ミランダ・カーやハイディ・クルムなど、日本でもおなじみのスーパーモデルたちは、あるブランドのランウェイを登竜門にして、今日のトップの地位を築き上げてきた。そのブランドこそ、シックでスリーク、それでいて大人の女性のセックスアピールを、強烈に印象付けるデザインで、女性の心をとらえて離さない米ファッション・ランジェリー企業、ヴィクトリアズ・シークレットだ。

億単位を稼ぎだすモデルたちを育てたブランド

ヴィクトリアズ・シークレットの看板モデル、ブラジル出身のアドリアナ・リマには、米『フォーブス』誌のモデル長者番付で、堂々世界第2位の年間1050万ドル(約11億円)を稼ぐ。彼女は、ヴィクトリアズ・シークレットの「エンジェル」と呼ばれる特別広告塔であり、その名誉な役目を同ブランド史上、最も長く17年務めている。さらに、今年のモデル長者番付においては、全体の約3割が同ブランドでエンジェルとして、活躍しているモデルだった。

なぜ、スーパーモデルを多数輩出できるのか。何が人気を支えているのか。そして、どれほど勢いのある企業なのか、その「シークレット」に迫ってみよう。

セックスシンボルに憧れる男性が最初のお客様?

ヴィクトリアズ・シークレット、通称VSは、米国発のファッションブランドであり、女性用アパレルやランジェリー、パフュームなどを、1000店以上のショッピングモールの店舗で扱っている。ヴィクトリアズ・シークレット店舗における2015年度の年商は、約11億ドル(約1144億円)と、前年比1.28%の増加だった。

親会社は、世界でアパレル売上第4位のLbrands社だ。ヴィクトリアズ・シークレットの他に、低めの価格設定でティーン向け姉妹ブランドPINKなどを展開している。PINKとヴィクトリアズ・シークレットは、モールで隣同士に店舗を構えるか、PINKコーナーが店舗内に設けられるなどセットで展開することが多い。ヴィクトリアズ・シークレットに、あこがれを持つティーンをPINKでつかみ、彼女らがPINKを卒業して成人になる頃、ヴィクトリアズ・シークレットに引き込む。その戦略はみごとに成功している。

およそ40年前に創業した同ブランドは、2014年に日本に初進出を果たしたほか、カナダやメキシコなど南北アメリカ大陸、中国、タイ、マレーシアなどアジア圏、英国やアイルランドなどユーロ圏などに展開している。中東のイスラム諸国の女性さえ虜にし、文字通りの女性向け国際ブランドに成長した。

だが驚くべきことに、同ブランドが創業初期に、ターゲットにしていた顧客は、ランジェリー実際に着用する女性ではない。妻やガールフレンド向けに、下着をカタログ購入する男性だったのである。この路線は1980年代初頭に破綻し、経営陣が変わったのを期に、ターゲットを女性にシフトした。カタログ通販からモール販売へと舵を切り、大成長するに至ったのである。