『サピエンス全史』は全世界で500万部売れたワールドクラスのベストセラーである。読書にあまり時間を割けていない人も、タイトルくらいは目耳にしたことがあるだろう。

『サピエンス全史』(以下、同書)は、ホモサピエンスである我々が必ず抱き続ける「我々はどこからきて、どこに向かうのか」という疑問に対する道標を与えてくれる本である。道標を綴った書籍は今まで数え切れないほど書かれてきたが、同書は、なぜここまでベストセラーになったのであろうか。同書が世界的なベストセラーになった理由を考察していこう。

「認知革命」「農業革命」「科学革命」という3つの重要な革命

同書は、ホモサピエンスが歴史を形成した約7万年前から現在までの出来事を「認知革命」「農業革命」「科学革命」という3つの重要な革命を軸に分かりやすく展開している。このような解説書(歴史書)はえてして難しい内容になりがちだが、ホモサピエンスは、我々自身であり、手に取って読んでいる読者自身である。全編にわたり、ホモサピエンスが主役で展開していくため、より「自分ごと化」しやすく、世界的なベストセラーになったのかもしれない。

現在のライフスタイルを例に分かりやすく説明している

サピエンス全史は、太古の人類の話でありながら、現在のライフスタイルに通じる謎を解き明かす例を分かりやすく紹介している。例えば同書では「ほとんど身体のためにならないのに、なぜ人は高カロリーの食品をたらふく食べるのか?」という疑問について、「もし、石器時代の女性が、たわわに実ったイチジクの木を見つけたら、あたりに住むヒヒの群れに食べ尽くされる前に、その場で食べられるだけ食べるのが最も理に適っていた」と述べ、「カロリーの高い食べ物を貪り食うという本能は、私たちの遺伝子に刻み込まれているのだ。」と説明している。