日本は世界的に見ても自然災害の多い国と言われています。約2,000の活断層があるとされ、全世界で観測されるマグニチュード6.0以上の地震のうち、約20%が日本周辺で発生しています。また新型コロナウイルス感染症の第2波、第3波の流行が心配されてもいます。それに伴い景気が低迷し、失業者や倒産する企業が増えることでお金に困る人も増え、犯罪が増加することを懸念する声もあります。このように、「もしものとき」は常に身近にあるものです。そこで一人暮らしを始めた人のために、身の回りの安全対策を考えてみましょう。

防災のために備えておきたいこと

近年、日本では地震や台風、豪雨などの自然災害に見舞われる地域が増えています。中小企業庁が集計したデータによると、1985年から2018年の期間で、自然災害の発生件数は台風が最も多く、次いで地震、洪水となっています。

その中で、経済的な被害額が最も大きいのが地震で、ひとたび発生すると広い範囲に重大な影響を与えます。自然災害を完璧に予測することは難しく、日本中どこにいても災害はあるものだと考え、備えておく必要があるでしょう。そこで、自分でもすぐにできる「備え」をまとめてみました。

ハザードマップを確認する

まずは自宅のある地域が災害時にどの程度の被害を受けるか、ハザードマップで確かめておきましょう。ハザードマップとは、自然災害によって地域で起きる被害を予測し、被害範囲や避難場所を表した地図で、被害の軽減などの目的で作られています。

国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」や、各地方自治体の公式ホームページで公開されていて、誰でも無料で閲覧できます。

ハザードマップを見ることで、自分の住んでいる地域では、どのような災害に見舞われる可能性が高いのか、災害が発生した場合にどの程度のリスクがあるのか、どこに避難すべきかが分かります。

災害発生直後は気持ちが動転し冷静さを失いがちです。夜に災害が起こって停電した場合、その混乱はさらに酷いものになることが予想されます。そうしたことにならないよう心に余裕のある平時に確認し、避難場所などを覚えておきましょう。

避難所の場所や経路を確認する

災害時に住民が駆け込む避難所には2つの種類があります。ひとつは「指定緊急避難場所」と呼ばれ、災害発生直後に危機から逃れるために避難する場所のことです。災害から多くの人の命を守るため、一定の基準以上の安全性を担保した施設が指定されています。

もうひとつの避難所は「指定避難所」と呼ばれ、避難した住民の安全の確保と、家に戻れなくなった人が一時的に滞在するための施設です。

最寄りの避難所の種類や場所はもちろんですが、安全に移動できる経路をシミュレーションしておくと「もしも」のときに迅速に対応できます。河川や海が近い場合、水害によって道路や橋の通行ができなくなる可能性もあるため、いくつかの避難経路を考えておくと安心です。

さらに、実際に避難経路を歩いてみると、地図上では分からないことも見えてきます。例えば、浸水時に転落事故が起きやすいマンホールの場所や、緊急時に飲み物を無料で配布する災害救援自販機の存在など、思わぬ発見があるかもしれません。

また、自宅の近くの避難所を把握しておくだけでなく、学校や会社の近くにある避難所や、そこに辿り着くまでの避難経路を確認しておくことも重要になってきます。

災害はいついかなるときに起こるかわかりません。自宅にいるときだけでなく、学校や会社にいるときに起こる可能性も十分にあります。そうしたときに慌てずに対応するため、学校や会社近くの避難所も把握しておきましょう。

避難用持ち出し袋を準備する

災害時に必要なものをまとめた非常用持ち出し袋を準備しましょう。非常時の持ち物は、災害直後の最初の1日をしのぐための「一次持ち出し品」と避難後の生活に必要な「二次持ち出し品」があり、この2つを準備しておきましょう。

一次持ち出し品の袋には、避難時にすぐに持ち出すべき必要最低限の食料や水、衛生用品、貴重品などを入れておきます。

二次持ち出し品の袋には、生きていくために必要な1週間分程度の飲料、食料、衣類、生活用品などを入れておきます。災害の状況が少し落ち着き、自宅に戻れるような状態になったときに、こちらを避難所に持ち出しましょう。

避難時は迅速な対応が求められ、一度にたくさんのものを運ぶのは現実的に難しいため、このように小分けにします。

避難の際に持って歩ける袋の重量は一般的に男性15キログラム、女性10キログラムと言われています。いざというとき持ち出せない重量の荷物にならないよう注意してください。

