FXは「少ない元手で投資しやすい」ということもあり、ゲームやギャンブル感覚で始める人もいるのではないでしょうか。株式投資が中心の米国などと比べても日本人はFX好きといわれており、為替市場において一定の存在感を示している傾向です。しかしFXは、極めて投機性の高い取引のため不用意に取引すれば、投資元本を超える損が発生することもあります。

そこでこの記事では改めてFX取引の特徴やリスク、外貨預金との違いなどについて解説します。

世界でも有名「日本人はFXが好き」

ちまたで日本人はFXが好きといわれています。現に2011年度の個人のFX取引高は300兆円前後だったのに対して2017年度の取引高は約1,000兆円にまで迫っているのです。近年の取引高ピーク圏であった2014年度の約1,500兆円からは落ちていますが、長い目で見ると増加しているといえるでしょう。ここではFX取引の歴史と小口個人投資家「ミセス・ワタナベ」について解説します。

FX取引の歴史は約20年

FXとはForeign Exchangeの略で外国為替証拠金取引という意味です。1990年代まで為替取引ができるのは金融機関に限られていたため、インターバンク間の取引が中心でした。ディーリングシステムを通じてトレーダーが値段を合図でコールし合い相場を形成していたのです。1998年に外国為替管理法が外国為替取引法に代替され、為替取引の事前登録・届け出が原則廃止となりました。

改正を契機に1998年10月にはダイワフューチャーズ(現ひまわり証券)が日本で初めて個人向け営業「マージンFX」を開始します。以降20年の歳月を経て「電話注文からインターネットへのシフト」「取引所くりっく365の設立」「取引業者の登録」などFXの取引環境は大きく改善されました。「営業がしつこい」「証拠金を返さない」といった一時横行した話も取引環境が整ってからはあまり耳にしません。

日本人の性分に合っていたからでしょうか、FX市場は急速に広がりました。2019年11月の時点で、口座数国内トップのDMM.com証券は約74万口座、ついでGMOクリック証券が約64万口座となっています。DMM.com証券は2012年末の時点では約29万口座でしたから、7年で約45万口座も増やしたことになります。

「ミセス・ワタナベ」はグローバルな有名人

「ミセス・ワタナベ」とは小口の日本人FX投資家の通称です。主に会社員が昼休み中に取引を行ったり主婦が家事の合間に取引を行ったりする影響が大きかったことと、英国において日本の個人の代名詞を「ワタナベ」と呼称していたことがきっかけで欧米の報道機関が名付けたといわれています。

相場の流れを逆方向に動かすこと(円安米ドル高⇔円高米ドル安)もしばしばあり為替市場を翻弄してきました。「ミセス・ワタナベ」は特定の集団でないにもかかわらず、ときとして同じ投資行動をとるのです。

FXはハイリスク・ハイリターンのゼロサムゲーム

株式は発行企業の成長とともに時価総額が上昇したり配当が支払われたりします。企業活動による利益が株主に還元される「プラスサムゲーム」です。一方の為替は2国間の通貨交換比率に過ぎずFX取引は交換比率の変動にかけるゼロサムゲームになります。20代の若手トレーダーが3億円稼ぐ一方で2018年のトルコリラ急落では「ミセス・ワタナベ」の多くが多額の損失を被ったといわれています。

FX取引最大の特徴は、レバレッジをかけられることです。レバレッジをかければ少額の資金でも大きい金額を投資することができます。株式の信用取引でもレバレッジの利用はできますが上限は3.3倍です。

一方のFXはレバレッジの上限が25倍(国内FX業者)とはるかに高くなります。例えば100万円の資金が手元にあれば1米ドル100円の場合で最大2,500万円まで資金を投下することが可能です。

値動きが1円分円安に動いただけで25万円の利益、逆に円高なら25万円の損失となります。レバレッジをかければ投資効率は良くなりますが、まさにハイリスク・ハイリターンの世界です。仮に4円分が円高に動けば証拠金の100万円はすべて吹き飛びます。4円以上円高になった場合は預けている証拠金以外に追加で証拠金が必要になるでしょう。