2017年6月26日、エアバッグのリコール問題に揺れるタカタは、東京地方裁判所に民事再生手続きの開始を申し立て、同日受理された。あれから既に1年近くの月日が過ぎた。エアバッグ問題はなぜ深刻化したのか、リコール問題は収束しつつあるのか、タカタの倒産は避けられなかったのかについて、今も続く損害賠償の現状を含めて考察する。

エアバッグ問題のいきさつ

エアバッグ問題が顕在化したのは、2004年以降だ。現在までのリコール件数は全世界で8100万台(国内は1883万台)に及ぶ。走行中の事故も、全世界で200件以上発生しており、死者数は少なくとも18名に上る(日本では8件、負傷者2名)。

直接の原因は、エアバッグを起動するガス発生装置(インフレーター)に使われる硝酸アンモニウム(火薬に使われる成分)だ。経年劣化により異常破裂し、ドライバーや同乗者に向けて金属片を飛散させた。

対応の遅れが事態を深刻化させる

アメリカ運輸高速道路交通安全局の調査では、高温多湿の環境下では6年で破裂の危険性が急速に高まるとしている。

経年劣化が事故の原因で長期間の保証が困難だとすると、根本的な対策は定期的な交換だ。
各国間の車検制度の違いや点検施設・技術要員の確保などが障害となり実現は容易ではないが、タカタは各自動車メーカーと連携して交換ルールの整備を進めるべきだった。

タカタ経営陣の反応も、鈍かった。創業家である高田重久社長兼会長をはじめとする経営陣は、早期解決の努力を怠っただけでなく、自動車メーカーと責任の押し付け合いを繰り広げ、事態の深刻化を招いた。

米国による日本叩きの声も

少数だが、違った見方をする向きもある。ロシアの通信社スプートニクは、エアバッグ問題の騒動をここまで拡げたのは、米国のライバルメーカーではないかと報じている。確かにアメリカの運輸当局はタカタを目の敵としていて、1990年代にも840万台に上るリコールを実施し、制裁金も課されている。日本メーカー叩きとみられてもおかしくない。

エアバッグの破裂が原因と言われている死亡事故も、科学的な解明がなされたわけではなかった。それなのにアメリカの運輸当局が大規模なリコールに踏み切ったのにも、不可解さが残る。ちなみに日本では、死亡事故は1件も起きていない。

いずれにせよ、圧倒的なシェアを握っていた日本のエアバッグメーカーは倒産し、中国系のアメリカ自動車部品メーカーKSS(キー・セーフティー・システムズ)の傘下で再生を目指すこととなる。

タカタ株は上場廃止に

民事再生法適用を受け、タカタ株は2017年7月26日をもって上場を廃止した。株価は1円にまで下落する。当然株主には大打撃だが、創業家である高田一族も大きな傷を負った。

高田一族が資産総額2,000億円の大富豪だったと言っても、資産の大部分はタカタ株だ。以前株式を上場した時も、経営の安定性を維持するために株式の放出を控えた。そして7月の上場廃止で、株式の資産価値は消えてなくなり、キャピタルゲインを得る機会は失われた格好だ。

タカタ問題は終わっていない

タカタが株式市場から姿を消しても、エアバッグ問題は収束の気配を見せない。国土交通省によると、タカタ製エアバッグの国内におけるリコール回収率は86%にとどまっており、残りは未改修のままだ。国交省はHPやディーラーを通じ、早急な回収対応を呼び掛けている。

経営破綻したタカタは本年2月、1.8兆円に上る債務の大幅免除を含む再生計画案を裁判所に提出した。地裁は5月にも計画を認可する見通しだが、実はタカタが存在を認めていない35兆円にも上る届け出債権が物議をかもしている。そのうち6.8兆円が、海外の代理人を通じた損害賠償請求だ。賠償問題に関しても、未だに最終的な決着を見せていない現れだ。

文・ZUU online 編集部/ZUU online

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