がんと診断された時、本人や家族のショックは大きい。しかし、これから始まるがん治療に冷静に立ち向かう必要がある。気になる治療費や生活費の負担を少しでも減らす制度を解説する。

ガン治療……治療費と生活費はいくらかかるのか?

がん治療にかかわる金額について、治療費と生活費の2つの側面から見ていこう。それぞれカバーできる制度が異なり、事前に知っておくことで効果的な負担減につながるだろう。まず、治療費について見ていこう。

がん治療はどうしても高額になる。例えば、胃がんの手術で2週間入院すると仮定して、手術費だけで約130万円、治療費総額は約160万円になる。健康保険の窓口負担は3割なので、支払いは約48万円。このほか、食事代が1食360円、もしも個室などに入りたいのなら、差額ベッド代もかかる。

がん治療費のサポート①高額療養費制度

一定以上の医療費が払い戻される

しかし、1ヵ月間にかかった医療費が一定の金額を超えた場合、後日払い戻される「高額療養費制度」がある。これは健保に入っている場合、誰でも利用できるが、所得や年齢によって計算方法が5通りある。例えば月額53万円~79万円の人の場合は、

「16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%」となる。

この場合だと、約12万円の支払い(自己負担の限度額)で済む。しかし注意がいくつか必要だ。まず、健康保険組合に申請してから2~3ヵ月後に差額が払い戻されるので、いったん全額立て替えて病院に支払うことになる。また、この制度はひと月毎に清算するため、月をまたぐ場合は限度額を超えていない分は自己負担となってしまう。

計算方法の種類については、全国健康保険協会のHPに詳細が載っているためそちらを参照いただきたい。

治療費のサポート②限度額適用認定証

窓口での支払いを軽減してくれる制度

もう一つ、窓口での支払いを軽減する方法として「限度額適用認定証」という制度がある。この認定証をあらかじめ病院の窓口に提示していれば、会計窓口での支払いの際、前述の高額療養費の自己負担限度額にとどめられるというもの。各健康保険の窓口に申請して発行してもらうが、発行に数日から1週間かかる場合もあり、申請日(受付日)の属する月の1日(初日)からとなるので、入院後に申請する場合は早めに申請したい。

生活費のサポート①障害年金制度

病気や怪我で動けなくなった時に支給される

生活費のサポートについての制度はどうだろう。国民年金、厚生年金には、病気やけがなどで働けなくなった場合に支給される「障害年金制度」がある。がんの場合は、人工肛門や人工膀胱にした場合や喉頭を摘出したとき、在宅酸素療法を受けている場合などが対象になるが、抗がん剤の副作用による身体機能の低下により、仕事に支障をきたすことが認められれば、支給される可能性もある。

これも注意があり、受給できるのは、初診日から1年半経っても障害が残っている場合だ。支給額は認定される障害の等級による。サラリーマンなどの厚生年金はさらに収入や勤務年数によっても異なってくる。細かく計算すると違ってくるが、国民年金のみ加入の場合は平均5~8万円くらい、厚生年金加入の場合は同6~16万円くらいと見ても良さそうだ。