トイレ休憩や食事に立ち寄る施設としてスタートした道の駅の進化が止まらない。宿泊施設や観光農園、リゾート施設を備え、家族で丸1日楽しめるだけでなく、巨大水車や実物大の恐竜のモニュメントを設け、地域のランドマークになった場所もある。

一部の施設は年間100万人を超す観光客を集め、地方創生の拠点となる一方、農産物の直売で観光客を呼び込めず、経営悪化する施設も出てきた。道の駅の集客競争は激しさを増す一方だ。

全国1093カ所に存在、さまざまな観光施設を併設

国土交通省によると、道の駅は主に国道や主要地方道など地方の幹線道路沿いに置かれている。駐車場やトイレを道路管理者の国交省や都道府県が設置し、市町村や市町村の外郭団体、市町村出資の第三セクター会社が地域振興施設を設置している。

道の駅の設置構想は1990年に広島県で開かれた中国・地域づくり交流会で提案され、1993年に全国103施設が第1号として登録された。その後、各地で建設が相次ぎ、2016年5月の追加登録で1093施設に達している。

当初は24時間利用可能な駐車場やトイレに、レストラン、農産物直売所、土産物店を併設する形が多かったが、人気の道の駅を訪れる観光客が増えてきたことから、温泉や博物館、宿泊施設、公園などさまざまな観光施設を併設するようになった。

2004年の新潟県中越地震以降は防災拠点としての機能を備えた施設も出現、停電時の非常用電源や断水時も使用できるトイレなどを備えている。

国交省は地域活性化の拠点となっている施設を「全国モデル道の駅」、拠点となる優れた企画を持つ施設を「重点道の駅」に選定、地域資源を積極的に活用して観光拠点とするよう後押ししている。

今では多くの市町村が地方版総合戦略で道の駅を観光拠点と位置づけ、ユニークで集客力のある施設建設に力を入れている。国交省国道・防災課は「道の駅は地方創生に有効とされ、さまざまな施設が登場している。観光客確保へ市町村の知恵比べが始まった」としている。

巨大水車や恐竜モニュメントで集客合戦

関東を代表する道の駅として知られるのが、群馬県川場村の川場田園プラザだ。3ヘクタール余りの広大な敷地に直売所やレストランのほか、ビール、パン、ミルク、ピザ、ハムなどの工房が点在し、観光客の人気を集めている。

ブルーベリー農園では7月の収穫時期に摘み取りを体験できる。このほか、SLの体験乗車コーナーやピクニック公園、遊歩道も整備されている。人口3600人の村に年間約180万人が来訪、うち7割がリピーターという人気ぶりだ。

川場田園プラザは「どの年代の人でも楽しめる多様な施設だけでなく、食事は地元の食材を本物の職人が調理し、提供している。これがリピーターの増加につながっているのではないか」と胸を張る。

千葉県南房総市のとみうら枇杷倶楽部も観光農園で広く知られている。イチゴやビワ、ブドウ、トマトの収穫を体験でき、採りたての新鮮果実、野菜を味わえる。千葉県を代表する伝統工芸品の房州うちわやビワの葉染めの体験コーナーもある。

直径24メートル、日本一の巨大木製水車が地域のランドマークになっているのが、岐阜県恵那市のおばあちゃん市・山岡だ。水車を遠くから眺めると、あまりの大きさにまるで観覧車かと見間違えそう。水車目当てに立ち寄る観光客も少なくないという。

地域の高齢者が作った新鮮野菜や手作り商品、定食も充実し、多くのリピーターを集めている。おばあちゃん市・山岡では「巨大水車が集客にひと役買ってくれている」とにっこり。

福井県大野市の九頭竜の名物は動く恐竜のモニュメント。大野市は恐竜時代の地層が広く分布し、多くの足跡化石が発掘されている。それを生かして恐竜の街を観光客にアピールしているわけだ。

大野市商工観光振興課は「モニュメントの効果は絶大。道の駅を訪ねた観光客は化石の発掘場所など恐竜観光に出かけてくれている」と喜んでいる。

このほか、長崎県松浦市の鷹ら島は月に2回マグロの解体ショーを実演、岩手県岩泉町の三田貝分校は廃校となった小学校を道の駅に改装し、レストランで学校給食を提供するなど、あの手この手の集客作戦に工夫を凝らしている。