既婚者の皆さん、夫婦の家計管理はどうしていますか?

DAILY ANDS編集部は、共働き夫婦の家計管理について弁護士の神林均さんにお伺いしています。

前回は、「共有口座」の扱いについてお伺いしましたが、今回は離婚する時、実際にお金で揉めた事例についてお話していただきます。

人生何が起こるか分からないものです。いざという時の「お金のトラブル」の知識、いつか役に立つかもしれませんよ!

☆この記事の登場人物紹介

(写真=DAILY ANDS編集部)
  • 神林均さん …弁護士。メインは企業法務だが、離婚や不倫、相続に関する法律にも詳しい。写真中央
  • くすいともこ …筆者、DAILY ANDS編集長。2017年1月に結婚したばかり、夫婦の共有口座を作ろうとしている。写真左
  • 編集部員K …DAILY ANDS編集部員。写真右

そもそも離婚で揉めるとはどういうことか?

神林さんによると、離婚には主に4つの段階があり、離婚で揉める場合、一番最初の「協議離婚」の段階からお互いが譲らずに話がまとまらないことが一般的だと言います。

離婚の主な4つの段階

  • 協議離婚……夫婦間で話し合い
  • 調停離婚……家庭裁判所の家事調停委員が間に入って話し合い
  • 審判離婚……家庭裁判所が職権で判断する。不服があれば、異議申立てが可能
  • 裁判離婚……家庭裁判所が判決によって離婚させることが可能 神林 「離婚はまず協議離婚、つまり話し合いで決着つけようとします。それがうまくいかなければ調停、調停でも決着がつかなかったら審判離婚、裁判離婚……と進んでいきます。まず、お話するのは一番最初の『協議離婚』の段階です。ここには法的な強制力がなくあくまで話し合いなので、どういうふうに離婚するかについて決着がつくまで時間がかかることが多いです。離婚というのは、どうしても時間がかかることが多いですから、協議には早めに見切りをつけて調停の手続に進まれた方がよいかもしれませんね」
(写真=DAILY ANDS編集部)

離婚時のお金で揉めやすい事例2つ

さて、いよいよお金で揉めた事例紹介です。主に2つあるとお聞きしたので、一つずつご紹介していきましょう。

1)稼ぎのない妻が夫にお金を求めるケース

神林さんによると、最も多いケースの一つに、女性が働いていなかったにも関わらず、離婚時、男性にたくさんのお金を要求する場合があるそうです。

くすい 「そういうときでも、夫婦の財産の半分は妻に分与されるのでしょうか?」

神林 「2分の1は認められることが多いですね。妻の存在があったからこそ夫は働いて収入を得ることができた、という理屈です。ちなみに夫に収入はあるけれど貯金のないパターンだと、『扶養的財産分与』と言って、離婚した後、しばらくお金を払ってほしい、と妻が要求して、夫がそれを拒否して、揉める場合もあります。あまり一般的ではありませんが……」

くすい 「なぜ、そのようなことが認められるんですか?」

神林 「『扶養的財産分与』が認められる背景には、これまでの生活レベルを離婚後も維持させてあげていいんじゃないか、という考え方があります。違和感があるのは分かるのですが、協議の場合は2人が納得すれば認められる、ということです。裁判だと認められにくいですが……」

くすい 「だいたい何年ほど、その『生活レベルの維持』は認められるのでしょうか?」

神林 「お子さんがいれば、子どもが成人するまで、となることが多いです。お子さんがいなければ、5年であったり、10年であったり。協議離婚だと特に取り決めがあるわけではないので、お互いが納得すれば何年でも大丈夫です」

くすい 「例えば、男性側がさっさと離婚したいから、期間は少し長いけれど認めちゃう、ということがあり得るんですね」

編集部員K 「芸能人の◯◯さんも離婚協議がめちゃくちゃ長引いていたのは、そういうことだったのかな。最終的には『お金あげるから、早く離婚して』みたいな感じじゃなかった?」

くすい 「ありましたね!芸能ニュースで離婚がなかなか決まらないのはそういう背景もあるのかもしれませんね」

(写真=DAILY ANDS編集部)

2)住宅ローンがあるケース

次に、離婚時に揉めやすいのは住宅ローンがあるケースだと神林さんは話します。

神林 「財産分与ではプラスの財産だけではなく、マイナスの財産、つまりローンも分与の対象となります。例えば、1億円のローンがある夫婦でしたら、5000万円ずつ分けることになります。たとえローン名義人が夫だとしても、2人で借りたお金、ということになります」

くすい前回の記事で紹介してくださった、『③潜在的共有持分のある財産』に該当するということですね」

住宅ローンがある場合、揉めるポイントは主に次の3点だそうです。

  • 家は誰の名義にするのか
  • 残りのローンは誰が払うのか
  • 家には誰が住み続けるのか 一番簡単な解決法は、家を売却し、得たお金で残りのローンを支払って、余ったお金を2人で分けるという形。

    次に簡単なのが、ローンの名義人がその家に住み続け、ローンを支払い続けるという形だそう。

    一方で揉めやすいのが、ローンを支払う人と家に住む人が別々になるケースだそうです。

神林 「ローンを支払う人がその家に住んでいないと、支払いが面倒になってくる可能性が出てきます。あるいは、お子さんが転校したくないから母親と子どもが家に住み続けて、父親は家を出るけれどもローンは払い続ける場合などは、何かあった時の手続きも大変です」

パートナーが隠れて借金をしていた場合も財産分与の対象になる?

