行政書士は「街の法律家」と言われる。その言葉どおり、日常生活で起こった小さな問題をいきなり弁護士に相談するのは気が引けるのか、「とりあえず行政書士に相談してみようか」と考える人も少なくないようだ。

筆者は以前、「マンションの上(の階)に住んでいる人がうるさいのですが、どうしたらいいのですか?」という相談を実際に受けたことがある。日常の些細なことだが、今回は「隣人の騒音」について考えてみよう。

隣人トラブルと行政書士の仕事

最近頻繁に、「ゴミ屋敷」の問題がテレビ等で報道されている。これは、隣人トラブルの最たるものだが、私人間のトラブルは、両者の話し合いに委ね、基本的に自治体や警察、国は介入しないことが大前提だ。いわゆる「民事不介入」と呼ばれるものである。

行政書士は、警察署へ提出する告発状、告訴状の作成は別として、刑事関係の業務をすることはない。一方で、両者の間で協議をした結果、その合意内容をまとめた示談書を作成することはできる。これは行政書士の業務である「権利義務に関する仕事」の一つで、民事に関する仕事だからだ。

冒頭に紹介した「マンションの上に住んでいる人がうるさい」とご相談されたAさん(仮称)の行動は、決して的外れではない。

もちろんAさんの代理人として、私が隣人の方にAさんの主張を伝え、示談交渉をした場合、「非弁行為※」として弁護士法に違反するが、あくまでもAさんは隣人との「示談」を前提として話し合いをしたい、ついてはどうすればいいかを私に相談したまで。

※「非弁行為」…弁護士でない者が、報酬を得る目的で法律事件に関して代理人となり、相手方と示談交渉等を行うこと。