私たちの人生には様々な「リスク要因」が潜んでいます。しかし、リスクを必要以上に恐れることはありません。状況によってはリスクを恐れるあまり、かえって大きな損失を招きかねないからです。リスクとは恐れるものではありません。大切なのはリスクと正しく向き合い「管理」することです。

今回は「人生のリスク管理」をテーマにお届けしましょう。

あなたが恐れているもの、それはリスクですか?

読者のみなさんはリスクの「経済学的意味」をご存知でしょうか?

リスクは一般的に危険・危険度・危険性と理解されることが多いのですが、経済学の世界では「ある事象の変動に関する不確実性」の意味で使われます。たとえば、株式市場などの不確実な価格変動に対する投資を「リスクテイク(リスクをとる)」と呼んだりします(※工学系で使うリスクにはまた別の意味があります)。

「ビルの38階から飛び降りる」行為は経済学的にはリスク(リスクテイク)とは呼びません。100%確実に死亡するのが分かっており、不確実ではないからです。

ところで、投資経験のない人は「リスクをとる」「リスクテイク」と言われてもピンとこないかもしれません。ひょっとして、リスクは「避けるもの」と思い込んでいませんか? それも間違いではないのですが、リスク管理は「避けるだけ」では十分とはいえません。次のパートではリスク管理の一つ「リスクテイク」について詳しく解説しましょう。

あえて「リスクをとる」選択もある!?

経済学や投資の世界において、リスクは「リターン」と表裏一体となっていることが多いと考えられます。リターンとは将来的に得られる可能性のある「収益(収益率)」のことです。

たとえば、株式投資である上場企業の株を10万円で購入した場合、最大のリスクはその上場企業が経営破綻や上場廃止となり、投資した10万円がゼロになってしまうことです。一方で、その上場企業の株価が将来的に100万円、あるいは1000万円まで上昇する(リターンを得る)可能性もないとはいえません。その上場企業の株価が将来的にどうなるかは「不確実」なのですが、いずれにしても10万円を失う「リスク」をとらないとリターンも期待できないのです。

リスクとリターンの表裏一体の関係は投資の世界に限りません。転職や起業についても同じような意味があると私は考えます。たとえば、大企業で高収入を得ていた人が起業するのも「リスクテイク(リスクをとる)」と考えられます。起業が本当に成功するかは「不確実」です。しかし、あえて大企業の高収入を捨てるという「リスク」をとらなければ、起業で成功するというリターンは期待できないのです。また、資格取得も同じです。私はFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得したおかげで、新たな収益(リターン)を得ることができました。FPの資格をとるには少なからぬ資金と時間を費やしますが、それで本当に収入が増えるかは「不確実」です。でも、とにかく資格をとらなければリターンそのものも望めないのも事実なのです。

シェイクスピアの名言にもありますよね。「何もしなかったら、何も起こらない」と。長い人生、あえて「リスクテイクすべきか」判断を求められる局面は一度や二度ではないと思います。