(本記事は、小澤竹俊氏の著書『「死ぬとき幸福な人」に共通する7つのこと』、アスコム、2018年8月27日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

【『「死ぬとき幸福な人」に共通する7つのこと』シリーズ】
(1)3000人を看取った医者が見た「死ぬまで幸せに生きる」ために必要なこと
(2)死を直面したときこそ「本当の幸せ」に踏み出すチャンスである
(3)「お金はあなたを幸せにしない」半世紀後も残る哲学者のスピーチ
(4)なぜ苦しみが「真の豊かさ」を生み出すのか
(5)人を支えるのは「生きている人の絆」だけではない

たとえ、「お一人様」だったとしても心配することはない。最後のときまで、幸せに生きられる

今後、日本では、一人暮らしの高齢者が増えていくと考えられています。

2015年の国勢調査をもとに、国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した「日本の世帯数の将来推計」によると、2015年には男性14.0%、女性21.8%であった65歳以上の独居率が、2025年には男性16.8%、女性23.2%、さらに2040年には男性20.8%、女性24.5%に達するとされています。

その理由の一つとしては「未婚率の上昇」が挙げられますが、結婚しても、離婚したり配偶者に先立たれたりして、しかも子どもがいない(もしくは子どもと同居しない)場合には、やはり一人で暮らすことになります。

核家族化が進んだ今の日本社会では、兄弟も少ないことが多く、いつ誰が一人暮らしになってもおかしくはないのです。

そして、一人暮らしの高齢者を待ち受ける現実は、非常にシビアです。

介護が必要な状態になっても家族に頼ることはできませんし、アパートなどへの入居や入院の際の保証人を探すのも難しいかもしれません。

この世を去った後、葬儀は誰がやってくれるのか、残された財産はどうなるのか、不安に思っている人もいるでしょう。

さらに今後、「お一人様」にとって、より厳しい状況が訪れるおそれもあります。

高齢化の進行と、それに伴う高齢者の認知症患者数や要介護者数の急増に施設やスタッフの数が追いついていないことから、近年、「介護難民」が急増しており、特別養護老人ホームへの入所待機者は、2016年4月時点で、合計約29万5000人に達しています。

加えて、2025年ごろまでに団塊の世代全員(約800万人)が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護の需要が、さらに増加することが見込まれています。

一方、政府はサービスの自己負担上限や自己負担割合を引き上げるなど、介護保険費用の抑制を図るとともに、病床数を減らし、特別養護老人ホームへの入所基準を厳しくし、在宅サービスの増加を図るなど、医療・介護制度の、病院・施設から地域・在宅への転換に踏み出しています。

つまり、介護において、ますます家族の協力が求められるようになると予想されるのです。

そのような中、「面倒をみてくれる」家族を持たない一人暮らしの高齢者は、一体どうすればいいのでしょうか。

私は、一人ひとりが、ふだんからさまざまな人と信頼し合える人間関係を築くことが、何よりも大事だと思っています。

同世代の友人だけでなく、世代の違う友人をつくり、地域の人ともできるだけ交流を深めておくのです。

実際、私は今まで、介護保険を使ったサービスや地域の方々のサポートを得て一人で生活されているご高齢の方を、何人も見てきました。

これはもちろん、未婚の方だけに限った話ではありません。

すでにお話ししたように、今の日本では、誰でも「一人暮らしの高齢者」になる可能性があるからです。

いや、むしろ結婚し、会社員として働いている男性の方が、早いうちからより意識的に、友人や地域の人たちとの関わりを持った方がいいかもしれません。

現役時代は仕事一辺倒で、家族や仕事関係者以外とのつながりを持っていなかった男性が、定年退職したのち配偶者に先立たれ、途方に暮れてしまうというケースが少なくないからです。

これから先、日本の医療・介護制度がどうなっていくのか、まだわからない部分がたくさんありますが、どうかいたずらに不安がることなく、心を開き合い、支え合える仲間をたくさんつくってください。

そうした絆がのちに、あらゆる意味で、みなさんの生活や心の支えとなってくれるはずです。

なお、ときには人を超えた存在とのつながりが、大きな心の支えとなることもあります。

かつて関わらせていただいた80代の女性の患者さんは、20歳のときに慢性腎不全と診断されて以来、週3回の透析を受け続けてきました。

彼女は「人から責められるようなことは何一つしていないのに、なぜ腕に大きな傷をつけ、週3回も病院に通わなければならないのか」と人生を恨み、自暴自棄になり、「いっそのこと透析をやめ、人生を終わらせてしまいたい」と思ったことすらあったそうです。

そんなある日、たまたま書棚にあった三浦綾子さんの小説『塩狩峠』を読んだ彼女は、大きな感銘を受けました。

苦しむ友人の力になりたいと願いながらも友人から冷たくされ続け、やがて友人を憎むようになってしまう主人公の姿に自分を重ね合わせ、「人から責められるようなことは何一つしていない」と思っていた自分の傲慢さに気づくと同時に、そんな自分を、神様は無条件に赦し、受け入れてくださっていると感じたそうです。

彼女はあるとき、穏やかな笑顔で次のように語ってくれました。

「透析にいつまで通えるかわかりませんし、心臓も悪くなり、私の命もそう長くはないと思います。それでも私は今、とても幸せです。神様に愛され守られていると感じられるからです」

人を支えてくれるのは、生きている人との絆だけではありません。

「家族がいない」という方、「家族や友人はいるけれど、支え合える関係ができていない」という方は、ぜひ神様や先に亡くなったご家族など、人を超えた存在、目に見えない存在とのつながりを信じてみてください。

それがもしかしたら、心の平和や幸せをもたらしてくれるかもしれません。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

小澤 竹俊(おざわ・たけとし)
1963年東京生まれ。87年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。91年山形大学大学院医学研究科医学専攻博士課程修了。救命救急センター、農村医療に従事した後、94年より横浜甦生病院ホスピス病棟に勤務、病棟長となる。2006年めぐみ在宅クリニックを開院。これまでに3000人以上の患者さんを看取ってきた。医療者や介護士の人材育成のために、2015年に一般社団法人エンドオブライフ・ケア協会を設立。著書『今日が人生最後の日だと思っていきなさい』は25万部のベストセラー。

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