2018年の上半期も残すところわずかとなった。年初にウォール街の市場関係者が警戒していたのは「2つのC」、すなわちFRB(Centarl Bank)と中国(China)であった。あれから6カ月、「2つのC」は解消されるどころか依然としてマーケットの上値を圧迫している。特に今週は「米中貿易戦争」懸念が再燃し、マーケットの動揺を招く結果となった。

それにしても、米中貿易戦争が収束に向かわないのなぜか? 今回はその背景についてリポートしたい。

「ノーガードの殴り合い」に発展するのか?

6月15日、米政府は中国からの輸入品500億ドル相当に対して25%の追加関税を課すことを発表した。中国もこれに即座に反応し「同額の報復措置を取る」ことを発表している。そして18日、米政府は「中国の報復措置への対抗措置」として2000億ドル規模の中国製品に対し10%の追加関税を課すと発表、同時にこの2000億ドルの対抗措置に対して「中国が再び報復措置を取った場合」には、さらに2000億ドルの中国からの輸入品に関税をかけると警告している。中国政府はこの米国の「中国の報復措置への対抗措置」に対して「強力な報復措置をとる」と表明しているのが現在の状況である。

もし、中国が表明した「強力な報復措置」が実行に移されると、米国は中国からの輸入品4500億ドルに対して関税をかけることになる。ちなみに、米政府の統計によると米国の中国からの財の輸入は5050億ドル、輸出は1300億ドルで赤字額は3760億ドルとなっている。つまり、4500億ドルの輸入品に対する追加関税は中国からのほぼすべての輸入品に対して関税をかけると言っているに等しい。

ボクシングにたとえるなら現状は「ジャブの応酬」といったところであるが、このままでは本当に「ノーガードの殴り合い」に発展することにもなりかねない。

気掛かりなのは、中国が表明した「強力な報復措置」が具体的に何を指すのか不透明なことで、ウォール街で様々な憶測を呼んでいることだ。

「中国製造2025」の阻止を狙う?

そもそもウォール街の市場関係者からは「米中貿易戦争はチキンレースのようなものであり、最終的には妥協するのでは?」との声が少なくなかった。成果は別にしても、米朝首脳会談が実現したことで「米中のデタントも促されるのではないか?」との期待もあったようだ。つまり、そうした当てが外れたことが今回のマーケットの動揺を招いていると考えられる。

実際、米中貿易戦争は「中国が米国からの農産品やエネルギーの輸入を拡大し、米国の対中貿易赤字を縮小させることで収束に向かう」との楽観的な見立てもあったのだが、これまでの展開を見る限り、収束するどころか激化する危険性が高まっているように感じられる。

米中貿易戦争が収束に向かわないのはなぜか? 最大の理由は「貿易戦争」と呼ばれながらも問題の本質が貿易不均衡から大きく変質しているためと考えられる。具体的に指摘されるのが「中国製造2025」の存在だ。

「中国製造2025」とは2015年に中国が掲げた目標で、ロボットやバイオなど10分野で国内生産比率を大幅に引き上げ、2025年までに米国、日本、ドイツなど世界の製造強国の仲間入りを果たし、建国100周年に当たる2049年には技術・品質など総合力で世界のトップに立つというものである。