市場の目まぐるしい乱高下がニュー・ノーマル、すなわち新常態となり、不確実性の高まりの中で投資家やマーケット・ウォッチャーたちは確かな指針を必要としている。こうしたなか、資本主義の総本山アメリカの生の経済・金融情報がますます重要になってきた。

米メディアやエコノミストが発信する多くの情報が日本語に翻訳されるようになっているが、全体を網羅するにはほど遠く、翻訳の遅れなどもあり、フラストレーションがたまる。どのサイトを訪問すれば、どのような情報を効率的に得られるのか。サイトによって、どういった特徴があるのか。

ここで、プロたちが見ているサイトを一挙公開しよう。英語に自信がなくても、ウェブ翻訳などで粗筋は理解できる。

初心者向け速報と解説ならココ (1)~(6)

まず必要なのは、経済・金融ニュースの基礎知識だ。(1)ロイター、ブルームバーグ、(2)米NBCニュース系のCNBC、(3)CNNビジネス、(4)米CBSニュース系のニュースウォッチなどの速報がおすすめである。これらのサイトは競い合っているため、とにかく情報が速い。日本語に翻訳されるものもあるが、その前に原語で読んでしまえば競争相手に差をつけられるので、必須だ。

また、速報だけでなく、ベテラン記者が執筆する解説記事や分析記事が秀逸なのもうれしい。たいていのニュースは、これらのサイトで事足りるといっても過言ではない。

また、「原油価格が下落した」「ドル高になった」などの速報だけではニュースの背景が理解できない。経済や金融の「なぜ」にわかりやすく答えてくれるのが、(5)ビジネス・インサイダーや(6)クォーツといった新興ウェブメディアだ。既存の新聞・雑誌・テレビ・通信社とは違い、「今さら聞けない」ようなことでも、丁寧かつ飾らない英語で、時にはスラングを交えて教えてくれる。

中級レベルのコラムや解説はコチラ (7)~(11)

経済の知識をある程度持つアナタにおすすめなのが、(7)ウォール・ストリート・ジャーナル紙のサイトだ。投資家・企業目線で記事が構成されることが多く、投資判断には欠かせない。特に重要な米連邦準備理事会(FRB)の動きについては、有力なFRBウォッチャーであるジョン・ヒルゼンラス記者などが当局者の懐に深く食い込んでおり、記事で「よく当たる」予想を披露するため、投資家必須のサイトである。

もう一人の著名なFRBウォッチャーであるティム・デューイー・オレゴン大学教授のFRB金融政策予想を参考にしない人は少ない。彼の発信は、同じくオレゴン大学経済学部のマーク・ソーマ教授のブログに配信される。ソーマ教授のブログは毎日更新され、経済学の知識の宝庫なので、覗いてみてはいかがだろう。

また、経済をリベラルな庶民目線から扱い、分かりやすい解説を加えてくれるのが、(7)ワシントン・ポスト紙のキャサリン・ランペル論説委員、イラン・ムイ記者、(8)ニューヨーク・タイムズのエドゥアルド・ポーター論説委員、ニール・アーウィン記者などだ。

単なる「今さら聞けない」ことの解説ではなく、経済学の理論と政治の関係にズバリ斬り込んでいくので、読後に博学になった気になること請け合いである。さらに、リベラル系の新興ウェブメディア(9)Voxの気鋭コラムニストであるエズラ・クライン氏やマシュー・イグレシアス氏の経済史的視点から見た経済事象の分析は、長期的投資戦略を立てるのに役立つであろう。

一方、保守派の経済解説なら、ワシントン・ポスト紙のロバート・サミュエルソン論説委員のコラムを読むと分かりやすい。特に政府債務と経済の関係から加える解説は定評があるので、マークしておくべきだ。

一般投資家目線の評論なら、(9)「ザ・ストリート」や(10)「シーキング・アルファ」は、最低限押さえておきたいところだ。どんな銘柄がホットで、どの企業に勢いがあり、あるいは問題を抱えているかを網羅する深い分析には定評がある。こうした分析の「元祖」である著名投資メディア、(11)バロンズ誌のサイトもお忘れなく。