(本記事は、高橋輝行氏の著書『頭の悪い伝え方 頭のいい伝え方』、アスコム、2018年10月1日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

「話のうまい人」「モテる人」は、日常の中でも「ちょい出し」で評価を高め、得をしている

私は以前、あるお寿司屋さんで食事をしているとき、隣の席にやってきたカップルの男性が、次のように話しているのを耳にしました。

「君、魚料理が好きだって言ってたよね?この寿司屋、取引先との会食で来たことがあるんだけど、しめ鯖が舌の上でとろけて絶品だったから、ぜひ一緒に食べたいと思って。なかなか予約がとれないんだけど、キャンセルが出るのをずっと待っていたんだ」

その言葉を聞いたとき、私は「なかなかやるなあ」と思いました。

一緒にいる相手に、「なぜそのお店を選んだのか」「そこで何を食べ、何を楽しんでほしいか」を事前に、もしくはお店に入ってすぐに伝える。

これはまさに、「ちょい出し」の応用です。

事前にこうした情報を「ちょい出し」しておくかどうかで、相手の気持ちは大きく変わります。

見知らぬ場所に連れてこられたとき、人は必ず「なぜ、この人は自分をここに連れてきたのだろう」「ここで、自分は何をどう楽しめばよいのだろう」といった気持ちになり、少なからず不安を抱きます。

その答えを早めに提示してあげれば、相手はすっきりした気持ちになり、安心して食事を楽しむことができるのです。

また、情報や先入観は人の感覚を大きく左右します。

同じ料理でも、「この料理はおいしい」と思って食べるのと、「この料理はまずい」と思って食べるのとでは、自ずと味の感じ方が変わってくるはずです。

前もって「しめ鯖が舌の上でとろけて、絶品だ」という情報を知っていれば、相手は「ていねいに、食感を楽しもう」という気持ちにもなるでしょう。

しかも、「何を楽しめばいいか」「何を喜べばいいか」を事前に定義し、共有しておけば、お店自体が高級であろうとなかろうと、二人で同じ喜び、同じ感動を味わうことができ、共に過ごす時間が何倍も楽しいものになるでしょう。

そして相手はあなたの心遣いに感謝し、「この人と一緒だから、食事が楽しいのだ」と思うようになります。

これを、私は「喜びの定義づけ」と呼んでいます。

職場の歓送迎会などの幹事を任された場合も同様です。

年齢も立場も味の好みも異なる人たちが複数集まる場合、全員の希望を聞いて一生懸命店を選び、準備をしても、後で「中華ではなく、イタリアンの店がよかった」「会費が高かった」「会場が遠かった」などと文句を言われてしまうことがあります。

これについても、やはり事前に「ちょい出しによる、喜びの定義づけ」をすることができれば、参加者の反応は大きく変わってくるはずです。

たとえば

「今回異動されるAさんのリクエストに応えて、中華にしました。少し会社から歩くのですが、北京ダックとチャーハンが大人気で、予約をとるのが難しいと言われています。きっと楽しんでいただけると思います」

といった具合に、その店を選んだ理由をあらかじめ明確に提示しておけば、不満を抱く人はかなり減るのではないでしょうか。

必要な情報をちょい出しし、喜びの定義づけを行うことによって、相手を「この人と一緒に食べるご飯はおいしい」「この人と一緒にやることは楽しい」という気持ちにさせることができる人。

そういう人はきっと、男女問わずモテるはずです。

もちろん、ビジネスにおいても、同じことが言えます。

特に長いプロジェクトにかかわっているときには、一緒に働く仲間たちへの「喜びの定義づけ」が必要です。

なかなか結果が出ない状況や、同じような状況が長く続くと、人はどうしても飽き、嫌気がさし、モチベーションが下がってしまうからです。

そのため、「今、この仕事がどのように評価されているのか」「先は見えないけれど、将来どのような成果につながる可能性があるのか」といったことを、折に触れてしっかり仲間たちに伝える必要があります。

そうした「ちょい出し」はきっと、彼らの気持ちを奮い立たせ、よい結果をもたらすことになるでしょう。

ポイント

相手にどういう情報を届ければ喜んでもらえるか。

その想像をすれば、自然と「良い伝え方」ができるはず。

家族や友人を相手に、練習しよう。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

高橋輝行(たかはし・てるゆき)
1973年東京生まれ。東京大学大学院物理学科卒(理学修士)。
大学院卒業後の2000年、博報堂に入社。ベンチャーを経て経営共創基盤(IGPI)に入社。2010年、「働くことに感動できる社会の実現」を目指してKANDO株式会社を設立。さまざまな視点から企業の成長戦略を支援するエキスパート。

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