つみたてNISAで投資できるのは、金融庁の厳しい基準をクリアした「投資信託」と「ETF」だけです。どちらも長期投資に向く商品に絞り込まれているので、どう選んだらいいか迷う方もいるかもしれませんね。でも実はつみたてNISAのETFはあまりおすすめではありません。
銘柄は厳選されているはずなのに、なぜつみたてNISAでETFを選ばない方がよいのでしょうか。本記事では、「つみたてNISAのETFがおすすめではない理由」をわかりやすく解説します。また、ETF自体の特徴などもあわせて解説します。
冒頭でも触れたように、つみたてNISAの場合「ETF」より通常の「投資信託」をおすすめします。
なぜならつみたてNISAでは、通常の投資信託の方がETFより取引手数料や複利効果の面で優れているからです。投資できる対象銘柄の数も通常の投資信託の方が多く、よりたくさんの選択肢から選ぶことができます。
\つみたてNISAにおすすめの証券会社/次の表に、つみたてNISAの投資信託とETFの違いをまとめました。こうして一覧にしてみると、つみたてNISAでは投資信託の方がメリットが多いことがわかると思います。ETFと投資信託で迷っているという方は、それぞれの項目を比較して判断するといいでしょう。
ETFにはもともと、保有コストである「信託報酬」が安いというメリットがあります。しかしつみたてNISAに限った場合、通常の投資信託でも信託報酬が安い銘柄に限定されているので、“ETF特有のメリット”だとは言えないのです。
つみたてNISAでETFに投資することをおすすめしない、その理由を3つ、さらに詳しく見ていきましょう。
つみたてNISAで買える通常の投資信託は、すべて手数料無料で買えるノーロード投資信託です。通常の投資信託は「信託財産留保額」という解約コストが設定されていない限り売却も無料です。
しかしETFの場合は、買うときも売るときも手数料が掛かってしまいます。
通常の投資信託は、投資信託が保有する株式で利益が出た場合は自動的に再投資してくれます。複利効果で効率的な運用が期待できるのですが、ETFの場合は期間中に発生した利益のすべてを分配することが定められています。つまり、利益をすべて分配金として排出してししまうのです。
受け取った分配金を自分で再投資すればよいのですが、ETFは1円単位で売買できませんので再投資できない金額がでる可能性があります。複利効果を完全に活かすことは難しいでしょう。
ETF自体は“保有コストの安さ”がメリットの一つですが、つみたてNISAの場合はそう際立ったメリットとは言えません。通常の投資信託でも十分コストが安いものがあり、つみたてNISAはそういった銘柄に限定されているためです。
保有コストについては、後の章でも詳しく比較してみます。
\つみたてNISAにおすすめの証券会社/より深い理解のため、そもそものETFと投資信託の違いも確認しましょう。
ETFは「上場投資信託」、つまり証券取引所に上場している投資信託を指します。銀行では取引できませんが、証券会社ならどこでも取引することができます。リアルタイムで取引がなされるので、同じ日の取引でも価格が安くも高くもなります。
通常の投資信託は非上場で各金融機関が取り扱うものしか取引ができません。申し込みは店頭やホームページで行います。価格も1日に1つの値段しか付きませんから、違う時間の注文だとしても同じ日であればすべて同じ価格で取引されることになります。
投資信託は保有する間に「信託報酬」というコストが掛かります。信託報酬は、運用を指示する「運用会社」、お金を預かる「信託銀行」、投資信託を販売する「販売会社」の3社に支払うものです。
一方、ETFは取引所に上場しているため、特定の販売会社がありません。販売会社に支払う報酬がないため信託報酬が安い傾向にあります。
さらに「ETFとはどういったものなのか」をより理解するために、ETFのメリットデメリットをまとめました。
前述したようにETFは販売会社に支払う報酬が設定されていないため、信託報酬が比較的安いのが特徴です。運用成績は信託報酬などのコストが安いほうが良くなるので、これはETFのメリットの一つと言えるでしょう。
また取引所に上場しているため、リアルタイムで取引できることもメリットです。通常の投資信託の場合、取引時間中の値動きによって利益を得ることはできませんが、ETFならそれができます。
【ETFのメリット】
・信託報酬が安い傾向がある
・リアルタイムで取引ができる
\つみたてNISAにおすすめの証券会社/
>SBI証券の詳細をみる(公式サイト)
>楽天証券の詳細をみる(公式サイト) ●ETFのデメリット
ETFの中には取引が極端に少なく、公正な値動きになりにくい銘柄があります。「マーケットメイク制度」で公正な値動きになるよう調整されるETFもありますが、すべてのETFに対応しているわけではありません。
また前述したように「買い」と「売り」の両方に手数料がかかる点や、複利効果を得られない点もデメリットです。これらはそのまま「つみたてNISAではETFを選ばない方がいい理由」にもつながります。
【ETFのデメリット】
・取引量が極端に少なく、公正な値動きになりにくい銘柄がある
・買いと売りの両方に手数料がかかる
・複利効果が生まれない
ETF自体の特徴は以上ですが、「つみたてNISAで購入ができるETF」にはどんな特徴があるのでしょうか。
ETFに限りませんが、つみたてNISAの対象銘柄は金融庁が設定する厳しい要件をクリアしたものです。以下にまとめましたが、かなり多くの要件が設定されていることがわかります。
