米国の若い世代の間で、資本主義を拒絶する風潮が強まっているという。資本主義を「一生懸命働く人々が恩恵を得られない不公平なシステム」とみなし、過半数が「資本主義を支持しない」と答えたとの調査結果が報告されている。

しかし深く掘りさげてみると、若い世代は資本主義を拒絶しているのではなく、公平性を追求した新たな資本主義の形を求めていることが分かる。そこで近年「共有する資本主義」の一環として、従業員が自社の過半数以上を所有し経営者となる「従業員所有企業化」などが注目を浴びている。

米アナリスト「資本主義そのものの意味が時代とともに変化」

ハーバード大学政治研究所が2016年3月、18~29歳の若者3183人を対象に実施した調査では、51%の回答者が「もう資本主義は支持しない」と回答 。「資本主義を支持する」若者は42%、「自分は資本主義者だと思う」 若者は19%に留まった。

若年層が資本主義に反発感をいだく傾向は今に始まった話ではない。しかし金融危機直後の2010年でさえ、世論調査で反発心を示した割合は38%だったというから、単純に判断すると年々資本主義への反発心が強まっていることになる(アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所2010年5月19日付記事)。 

なぜ資本主義を厭う若者が増えているのだろう。回答結果を収集したアナリストのザック・ラストベーダー氏は、資本主義のもつ意味が時代とともに変化した点を指摘している。資本主義は1947年~1991年の冷戦時代に育った世代にとって「ソビエト連邦や全体主義からの自由」を象徴するが、冷戦を体験していない若い世代にとっては、今なお世界経済に深い傷を残す「世界金融危機」を意味する。

続いて行われた調査でも、資本主義を支持しているのは主に50歳以上であることが明らかになった(ワシントンポスト紙2016年4月26日付記事)。 こうした背景から、所得格差の影響が浮かび上がる。

若い世代の7割以上が「所得格差の拡大」実感

関連性のある調査結果は多数報告されている。2012年にピュー研究所が行った調査では 2048人のうち66%が「富裕層と貧困層の格差が広がっている」と回答。2009年から19ポイント増えている。全回答者のうち808人が18~34歳で、所得格差を強く感じている割合は71%とほかの年代よりも高かった。

これらの調査結果から判断すると、若い世代が不満に感じているのは本来の資本主義そのものではなく、資本主義と関連性の強い米国流の自由市場主義や、それが生みだす所得格差や不公平性、そして既存の米経済体制ではないかと推測される。