田園調布、松濤、広尾、成城……。都内の高級住宅地といえば、あなたはどこを思い浮かべるだろうか。

国土交通省が公表している2017年度公示地価によると、第1種・第2種低層住居専用地域のうち地価100万円以上の地点は目黒区・品川区・大田区・渋谷区などの23区西南部に集中し、憧れの地が名を連ねる。今回紹介するのは、名だたる高級住宅地に勝るとも劣らない、知る人ぞ知る屋敷街「渋谷区大山町」だ。

様々な顔を持つ「渋谷」

渋谷区には、ヒカリエを始めとする、時代の先端を行く商業施設が集中する。そして、渋谷のしきたりや慣習に縛られない空気に引き寄せられるように、サイバーエージェント、GMOインターネット、ミクシィといった今をときめくIT企業が本社を構えている。道玄坂、神宮前といった繁華街エリアの公示地価は2,000万円前後、都内屈指の水準だ。

その一方で渋谷区にはもう一つ、良好な居住エリアとしての顔がある。渋谷区の第1種・第2種低層住居専用地域は236ヘクタール、総面積の15%に相当する。東京23区の平均が2割弱であることを考えると大きくはないが、むしろ刮目すべきは、居住環境を維持・向上させようという取組だ。

渋谷区の土地利用調整条例では、街並みの保全を目的として、第1種低層住居専用地域のうち、恵比寿・広尾・松濤・神山町・上原・富ヶ谷・西原など13の地域を指定して「これ以上小さく切ってはいけませんよ」という敷地の最小面積を指定している。

大山町の地価は成城の1.3倍超

その渋谷区で最も規制が厳しい地域のひとつが「大山町」だ。東京随一の高級住宅街である松濤と並んで、最小敷地面積は200㎡(約60坪)と定められている。国土交通省が発表している渋谷区大山町の公示地価(2017年度)は1㎡あたり106万円だ。

これは憧れの地である世田谷区成城(一番高い6丁目で79.5万円)の1.3倍に達する。規制制定後に切り分けられた土地を買うためには、最低でも2億円以上(106万円×200㎡=21,200万円)かかるということだ。いかに大山町が高級住宅街であるかが分かる。

(写真=ZUU online編集部)

渋谷区大山町の歴史

小田急線や千代田線が通る代々木上原駅を降りると、大原2丁目方面にまっすぐに伸びる道が都道413号赤坂杉並線、通称「井の頭通り」だ。大正時代に、和田堀給水所から水を供給するために水道管が埋められたことから「水道道路」と呼ばれてきた。

この井の頭通り周辺の住宅街が渋谷区大山町だ。幹線道路を一歩それると、そこには整然と区画された屋敷街が広がっている。土地の切り分けが200㎡以上に制限されていることに加え、多くの地域で高さ10メートル規制が敷かれており、多くの邸宅の表玄関には緑が植え込まれているので景観も美しい。

明治の元勲木戸孝允(桂小五郎)は、この地に農園を所有していたと言われる。大正3年には、鈴木善助なる人物が遊覧施設「大山園」を開設、これが「大山町」と呼ばれる所以だそうだ。

大山園の広さは7.6万坪、三渓園を超える広大な緑地を形成していた。その後、大山園は、徳川紀州家15代目当主徳川頼倫を経て、山下汽船社長山下亀三郎の手にわたる。現在は、日本の長者番付1位を争うアパレル企業オーナーが居を構えているそうだ。

(写真=ZUU online編集部)

知る人ぞ知る屋敷街である理由

このように都内屈指の高級住宅街でありながら、大山町の知名度は決して高いとは言えない。大山町には「~丁目」という区分けはなく、住所は番と号だけという非常に小さい街だ。人口統計ラボによると、大山町の人口は3,000人強、世帯数は約1,600に過ぎない。この街として小ささや、相続を経ても大山町に住み続ける富裕層が多く、なかなか不動産市場にまとまった土地が出回らないことが原因と考えられる。

しかし、徳川山とも呼ばれ、渋谷区で最も高台に位置するこの地は、長きに渡って多くの名士や文化人、企業人を引き寄せてきた。今もなお、多くの富裕層たちがひっそりと生活しているのが渋谷区大山町なのである。

文・ZUU online編集部/ZUU online

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