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2019/05/14

「なぜ人は機械に負けるのか?」を確率・統計で考えてみた

(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
(写真=Andrey_Popov/Shutterstock.com)
人工知能やロボアドバイザー、アルゴリズムトレードなどの「機械」を介した最先端金融工学に注目が集まるようになると、必ずと言っていいほど起きることがある。機械に対する過大評価だ。

膨大な情報を寸分違わぬ精度で高速に処理する機械が人を凌駕することは当たり前だと思い込む人が増えるわけである。

機械の進化によって今までの私たちにはできなかったことができるようになることは間違いない。ただ、「機械がすごいから人間が負ける」と短絡的に結論づけることは私からすれば思考停止であり、言い訳にしか聞こえない。

なぜなら金融市場では機械があろうとなかろうと、人間が必ずしも正しい判断を下しているとは言えないからである。

リスクを知るための確率・統計

今回は「なぜ人は機械に負けるのか?」という問いに答える形で、金融数学(フィンマス)の基本である「確率・統計」について解説したい。

「自称文系」のビジネスマンの多くにとって、確率・統計は数学で挫折するきっかけになりやすいジャンルだ。だが、嫌いとばかり言っているわけにもいかない。お客様の財を預かる金融の本質はリスク管理であり、そのリスクを計算するツールが確率・統計であるためだ。

よってこれからフィンテックに関わりたいと思っている人はその考え方だけは最低限、肌感覚で理解してもらいたいと思う。数式を覚える必要はない。実際の計算は、それこそ機械に任せれば良い。

負ける理由(1)少ないサンプルに規則性を見出そうとするから

確率・統計を知る第一歩は、統計の意義を理解することである。

たとえば赤と青のサイコロが5セットあり、赤は1/2の確率で、青は1/3の確率で当たり目が出るとしよう。そして実験者5人で赤と青のサイコロを決められた回数だけ振り、当たり目が出た確率を記録していく。

まず5人が2つのサイコロを「1回ずつ」振ったとする。色を伏せるために仮にAとBとすると、5人のそれぞれの当たり目が出た確率はこうなった。

サイコロA:100% 0% 0% 0% 100%
サイコロB:0% 100% 100% 0% 0%

1回しか振っていないので当たり目が出た確率は100%か0%。上の表を第三者が見ても、どちらのサイコロが赤なのか分からない。

では10回投げてみよう。

サイコロA:40% 50% 60% 50% 30%
サイコロB:40% 50% 30% 20% 30%

もしかしたらAが赤なのではと思えてくる。

100回ではどうか。

サイコロA:45% 58% 52% 55% 47%
サイコロB:35% 28% 36% 25% 31%

ここまでいくとかなりの自信を持ってAが赤で、Bが青であることが読み解くことができる。

このように確率的な事象は少ないサンプルではわからないが、サンプルが増えるにつれはっきり見えるようになる。これを数学の世界で「大数の法則」と言う。

大数の法則が機能するのは同じ条件でサンプルを集めたときだけである。では、果たして金融市場で「同じ条件」はありうるのか? 厳密に言えば、ありえない。しかし「できる限り同じ条件で、多くのサンプルを取ろう」という意識を持ち続けることが重要である。

ただ、ここに大きな落とし穴がある。人の思考バイアスである。

例えば雇用統計が発表される日の株価の値動きを予測するとき、多くの人は過去に雇用統計が発表された日のサンプルばかりを集めてくる。しかし、実際の市場の値動きはそこまで単純ではない。その日に至るまでの値動きも大きく影響するわけであり、こうした「数字の裏に潜む関係性」は、外的要因が大きく変化しやすい金融市場においては無尽蔵に存在する。

よって「同じ条件」に少しでも近づくためには、予測する目的を明確にしたうえで、サンプルに偏りがないか、つまり自分の思考にバイアスがかかっていないかを常に意識する必要がある。
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