上司との人間関係が気になりお腹が痛い……そう感じる人は、ひょっとしてパワハラを受けている人なのかもしれません。今回の記事は、理不尽な仕打ちからあなたの身を守るための心のあり方について解説します。 

こんなことをされていたらパワハラかもしれない

上司や同僚から次のようなことをされていたら、パワハラにあたる可能性が高いです。

  • 殴る、蹴る、文房具で頭を叩かれるなどの暴行を受けた(身体的な攻撃)
  • 多くの同僚がいる前で、大声でしつこく叱られた(精神的な攻撃)
  • 自分にだけ、定時では絶対に終わらないような仕事を押し付けられた(過大な要求)
  • 話しかけても無視される(人間関係からの切り離し)
  • 他の人が普通にやっている仕事を、特に理由もなく自分だけやらせてもらえない(過小な要求)
  • ロッカーを無断で開けて中を見られた(個の侵害) これと似たようなことをされており、仕事や日常生活に支障をきたしているのであれば、パワハラとして対応することが必要です。厚生労働省のパワハラ対策用情報サイト「あかるい職場応援団」では、このような具体例と6つの類型を挙げています。もっといろいろな例を知りたいという人は下記を参考にしてください。

    厚生労働省:あかるい職場応援団

    パワハラとは立場を利用した理不尽な振る舞いのこと

    具体的な事例にあてはまらなくても、「これってパワハラ?」と思うことは少なからずあるでしょう。判断に迷うときは、原則論に沿って考えてみましょう。2019年5月29日、通称パワハラ防止法が成立しました。パワハラの定義を実質的に初めて明文化した画期的な法律で、次のような振る舞いについて事業主に対策を求めています。

    第32条の2
    「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること」

    つまり、パワハラとは職場での立場が強いことを利用して、仕事として不必要なほどのストレスを与えることです。加害者になるのは上司に限らず、同僚や部下の場合もあります。看護師に関しては、医師などの他職種も含まれるでしょう。パワハラ防止法による抑止力が期待される一方で、効果を疑問視する声も少なくありません。

    なぜなら、事業主に対する罰則が実質的にないからです。やはり、自分の身は自分で守る必要があります。

    半数以上が相談しないのはなぜか

    しかし、実際のところパワハラをやめさせるべく立ち上がる人は、少数派となってしまっているのが現実です。2017年に発表された厚生労働省の調査によると、パワハラをされたと感じて「何もしなかった」人は、勤め先の規模やパワハラ対策に積極的な企業であるかどうかに関わらず、おおむね40%台でした。つまり、少なくとも4割の人が泣き寝入りしているのです。

    パワハラがなくならない理由の1つは、被害者が声をあげにくいことにあるのではないでしょうか。しかし、そのままではよくなるばかりか、エスカレートする可能性すらあります。同調査によると、何もしなかった理由で最も多かったのは「何をしても解決にならないと思ったから」が68.5%、次いで「職務上不利益が生じると思ったから」が24.9%です。

    「職務上不利益が生じる」とは、どういうことでしょうか。おそらく、パワハラを訴えたことで報復として転勤や降格を命じられることなどを恐れているのでしょう。