この記事は中野晴啓氏の著書『普通の会社員が一生安心して過ごすためのお金の増やし方』の内容を抜粋したものになります。

前回の記事はこちら
株の短期トレードはなぜ「普通の人」には向かないのか?

※以下、書籍より抜粋

銀行預金の積立は資産形成に向かない

株式投資、FX、マンション投資はいずれも、値段の下落によって損失を被る恐れがあります。

それなら、全く元本割れリスクがない金融商品で運用するというのは、どうでしょうか。確かに、銀行預金なら元本割れリスクがほぼゼロに近いし、利率も確定していますから、株式やFX、マンション投資などのように、価格のブレは気にせずに済みます。

今の日本は、実際のところ預金にお金を置きっぱなしにしている人が多いです。でも、それを問題視する声もあります。

個人金融資産の半分超が現金もしくは銀行預金というのは、銀行に対する信頼度の高さを示しているのも事実ですが、同時に1990年代以降のバブル経済崩壊に伴うデフレ経済の長期化が、個人の投資意欲を著しく後退させ、かつ今後の見通しについても、デフレ経済からの脱却に対して懐疑的になっていることを物語っています。

では、銀行預金に置いておけば本当に安心でしょうか。

いろいろな点で、実は預金に置いておくことが絶対に正しいとは言い切れません。

第一の理由として、現状、銀行預金の利率は極端に低い水準にあります。大手メガバンクの利率一覧を見ると、普通預金が年0.001%。定期預金も預入金額の多寡、預入期間の長短に関係なく、今は一律に年0.01%を提示しています。

年0.01%って、どれだけ低いのか、なかなか実感できないと思いますので、計算してみましょう。

年0.01%の定期預金に年間、元本1000万円を預けた場合、10年後の元利合計金額がいくらになるのかというと、1年複利で計算した場合の税引き前で、何とたったの1001万4円です。1000万円という、決して少なくない資金を年間も寝かせておいても、リターンはたったの1万4円にしかなりません。

こんな超低金利では、効率よく老後の生活資金をつくろうと思っても、なかなか困難ですし、お金のない若年層の人たちが資産形成に目覚めたとしても、あまりにも魅力がないので、そもそも長続きしません。

第二の理由としては、やはりインフレリスクを挙げておくべきでしょう。今は、確かにデフレ気味です。アベノミクスが2013年4月からスタートしたのと同時に、異次元金融緩和が行われ、一時的に物価は上昇へと向かいましたが、消費税率の引き上げを機に、徐々に景気が一段落ぎみになり、結果、物価上昇は道半ばというのが現状です。

しかし、異次元ともいうべき金融緩和を行い、世の中、お金がたくさん出回っている状態の今、ちょっとしたことが引き金になって、インフレの導火線に火が付きかねない状況にあります。もし、インフレが本格的に進んだ時に、大事な資産が現金・預金に置いたままだと、資産価値が目減りする恐れが高まります。

預金は一見すると安全な金融商品のように見えるのですが、銀行が経営破たんに陥るほどの金融不安の高まりや、物価の急上昇に対しては、非常に弱い部分があります。

第三の理由として、銀行の経営破たんのリスクがあります。

銀行預金は確かに元本割れリスクがほとんどありません。ただし、あくまでもそれはお金を預けている銀行が経営破たんに陥らなければ、の話です。

もし、銀行が倒産するとなったら、真っ先に預金保険機構がアクションを起こし、預金者保護を行います。預金保険によってカバーされる預金額は、決して無尽蔵ではありません。現行では、預けてある定期預金、普通預金の元本1000万円と、その利息分が、カバーの対象になります。

しかし、1000万円を超えて預けた預金については、預金保険機構の保護対象外です。つまり、1000万円をはるかに超えた資金を銀行預金に預け、そのまま銀行が経営破たんしてしまった場合は、いくら元本保証が明示されている銀行預金でも、元本割れになる恐れがあるのです。

私個人の考え方としては、「預金はせず、すべて投資信託へ」です。

自分のお金を銀行預金にしておくのはもったいない。

金利のこともありますが、それ以上に銀行が自分の大事なお金を効果的に世の中のために使っているかというと、疑問も残ります。大事なお金だからこそ、有意義に投資して世の中のために働いてほしいと思っています。