゴルフ会員権を取引先に勧め、値上がりが見込めるなどとセールストークを駆使してゴルフ会員権の販売に加担した。販売に協力することで、キックバックを受け取った事例もあっただろう。そしてバブル崩壊前後に、そのゴルフ場が破綻し、ゴルフ会員権は「紙くず」になってしまったのだ。

訴訟をした投資家には「ゴルフ場が破綻した。そんなゴルフ場を勧めた金融機関に問題がある。借金を棒引きせよ」という主張もあったが、この主張には無理な面がある。買ったゴルフ場の破綻と、借入をしたという「金銭消費貸借契約」は無関係と考えられるからだ。車のローンを金融機関で借りた場合、車が故障したからといって、ローンの支払いを金融機関に払わない理由にはならない。学費のローンを金融機関から借りた場合で、学校が破綻したからといってローンの支払いを金融機関に払わない理由にはならない。

投資は自己責任であり、そのゴルフ会員権購入を決定したのも、借入をしたのも自分自身だ。破綻したら払わないというのは通じる話ではないのだ。(ただし今回のシェアハウスのケースは金融機関の審査書類の改ざんの責任を問う争点はあり得るかもしれない)

相続対策の落とし穴 駅徒歩15分超物件に「入居募集中」のぼりが消えない

相続対策として、賃貸物件の建築を建築会社や金融機関から提案を受けるケースも多い。しかし十分に注意をして欲しい。建築業者は建築資金を受け取ったら仕事は終了だ。金融機関の担当者は3年程度で転勤してしまうことも多く、担当者はローン貸出に熱心になりがちだ。実態とは異なるセールストークであったとしても、ひとたび貸してしまえば、借りた人の「自己責任」となってしまうのだ。

とても満室稼働が見込めない地域に建築看板が立ち、やがて賃貸アパートが建築された事例がある。予想通り「入居募集中」ののぼりが消えることは無かった。建築後2年が経過した時点で保証家賃の改定で入金金額が当初よりも減額されるだろう。「30年家賃保証」であっても、家賃の水準は「2年毎改訂」する事例も多いのだ。ローンを返済できる水準での借入返済なのか、他人事ながら心配になってしまう。

無理な計画に対して「ローンが借りられる」「サブリースで家賃保証が付いている」から大丈夫と考えているならば、大きなリスクを水面下で保有していることを認識して欲しい。建築会社も金融機関もサブリース会社も「自社商品の販売者」で、リスクは投資家が負うことになるのだ。

ローンの対象物は優良であるのか

繰り返すが、家賃保証してくれるサブリース会社があるから安心とはならない。破産したシェアハウス問題では、実際には借り手が付きにくい物件に対して、「サブリース会社の家賃保証で安心」と安易に考えてしまった場合もあるだろう。サブリース会社が破産すると家賃が入ってこなくなる恐れがあるからだ。しかし、賃貸物件自体の収益性や用途が健全であれば、サブリース会社が破綻しても、深刻な問題を回避できる可能性はあると思う。

賃貸物件であれば、例えばこのような点が重要だろう。