筆者は筋金入りの「アップル信者」だ。メインマシンとしてアップルのMacBookを3台並べ、6面モニターで株式をトレードしている。

アップルとの初めての出会いは1990年代初頭にさかのぼる。それは当時証券会社の同僚アナリストが使っていた「Macintosh SE」だった。まだエクセルが誕生していない時代、「ロータス1−2−3」という表計算ソフトであっという間にグラフを描けたのは目からウロコだった。株のマーケティング資料を方眼紙に手書きで作成していた筆者にとって、スタイリッシュなマックと表計算ソフトはまさに「神」だった。

マックの美しさと機能に心酔し、その後はずっとアップルのヘビーユーザーだ。パソコンは常にマック、ソニー <6758> のウォークマンをiPodに、NTTドコモ <9437> のガラケーもiPhoneに乗り換えた。タブレットもiPad、時計はApple Watchだ。筆者にとって林檎マークは神聖なものである。

そのアップルの株価が史上最高値を更新した。今回は当コラム「マーケット・コンパス」としては初の外国株となるアップルを取りあげよう。

ジョブズ氏の復帰で「経営危機」から復活

ちなみに、筆者が人生で初めて購入した「外国株」もアップルである。経営危機にあったアップルに創業者スティーブ・ジョブズ氏が復帰、その後iMacの投入で元気が出始めた頃だった。その年、1998年末の株価は分割調整後で1.46ドルである。

先週5月7日のアップルの株価は187.67ドルなので、100倍をはるかに超えている。筆者がいくらで売ってしまったかは聞かないで頂きたいが、100万円相当買っていたのでそのまま現在まで保有していれば1億円を超えていた計算だ。いくらアップル信者とはいえ、1990年代後半に「Windows95」とそれに続くシリーズでマイクロソフトに追い詰められたアップルが世界一の時価総額の会社になるとは想像もしなかった。アップル信者として、我ながら情けない気持ちで一杯である。

時価総額100兆円、世界中から愛される企業に

当時、経営危機にあったアップルの復活の背景には数々のヒット商品がある。中でも特筆されるのがiPhoneの成功だ。iPhoneの登場とともにアップルの業績はどんどん拡大し、株価も上昇した。2010年5月には時価総額で2220億ドルに達し、マイクロソフトを上回り世界一となった。その後も時価総額は4倍以上に拡大し、2018年5月8日現在で9440億ドル(約100兆円)となっている。アップルは、マニアックな信者だけではなく、世界中の消費者から愛される企業に成長したのである。

iPhoneは年々進化を続け、2017年には10年記念モデルであるiPhone Xへの期待から株価も年間で46%上昇した。ただ、2017年11月にiPhone Xが発売すると、筆者の周りの「アップル信者」でも賛否両論となるなど、それまでの快進撃に陰りがみられつつあるように感じたことも確かだ。

それは筆者の周りだけではなかった。実際、株式市場でも複数のアナリストが事前にiPhoneの世界販売台数を下方修正していた。その理由の一つに、半導体アセンブリー世界大手の台湾セミコン(TSMC)が4~6月期の業績について慎重な見通しを示したことが指摘される。TSMCはアップルのスマホに組み込まれるCPUのサプライヤーで、売り上げの約2割がアップル向けとされていたからだ。

そうした状況で迎えた5月1日、アップルの決算発表は株式市場にポジティブサプライズを与えることになる。同社の2018年1~3月決算の実績は、EPS(1株あたり利益)、売上高ともにコンセンサス予想を上回ったのだ。iPhone販売台数は市場予想の5200万台に対し5220万台だった。新機種販売時期である2017年10~12月期の7730万台は下回ったものの、前年同期(5070万台)比でプラスとなったことは大きい。iPhoneの平均販売価格も高額のiPhone Xへのシフトが進んだことで、728ドルと前年同期(655ドル)を上回った。4~6月期のガイダンスに関しても、515~535億ドルの売上と市場コンセンサス(515億ドル)を上回ったのである。

加えて、市場にサプライズを与えたのが、1000億ドルの自社株買いに加え、四半期配当を16%増配し73セントにすると発表したことだ。

上記発表を受けて、翌2日のアップルの株価は4%高の176.57ドルまで上昇、その後も史上最高値圏での取引が続いている。