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2019/04/08

なぜ日本では「印鑑」が重視されるのか

(写真=Thinkstock/Getty Images)
(写真=Thinkstock/Getty Images)
印章、印影、判子など、いろんな名で呼ばれる「印鑑」。われわれの生活にすっかり根付いている身分証明の方法のひとつとなっている。

役所への届けから不動産の売買契約、アパートの賃貸契約、銀行の口座開設など、生活のさまざまな場面で、印鑑は必要不可欠。宅配便で荷物を受け取った証明のためにも使われるなど、最も典型的な認証方法の一つでもある。日本人の生活に密着したこの「印鑑文化」が今、変わるかもしれない。

りそな銀が「印鑑」手続きを撤廃へ

その変化の兆しは一見、意外なところに現れた。銀行だ。りそなホールディングス <8308> の、りそな銀行が2016年5月19日、3年後をめどに、主要な業務での印鑑の利用を原則的に撤廃すると公表。具体的には担保設定などで行政手続上必要な場合を除き、口座開設、預金者の住所変更、住宅ローン契約などの手続きで、印鑑を押す必要がなくなるという。

印鑑の代わりには、ICチップ付きのキャッシュカードや指の静脈を利用した個人の認証を行い、電子的なサインも併せて活用する予定だという。

例えば、口座開設には専用のタブレットに名前、住所などの情報を入力。そのデータはすぐさま登録され、キャッシュカードもすぐに受け取れる仕組みとなっている。口座開設に必要なのは、パスポートや運転免許証などだけとなる見通しだ。

さらに、読み取り機にカードを挿入したまま2本の指の静脈を登録すれば、口座開設は完了となり、従来の銀行窓口で口座開設のための書類を作成、押印し、キャッシュカードの発行には約1週間ほどかかったことを踏まえれば、利便性も向上すると言えそうだ。

りそな銀の取り組みで変わるか? 日本の「印鑑」文化

世界を見渡せば、日本は、いいにつけ悪いにつけ、屈指の印鑑文化を維持・発展させてきた珍しい国。日本ほど印鑑が利用されている国はないと言われるほどだ。

実際に、区役所などの公共機関や、企業でも電子契約書や請求書をかたくなに認めず、押印された書類を求める向きもまだある。印鑑文化がそれだけ根付いているともいえるだろう。役所や銀行の窓口での手続きの時に、利用者が印鑑を忘れてしまい、慌てて近くの100円ショップへ三文判を買いに走ったという失敗談を耳にすることもあるほどだ。

一般にはそれだけ「印鑑こそ認証のあかし」と信じ、印鑑を重要視する人がいるようだ。長年にわたって培われた文化的規範は、簡単には変化しないのかもしれない。

ただ、「印鑑さえあればいいのか」という疑問も当然出てくる。「100円で買える身元証明とは何か」、大きな疑問だと言えるだろう。もしもそんな「印鑑」手続きが姿を消せば、商習慣が大きく変わると言っていい。

印鑑活用の撤廃をすでに打ち出しているりそな銀行では、業務において、格段の効率化を実現してしまうかもしれない。押印されたいくつもの書類をやり取りする手間がなくなるのはもちろんのこと、従来銀行に設置されていた「印鑑読み取りシステム」が不要になれば、かかっていたコストを削減できるかもしれないのだ。

また企業間取引でも、捺印していない書類での請求も広く受け入れられ、電子契約書の活用がより一般的になれば、大幅な効率化が実現すると可能性もありそうだ。
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