ビットコインやイーサリアムなどの暗号通貨・仮想通貨が抱える問題を解消した通貨を生み出すべく生まれた、ブロックチェーンのオープンソース分散型プラットフォーム「Cardano」(カルダノ)。今では他のブロックチェーンが抱える課題の解消など、その目指すところは幅広くなっていきている。株式会社EMURGO(エマーゴ)は、そのカルダノのアプリケーション開発や、カルダノを活用したサービス、技術開発に取り組むスタートアップに投資・支援をしている。数あるブロックチェーンの中でも注目度が高まっているカルダノプロジェクトのキープレイヤーである児玉健・エマーゴCEOにカルダノの可能性について聞いた。(取材・濱田 優 ZUU online編集長)

カルダノプロジェクトとは? EMURGOの役割、カルダノ財団、IOHKとの関係

エマーゴ・児玉CEO(撮影=ZUU online編集部)
 
> ――児玉さんが仮想通貨・ブロックチェーンの業界に入ったきっかけは何ですか? 私はもともとファイナンシャルプランナーとして金融商品の販売、ライフプランニングの提案業務に従事していました。新しい金融商品や技術にキャッチアップするなかでビットコインのことを知りました。最初は怪しいなとも思いましたが(笑)、ちょっと勉強をしてみると、その考え方が通常の金融の概念とはまったく違っていて、コンセプトが従来の中央集権型ではなく分散管理するというところに驚かされ、これはすごいと気づきました。
ビットコインなどの仮想通貨、それを支えるブロックチェーンについて知るにつれて、ビジネス規模も市場も大きくなっていくだろうなと思い、2015年にカルダノプロジェクトに創業者の一人として参画することとなり、17年にエマーゴを創業しました。
 
> ――「カルダノプロジェクト」の概要や御社がどう関わっているのか教えてください。 カルダノはブロックチェーンのオープンソース・ソフトウェアのプロジェクト名であり、分散アプリケーションやスマートコントラクトを構築するためのプラットフォームの名前でもあります。これに中心的に取り組んでいるのが、2015年にできたカルダノ財団(ファウンデーション)とIOHK(Input Output HongKong)、そして当社エマーゴの3社です。プロジェクトの基軸通貨はADA(エイダ)となります(2017年10月に発行されたカルダノの仮想通貨。発行されてすぐに価格が高騰した)。
それぞれの役割ですが、カルダノ財団はスイスに本拠を置き、コミュニティーの育成や情報の配信、カルダノの規制の標準化の推進などに取り組んでいます。
IOHKはイーサリアムの創設者の一人で開発者のチャールズ・ホスキンソンが率いるカルダノのプロトコルを開発する組織です。
そしてエマーゴは、カルダノの上で動くアプリケーションを開発しています。ブロックチェーン市場をつくるにはまずプロトコルが必要で、その上にいろいろなサービスのインフラが乗るイメージです。たとえば銀行、取引所、各種のAPIやウォレットですね。こうしたサービスインフラができたら、ようやくその上でアプリケーションが機能する。MicrosoftのWindowsをIOHKが作って、私たちエマーゴはMicrosoftオフィスなどのアプリケーションを作っているようなイメージです。
またエマーゴでは世界中のアプリ開発企業にもカルダノの技術を使って開発してもらうべく、コンサルティングや投資をしています。具体的には、DApps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)ソリューションをカルダノブロックチェーン上で構築しようとしている企業に、スマートコントラクト技術のノウハウやリソースを提供しています。
投資先に関しては、サービス面でのインフラを構築する上で、僕たちが持っていない技術を持っている会社が候補です。取引所、ウォレットを作っている会社など、カルダノのブロックチェーン上で動くアプリケーションを作っていただけるベンチャー企業への投資も考えています。世界中の人々にそのアプリを使ってもらうことで、カルダノのエコシステムを広げたいと考えています。
現在5カ国に拠点があって50人ほどいます。日本とシンガポールとインドネシア、香港、ベトナムですね。ベトナムは本当にエンジニアだけ、(日本の)エマーゴは技術者だけでなく、金融のプロや管理・ビジネス面に強い人材など、いろいろな特技を持った人材が22~23人ほどいます。
 
> ――ブロックチェーンビジネスは盛り上がっているようですが、御社は現在どういうステージにあるのでしょうか。ICOコンサルティングもされているとうかがいました。 今期は足場固めの時期ですね。たしかにブロックチェーン業界は盛り上がっていますが、まだまだ技術者も少ないのが現状です。それに一般には「ブロックチェーンと仮想通貨の違いが分からない」という方も多いので、啓発や教育に力を入れています。
ICOについては昨年も世界中で何万件とICOが行われていて、そのうち70%近くが取引所にリスティング(上場)されていないようですし、詐欺に近いようなプロジェクトも多数見受けられます。ちゃんとリスティングしているプロジェクトでさえ、本当にブロックチェーンが必要なのかというと、正直疑問もあります。
ブロックチェーンのビジネスをする上で、本当にブロックチェーンが必要なのか、仮想通貨が必要なのか、本当にICOすべき必要があるのかと。企業に対してちゃんとした、そのビジネスのプロセスを踏んで、世の中の人が便利になるようなブロックチェーンプロジェクトというのを作り出したいと考えています。
また現状、メインネットのオープン前であるカルダノではトークン開発ができないので、まずイーサリアム上でトークンの生成や、ICOができる状態を構築しています。
ただイーサリアムにはスケーラビリティや処理速度などの問題があると考えているので、カルダノがローンチできたら、イーサリアム上からカルダノ上に移し換える戦略を考えています。
 
> ――異なるブロックチェーン上にある通貨同士は基本的に取引所などを通して交換する必要がありますね。異なるブロックチェーン同士をつなぐのが「クロスチェーン」ですが、カルダノの場合もそうした形になるのでしょうか。 はい。相互運用性の問題の解決に時間はかかりそうですが、可能だと考えています。