ローンの話題になったところで、こんなギモンも湧いてきました。

編集部員K 「結婚した後に、夫に借金があるとわかったらその借金も対象になりますか?」

神林 「その借金が『結婚した後』に作られたなら、財産分与の対象になります。『結婚する前』に作った借金でしたら、『特有財産』になるので財産分与の対象にはなりません」

くすい 「例えばパチンコのために借金をしたとしても、財産分与の対象になってしまうのですか?」

神林 「ケースバイケースですね。その借金をパチンコに使ったことを証明するのは難しいですから。借りたお金が、もしかしたら2人の食費として使われていたのかもしれません」

くすい「確かに、何のために借金してたのかって証明しづらいかも……」

神林 「その点、住宅ローンの場合は分かりやすいですよね。2人で住むための家を買ったんだから、2人の借金になる、と」

くすい 「うーむ。知らない間にパートナーがつくった借金も、半分は自分の責任になってしまう可能性がかなりあるんですね……」

(写真=DAILY ANDS編集部)

「親権」のように、「財産分与」にも男女の差はありますか?

離婚するとき「親権」は母親のほうが得やすいイメージがありますが、「財産分与」について男女差はあるのでしょうか。

神林さんにお聞きすると、こちらの答えは「NO」。夫の年収が高く、妻に稼ぎがない場合でも、逆に妻の年収が高く、夫の年収が低い場合でも、財産分与の割合は「2分の1」となるそうです。

神林 「親権の場合は、現状女性の方が有利なのは確かです。一般的に、親権は子どもにとって良いか悪いかを考えます。女性の方が家にいることが多く、労働時間が短いケースが多いので、女性の方が子育てに向いている、と考えられるわけです。共働きだとまた変わってきますが」

編集部員K 「それはよく聞きます。そういう固定観念で成り立ってるというか、判例があるんでしょうか?」

神林 「判例ではなく、実務上そういう判断をする裁判官が多いということです」

編集部員K 「覆されるときもあるんですか?」

神林 「男性が親権を欲しかったら、祖父や祖母が子育てに協力してくれることを主張するケースもありますね」

編集部員K 「最近はイクメンも増えていて、お父さんの方が育児に積極的な家庭もありますよね」

神林 「お父さんが毎朝、子どもを保育園に連れていっていて、保育園が終わるまでに帰って来ることができる、ということだったら全然問題ないと思いますよ」

離婚にはお金がかかる

結婚に比べると離婚は何倍も大変、とはよく聞きますが、少し聞いただけでも離婚がいかに大変か、わかってきたような気がします。

くすい 「離婚って大変なんですね……」

神林 「離婚は本当にお金かかります。男性側は養育費を払うために働き続けなければいけず、じきに新しい女性のパートナーができるとそちらの家庭を支える経済力と、養育費を払う経済力と両方が必要になってきます。女性側は、働いていて稼ぎがあればはっきり言って問題はなく、一人で子どもを育てていける人もたくさんいます。ただ専業主婦の人が離婚すると大変ですよね」

編集部員K 「私の周囲にも離婚している人はいますが、子どもがいると離婚したくてもできなかったりします。一方で、経済力のある人はすぐに離婚しているような気がします」

神林 「男性側も女性側も、どちらも相手の経済力に頼らずに生きていけるならあまり揉めないかもしれません」

くすい 「そういう意味でも、共働き世帯が増えているのはいいことかもしれませんね。お金があれば、離婚もラクにできる、と……」

インタビューを終えて

夫婦は互いに足りない部分を補い合い、時には協力し合って困難を乗り越え、絆は深くなっていくものだと思います。ただ、協力し合うことと、依存してその人がいないとダメになることは別のことだと、「お金」を通じてあらためて感じました。

「夫婦の家計を別々にしておくと、お金が貯まらない」という記事をたくさんつくってきたので、共有口座をつくることが大切だと思っていましたが、前編では必ずしもそうとは限らない、ということもわかりました。

人生山あり谷あり。「この人!」と思って結婚したけれど実はそうじゃなかったということもきっとあるでしょう。私たちにできることは、いつ何時、トラブルに見舞われても柔軟に、しなやかに、状況に合わせて変化していける自分であることと、そのために、「お金」を充分に自分で動かせるようにしておくこと、くらいしかないのかもしれません。

文・くすい ともこ(DAILY ANDS編集長)/DAILY ANDS

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