賞味期限のある食料や飲料水は、ローリングストック法で備えると無駄を省けます。ローリングストック法とは、普段食べているものを少し多めに買っておき、古いものから順に消費していきそのたびに新しいものを補充するという備蓄方法です。

最近では大手の食品メーカーがローリングストックセットを販売しているため、自分好みのセットを探してみるのも面白いかもしれません。

防災アプリをインストール

非常時の情報収集や連絡ツールとして欠かせないスマートフォンも活用しましょう。東京都では、防災対策からいざというときまで、役立つ機能を詰め込んだ「東京都防災アプリ」を無料配信しています。このアプリは、「東京防災モード」「東京くらし防災モード」「災害時モード」の3つのモードで構成されています。

「東京都防災アプリ」は、2015年に東京都が全世帯に配布した防災ハンドブック『東京防災』や、女性視点の内容をまとめた『東京くらし防災』の内容が見られるほか、防災マップや緊急ブザーなども入った多機能なお助けアプリです。東京都防災Twitterと連携しているため、災害時の情報収集にも役立ちます。

東京都以外にも、独自の防災アプリを配布している自治体もあるため、住んでいる地域や会社のある自治体の公式アプリをチェックしてみましょう。

病気になったときのための備え

新型コロナウイルスによる感染症が流行したことで、病気になったときの備えに不安を持つ人も多いのではないでしょうか。新型コロナ以外の病気にかかったときも、一人暮らしの人は自分である程度対処しなくてはいけません。そうした急な病気や入院時に備えて日頃から準備をしておくことが大切です。

お薬手帳を準備する

自分が普段飲んでいる、あるいは過去に飲んでいた薬の情報が一目で分かる「お薬手帳」を準備しておきましょう。一般的なお薬手帳にはアレルギーの有無や過去の病歴などを記載できます。

医療関係者に伝えるべき情報が記録されているため、医療機関にかかる際は必ず持って行きましょう。病院ごと、薬局ごとに手帳を分けることは避け、1冊にまとめることが大切です。

電子版のお薬手帳も配信されているため、スマートフォンにお薬手帳アプリをインストールしておいてもいいでしょう。自分の好みやライフスタイルに合わせた服薬管理をしてくださいね。

常備薬や経口補水液を常備

持病やアレルギーがある人はもちろん、そうではない人も自宅に常備薬を置いておきましょう。具合が悪くなったときにドラッグストアが開いているとは限らず、感染症の場合は他の人にうつす可能性も否定できません。自宅に救急箱をセットしておいてもいいでしょう。

風邪や下痢、熱中症などで起こりやすい脱水状態に備えて、経口補水液も常備しておきましょう。経口補水液とは、体に必要な電解質や水分を素早く補給できる飲み物です。ドラッグストアで市販されているので手軽に入手できます。

入院セットの準備

急な入院が必要になったときに慌てないよう入院セットをそろえておくと安心です。入院時には印鑑やお薬手帳など入院手続きに必要なもの、現金やクレジットカード、スマートフォンなど最低限の貴重品、下着やパジャマなどの着替え、タオルやせっけん、歯ブラシなどの日用品が必要です。

そのほか、病院によってはお箸やスプーンなど食事用品も自分で用意しなければいけない場合があります。

必要な品物は病院ごとに少しずつ異なります。最寄りの中核的な病院の公式ホームページで公開されている「入院のしおり」などを参考にしてください。

救急アプリの活用

急な病気のときは、救急車を呼ぶべきか判断に迷う人がほとんどでしょう。特に一人暮らしでは同居する家族もいないため、余計に判断が難しくなります。

そうした「もしも」に備え、消防庁が無料配布している「全国版救急受診アプリ(Q助)」を手持ちのスマートフォンにインストールしておきましょう。スマホ上で自分が該当する症状を選んでいくと、救急車を呼ぶべきかそうでないのか、緊急度に応じた対応の仕方を教えてくれます。

アプリのほかにも、医師や看護師が対応する電話相談窓口もあります。「#7119」などの短縮ダイヤルで相談センターを運用している地域や、インターネット上で対応する自治体もあるため、自分の住んでいるエリアの相談窓口をチェックしてみてください。