共通の要件 | ・信託期間が無期限または20年以上 ・分配頻度が毎月ではない ・デリバティブ運用をしていない(ヘッジ目的は除く) ・指定のインデックスに連動する ・株式に投資するもの ・最低取引単位が1,000円以下 ・売買手数料が1.25%以下 ・受益者ごとの信託報酬等の概算値が通知されるもの ・金融庁への届出がなされているもの |
国内ETF | ・取引所が指定するもの ・信託報酬が0.25%以下 |
外国ETF | ・資産総額が1兆円以上 ・信託報酬0.25%以下 |
つみたてNISA対象の銘柄数 (2020年6月29日時点) |
|
ETF | 7本 |
通常の投資信託 | 175本 |
つみたてNISAでETFが買える証券会社 | 大和証券 |
つみたてNISAでETFが買えない証券会社 | 野村證券、日興証券、みずほ証券 SBI証券、楽天証券、マネックス証券など |
つみたてNISAのETFは、通常の投資信託と比べるとかなり選択肢が少ないと言えるでしょう。
過去の リターン (年率) |
信託報酬 (税込み) |
2020/8/4 終値 |
|||
1年 | 3年 | 5年 | |||
ダイワ上場投信- トピックス |
2.95% | 1.10% | 1.23% | 0.121% 以内 |
1,620円 |
ダイワ上場投信- 日経225 |
6.80% | 5.56% | 3.79% | 0.176% 以内 |
2万3,080円 |
ダイワ上場投信- JPX日経400 |
4.01% | 1.42% | 1.10% | 0.198% 以内 |
3,800円 |
上場 インデックスファンド 米国株式 |
5.81% | 7.91% | 6.95% | 0.264% 程度 |
2,573円 |
上場 インデックスファンド 海外先進国株式 (MSCI-KOKUSAI) |
2.25% | 4.94% | 4.14% | 0.264% 程度 |
2,578円 |
上場 インデックスファンド 海外新興国株式 (MSCIエマージング) |
▲4.20% | ▲1.38% | ▲4.94% | 0.264% 程度 |
1,464円 |
上場 インデックスファンド 世界株式 除く日本 (MSCI ACWI 除く日本) |
1.41% | 4.04% | 3.31% | 0.264% 程度 |
2,192円 |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
トピックス | 日本 | ・トヨタ ・ソニー ・ソフトバンクグループ |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
日経平均 | 日本 | ・ファーストリテイリング ・ソフトバンクグループ ・東京エレクトロン |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
JPX日経400 | 日本 | ・キーエンス ・ソニー ・任天堂 |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
S&P500 | 米国 | ・マイクロソフト ・アップル ・アマゾンドットコム |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
MSCI-KOKUSAI | 先進国 ※アメリカ(71.71%) イギリス(4.91%) フランス(3.60%) |
・アップル ・マイクロソフト ・アマゾンドットコム |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年6月30日時点) |
---|---|---|
MSCI エマージング | 新興国 ※中国(40.95%) 台湾(12.28%) 韓国(11.61%) |
・アリババグループ ・テンセント ・台湾セミコンダクターMFG |
参照指数 | 投資地域 | 投資上位3銘柄 (2020年5月29日時点) |
---|---|---|
MSCI ACWI ex Japan | 世界 ※アメリカ(61.89%) 中国(5.35%) イギリス(4.17%) |
・アップル ・マイクロソフト ・アマゾンドットコム |
投資信託 | 対象指数 | ETF |
---|---|---|
0.154% (eMAXIS Slim国内株式) |
TOPIX | 0.121% |
0.154% (iFree日経225インデックス) |
日経平均 | 0.176% |
0.2145% (ニッセイJPX日経400) |
JPX400 | 0.198% |
0.0968% (eMAXIS Slim米国株式) |
S&P500 (アメリカ株式) |
0.165% |
0.10989% (ニッセイ外国株式) |
MSCIコクサイ (日本を除く先進国株式) |
0.264% |
0.2079% (eMAXIS Slim新興国株式) |
MSCIエマージング (新興国株式) |
0.264% |
0.1144% (eMAXIS Slim全世界株式) |
MSCI AWCI ex JAPAN (日本を除く全世界株式) |
0.264% |
ETFには“保有コストが安い”というメリットがありますが、もともと保有コストが安い銘柄に限定されたつみたてNISAの中では、大きなメリットとは言えません。むしろ取引手数料がかかってしまう分、通常の投資信託の方が安いコストで運用できるでしょう。
つみたてNISAは、自分で運用する商品を選ばないといけません。「ETFだから良い」と思い込みで投資をするのではなく、通常の投資信託との比較をしっかり行って投資先を選ぶようにしましょう。